2019-07-13

少しずつおっさんになるのが怖い

歳を重ねるのが怖い。わたしはそのうち「おっさん」になる。もうなっているかもしれない。そうなったら、社会の向ける目は敵視に変わるだろう。

わたし正義の味方が嫌いだ。正義を振りかざすのは検察官だけにしてほしい。

自分はいいことをしている、と思えば何でもできる。例えば悪そうな人を非難したり、殴ったり、馬鹿にして悦に浸ったり。そして相手悪者だと社会的に認知されれば、加害行為は免責されてしまう。

自分正義で、相手が悪なら、嘘をついてもいいし、社会的に殺してもいい。それがこの社会正義の味方だ。

この社会は「強きを挫き、弱きを助ける」いい社会だ。社会弱者、例えばご老人や女性に対する保護は手厚い。そして益々手厚くなっていくだろう。一方で社会強者に対する目はどんどん厳しくなっていく。儲けているもの、体格の大きいもの、とにかく強そうなもの。彼らを取り締まる目は日に日に厳しくなっていく。

わたし強者だ。

30歳男性年収は平均くらい、学歴もある。そして肩幅が広くて背も高い。学生時代ラグビー部から勧誘がしつこかった。なんの不自由もなさそうに見える。強いて言えばキモメンであることくらいだろう。

しかしわたしは通勤電車優先席に座る。内部疾患を抱えているからだ。混んだ車内で何十分棒立ちは耐えられない。

それでも「ヘルプマーク」があれば周りは何かを察してくれる。これは別に席を譲れマークではない。私は一度路上意識を喪ったことがあるが、これのおかげで適切な処置を取ってもらえた。本来的な意味はそれだとしても、電車内では察してくれマークになってしまう。

そしてある日、私はその察してくれマークを忘れた。

大きな商談があり、かばんを変えたときに察してくれマークを付け忘れたのだ。

そんなことに気づかず電車で眠りに落ちる。薬が残っていると乗車駅までたどり着くのがやっとで、座ったらもう眠りこけてしまうのが日常だ。

徐々に電車が混んできたころ、誰かに起こされた。意識朦朧とする中、おばあさんに声をかけられたらしいということだけはわかった。

「杖をついている人がいるから、席を代わりなさい」

おばあさんはそういった。ままあることだ。仕方ない、さて立ち上がるかと思ったが、身体が動かない。体中の筋肉が弛緩し、急に声を掛けられても立ち上がることはできない。

もたもたしていると、足に痛みを覚えた。見るとおじいさんが杖で足を殴っている。

「そこに妊婦さんがいるじゃないか。どこに目をつけているんだ」

たいそうお怒りのようだった。妊婦さんのほうは「いえいえ大丈夫です」と丁寧に遠慮されていた。

老人2名に詰られつつ席を立とうとすると、隣の若い女性がさっと席を立った。それに対してご老人二人は「え、いいんですか!」と素っ頓狂な声を上げて、結局妊婦さんが座った。

私はやっと立てるようになって、気まずさが勝ったので降りるには随分早い駅で降りた。

去り際に「ささ、席が空きましたよ」というおばあさんの声が聞こえた。

見た目上健康そうで体格のいい男性優先席に座ることは、この社会では杖で殴ることを免責するほどの悪であることはわかった。

だとしたらこうしよう。これからは席に座らず、耐えきれなくて意識を喪って緊急停止ボタンを毎朝押してもらうというのはどうだろう。いい取引だと思うが。

実のところ席に座る譲るは割とどうでもいい。

ヒトは自分正義の側にあるとなれば、警察でもやらないような暴力を振るうようになる。

相手事情があるとは考えない。

「体格のいい男性優先席に座っている」からけしからん殺せ」となるのがいまの正義の味方だ。

「なにかおかしい、彼には事情があるはずだ」とはならない。自分正義を疑わないから。

こんな調子だと「男」であるだけで強者、ないし加害側扱いをされるこの社会で歳を重ねることが怖くなってくる。

おっさん」はセクハラ痴漢加害者予備軍、稼いで養っても稼げず養わなくても非難され、その他様々な理由により「加害側にあるから害をなす」として正義の味方が敵と見做す存在だ。

結局正義の味方が「弱者」と認めるのは自分可哀想だと思った相手だけだ。きっとおっさん弱者として認定される日はない。なにもしてなくても、いくら所得税社会保険料を支払っても、おっさん社会の敵で正義の味方攻撃する的として生きていく。

こんな社会おっさんになるのは耐えられない。10年以内に「正義の味方」が少しでも少なくなるように闘っていきたい。

この社会は「強きを挫き、相手が弱いかどうか確認しない」とてもいい社会だ。 <h3>o- **</h3>

誰も読んでないだろうけど追記

Q.具合が悪いことは伝えたのか

A.意識朦朧としていた上に完全に責められる格好だったので伝えられる状態ではありませんでしたし、そのような状況をみても猶「なにか事情があるはずだ」とは考えなかったようです。

Q.通勤困難なのに平均年収もらってるなら保護されてる側では?

A.そうだと思います。だったら尚更杖で殴られたりおばあさんに詰られたりする謂れはないです。ただ、見た目だけは健康のものなのが問題です。

Comment:弱者マウントを試みる人は杖で殴る側だと思います

Q.一瞬でおっさんになるほうがこわいだろ!

A.たしかに。ゆっくりおっさんになっていきます

  • かわいそう でも過去に一度でもそういう社会じゃなかったことなんてなさそう

  • 似たような境遇のおっさんやけどおっさん叩きしてる人たち余裕がないのだろ 今日はてなで女性の学者さんの言葉見る機会があってそう思ったわ

  • 途中で読むの面倒くさくなってきた 俺は40前には死んでるだろうから関係なきな

  •   誰でも 思うぞ 自分の持病のことだけ 頭の中一杯にして 愚痴を言うな                                                                         ...

  • もうなってるから心配すんなおっさん

  • 喋れもしないほどにひどいのなら設定できるようにスマホのロック画面とかに自分の説明できておいたほうが良いぞ。 つーか、優先席に携帯触ってるおっさんやニーチャンネーチャンな...

  • 男はおっさんになるのが怖いのか 女にとっておばさんになれることは救いだがな(いつまでもオンナでいたい人を除く)

  • 人間全員弱者的側面があるんじゃない? 極端な話そういう視点だと、港区のセレブも弱者だ。 例えば、更なる強者の雪崩に巻き込まれてる点に弱者性を感じるよね。 特定の人間だけが...

  • 「女性の悩み」というのが、大概下らなく聞こえるんだけど。 でも、そんだけツラツラと悩んでるのなら、なんかあるんだろうとは思う。    しかし、どれだけ聞いても、「そ...

  • 日本社会に浸透した儒学的思想のために既得権益を貪る老人という絶対的強者を批判することができないという社会の矛盾

  • おっさんになる時はいっぺんになるから、そんなに脅えなくても大丈夫だよ

  • 京浜急行線で何者かに後ろから殴られたと思ってそちらを見たら、妊婦が立っていたということはあったな。 「あ、すいません」と言ってとっさに席を譲ったけれど、この人の中にあっ...

  • 内部疾患と言っても色々あるみたいだがこの人は何の疾患なんだろうと単純に疑問

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