はてなキーワード: スイッチとは
もはやかわいそうになってきた。君にわかりやすいようにと思って説明したことが変なツボを衝いてしまったみたいだな。
そうなった原因としては、君と別の人を混同していたからというのもあっていらんことを言ってしまったせいかもしれないから、もう一度だけ整理してやる。
あのね、古典が文化資本として役に立つなんて主張はいつ撤回したっていいんだよ。君が「古典なんて役に立たないものはやめてしまえ」と主張するのでなければね。
だって、そんなの俺の信念でもなんでもないんだから。俺の本音は「人生を楽しむための基礎として、普通高校では基礎的な文法事項を教えるべき」というものだ。
それだけのことだ。俺は単に君の主張を崩しにかかるための一番やりやすい点として「役に立たないから」という部分を選んだにすぎない。だが、君がこれほど物わかりが悪いとなると、その作戦は失敗だったのかもしれないがね。
以上。ここまで言っても俺を教養俗物と主張するならもはや藁人形論法だからな。
何もしない自分を肯定できる理屈を並べるオナニーがそれほど楽しいですか?
せめてオッサンの俺達くらいは正しいことを笑わずに正しいと認めてやれなくてどうするよ。
何もしない自分を肯定する理屈を並べ立ててるのは君でしょ。
たとえば、英語が半ば世界標準語になっているのはおかしなことだが、「英語帝国主義粉砕!」と叫んで英語を勉強しない人間が、英語帝国主義の体制を崩せる力を持てると思うのか?
君は「これが正しい、だから通るべき、通らない世の中はおかしい!」と主張しているだけ。俺は「相手の土俵に乗り込んで相手を倒すべき」と言っている。どっちが前向きかは明らかだ。
それから、勝手にオッサンにするな。俺は十分すぎるぐらい若者だ。
そういうのを下司の勘繰りという。例えば俺はアキバ系文化は大嫌いだし文化と呼べる価値はないと思ってるが、ことあるごとにアキバ系文化が弾圧されることについては、「アキバ系文化は日本の現代文化としてもっとも国際的に受けいれられたものだ」ぐらいのことは主張するよ。そしてそれは嘘を吐いているというわけでもなかろう。
まさか俺から「文化資本」なんて単語が出るとは思ってなかったんだろ、油断してただけだろw
ある意味では、ね。正直、君のことを単なるリベサヨ拝金主義自己啓発馬鹿だと思ってたんだが、どうやら時代遅れ左翼だったらしいな。その結果、君に受けいれられやすい例を出したつもりで逆に変なスイッチ入れてしまったみたいだからね。
よく読め。「先進国」と書いただろうが。IMF によるとアジアの先進国は日本と韓国と台湾と香港とシンガポールだけだ。いずれも、有力な大学を自国に抱え、国内の大学でエリート層を自給できている国だ。
あとこれも読め。君の大好きな欧米先進国様のランキングについて挙がっているよ。
ほんとうに君はいらん邪推ばかりしてくれるね。経済力と、旧大英帝国圏から優秀な学生を集められるという事情は他の国にもあてはまらんでしょ。それでも、数ではともかく質で日本の大学全てを圧倒できるような大学はないよ。設備や研究費が潤沢にあるのは羨ましいが。日本のプロ野球とメジャーリーグだと思えばわかりやすい。トップのいくつかは日本のオールスター並みの陣容だが、あとはそうでもない。
それはどうぞご勝手に。ただし蛇足として付け加えておくけど、湯川秀樹は自身の業績を「漢籍の素養があったからだ」と回想していた。これをどう評価するかはともかく、少なくとも誰にでも明白な関係がないことは確かであって、グレコ・ローマン思想と近代科学の関係だってそれと五十歩百歩だよ。それに、ルネッサンスで近代科学が萌芽して、さらにグレコ・ローマン思想が再評価されたというのは、実は十字軍が出会ったイスラム文化の先進性に影響されてのことだ。西欧はイスラム経由でグレコ・ローマン文化と先進的な科学を学んだのだ。(「アルゴリズム」の語源はイスラム圏の数学者の名前だぞ)。どうしてイスラム文化は無視されてるんだろうねえ?
これが他の学問なら多少は分かるが、情報工学はあまりにも実学だよ。大学でも、もちろん「使える」ものを教えているという側面が強い。
笑止な。線型代数も理解できない奴に工学を訳知り顔に語るな。ほれ、これが東大と京大のカリキュラム。機械工学や電気工学のような従来型の工学に勝るとも劣らないほど理論的な教育が行われていることがわかるか?
誰も「低水準言語」なんて言ってない。厳密な定義のある言葉を避けて「比較的低水準寄りの言語」というふうに表現に気をつけて使っているんだが、専門分野と自認する分野でそういう言葉の微妙な感覚がわからない人は科学や技術に携わるには余りにも勉強不足だね。
他に何か一つでも具体例を挙げてから言う台詞だなあ。
$i=10; while(1){ printf("爆発まであと%d秒\n", --$i?$i:die("わたしは死んだ、すいーつ\n")); sleep(1); }
これはチキチキチキンレースです。
目の前の爆弾があと10秒ほどで爆発します。
あなたは爆弾の停止スイッチを持っていますが、ギリギリまでスイッチを押さない度胸が試されています。
プログラムを実行したら、
目を閉じて、
適当な頃合をみはからってCTRL-Cを押して爆発を阻止してください。
残り1秒で爆発を止めることができれば、
後世まで英雄として語り継がれることでしょう。
こうなる事を今まで思い至らなかったんなら、あまりに考えなさすぎだけど。
というか、別れた奥さんは離婚した相手のコピーロボットとなんて一緒に暮らしたくないんじゃないの。
一緒に暮らせるなら離婚してないだろうし。
日本は中世か、というタイトルにしたのは、またもやあちこちで「魔女狩り」が始まりかけているからである。契機となったのは宮崎某による幼女殺人事件である。まずここで「おたく族」がやりだまにあげられた。「おたく族」とは少女マンガやアニメの総称である。年に何度か開かれるコミックマーケットのようなものに行って、先鋭化したマニア向けの同人誌などを買いあさる。情報交換などするときに「おたくの場合さあ・・・」といった口調でしゃべるので「おたく族」と呼ばれる。宮崎はこの「おたく族」だったのか、部屋の中に多数のアニメビデオや専門誌を置いていた。こうしたアニメやコミックの中ではロリコンものやパロディポルノに需要が多い。人気番組のキャラクターを使ってエッチなことをさせる。同人誌の多くははっきりと性器を描いた、完全なポルノである。ロリコンものにしても、現実の少女を使うとたいへんな事になるが、アニメやコミックですれば問題はさしあたって起こらない。そういう世界では、たとえば8歳の少女とセックスメカノイドとの激しいセックスが描かれていたりする。僕もそうしたコミック誌やアニメを見たが、これは確かに立つ。おたく族の青年が、もはや現実の女性にセクシュアリティを感じなくなる、というのも分かる気がする。ところで、おたく族を現実逃避だの男性性の欠如だの気味悪いだの小太り色白だのと陰口をたたくのは勝手である。そうした陰口は吐いた本人の品性の貧しさをあらわすだけで、実際に論陣を張れば、シャープで理知的なおたく族の前ではひとたまりも無いだろう。おたく族というのは実際、一本のアニメをより理解する為にフィリップ・k・ディックから南方熊楠までまで読んでしまうような、そういう人種だからである。ところがここに至って、宮崎某がおたく族であったという事実が、世のおたく族嫌いを有頂天にさせているようだ。「宮崎=おたく族」であっても、この場合逆もまた真なりとはならない。正しくは「宮崎=おたく族のうち一人」である。しかし、魔女狩りをする群集には理も否もありはしない。現実にあるロリコンアニメをつきつけては、どうだどうだと迫る。「おまえも、こんなことしてみたいといっつも思ってるんだろうが、えっ!?」
もちろん彼らはそう思っている。思って思って自分と戦った結果、道義的責任のないアニメの世界に安住場所を見つけたのである。
二次元の世界しか欲望の対象を持たない彼らは、およそこの現実の世界では一番犯罪を起こしにくい人種なのだ。嘘だと思うなら、この世の中からロリコンアニメをすべて撤収してしまうといい。その場合、幼女姦が増えるかを統計的に見れば分かるはずだ。その場合、幼女姦が増えたとして、その責任は誰がどうとるのか。同じことがホラーに対しても言える。宮崎の事件を契機にしてスプラッター・ホラーへの抑圧が始まっている。これはやはり宮崎の部屋に「ギニー・ピッグ」のシリーズが置いてあったことに端を発している。「ギニー・ピッグ」は僕自身は最初の一本目と、シリーズ中の「ピーターの悪魔の女医さん」というのを見た。ピーターの方は大笑いのブラックコメディ集である。一本目の方は監禁した女の子をなぶり殺しにする過程をビデオに収めた、という設定で、アメリカに実際ある「殺人ビデオ」の雰囲気を出そうと苦労している。スタッフは苦労しただろうが、見ているこっちはうそ寒くて鼻で笑うしかないような作品だ。
しかし、世の中で事件が起きると必ずこの手の反動が起きる。「ギニーピッグ」をかばうわけでも何でもないが、犯罪が起きるとマスコミはその犯罪の尻をどこかに持っていってつじつまを合わせたくなるようだ。知能犯罪が起きれば犯人の本棚からその手口のもととなった推理小説を探す。その結果、著者がコメントを求められて、「私の小説が動機となったのなら、残念なことだ」と述べたりする。
この場合「動機」は小説ではない。「金ほしさ」である。僕がもしこの作家の立場に立たされたらはっきりとこう反論する。
「犯人の反抗に対して私の作品が与えた因果関係を、誘導尋問によらず自白させてほしい。その上でそれが犯人の自分の犯行に対する他への責任転嫁ではという、なんらかの証明をしてほしい。加えて、犯人がもし私の作品に接していなければ犯行に至らなかったどうか。なぜ私の作品に接した多数の人間の中で、”犯人以外の”大多数は犯行に至らなかったのか。それを説明してほしい」
ロリコンものの場合も、一般のポルノの場合も、スプラッタホラーの場合も同じことである。何らかの表現行為に起因して犯罪が起こるというのは空論だ。すべての表現、たとえそれが芸術的に無価値な、便所の落書きのようなものであったとしても許容されなければならない。ただし、見たくない人は見ずにすむという「自由」の上においてだが。そういう意味ではスイッチを押せばどんな画像が出てくるか分からないテレビなどのメディアは、この条件を満たせない。しかし、映画やビデオや出版物はそうではない。パブリックなメディアとパーソナルなメディアを混同されては困る。その上に、異常者の犯罪と表現メディアを対にして考えては困る。そして、もっともっと困るのは、犯罪者とその家族をいっしょくたにして考えられることだろう。それこそ中世の「一連托生」の考え方なのだが、マスコミはそうした前近代的なことを平気でやってのける。今回の宮崎の事件にしても、僕は某誌の「誰も書かなかった真実」なるレポートをみて驚いた。
そこには宮崎のおじいさんの代にわたって家庭内のことが掘り起こしてあったのだ。おじいさんに愛人がいて夫婦仲が悪かっただの、お父さんの性格が「お調子物」だの、etc。そうした家庭環境が犯行の遠因になっていたかのような書き方だが、それはレポーターの大義名分に過ぎない。本質的にはこうした家人のことというのは「ご近所のヒソヒソ話」であって、オフィシャルに出されるものではない。犯罪者の家人だからこそさわってはいけない。殺された子供の親同様、この人たちもいやされようの犠牲者であるからだ。それをじいさんの女関係までさかのぼって掘り返すとはどういう神経なのかと思う。こんな事件のせいで、おたく族もホラーファンも犯人の親族も大迷惑をこうむってるわけだが、少なくともこうしたことだけは宮崎一人のせいではない。人間の中の魔女狩りの古い記憶、「はらい」や「みそぎ」の感覚、ならびに窃視願望がこうした見当違いの弾圧を起こさせるのだ。「時の勢い」というのは恐ろしいものだから一度はずみのついたこうした力は加速度持っていくことも考えられる。ホラーもアニメも誰かさんの総チェックを受けるようなことにになるかもしれない。
人間とはどうしてこう干渉や規制が好きな動物なのだろう。人の楽しみはほうっておけばいい。禁止しても放置しても、犯罪は起こるのだ。
私は朝が弱い。
起きたときにはいつも15時だ。
、、、え、15時!?
違う、違う。
7時だ。
つけっぱなしのPCの前に座ると、さっそうとEclipseを立ち上げる。
今日までの課題がある。
相手からメッセージが来るたびに、
ソースコードの135行目にある
messageVisitedメソッドが呼ばれるはずなのだが、一向に呼ばれる気配が無い。
メッセンジャーで誰かに聞いてみてもいいが、この時間では相手に大変迷惑だろうと思ってやめた。
よくよく自分でターミナルを睨んでいると、何やら例外がたんまり出ているようだ。
相手をうまく認識できていないらしい。
sunshine@earth: ~/kadai/java/chat/$ javac chat
sunshine@earth: ~/kadai/java/chat/$ java chat moonlight
Exception in thread "main" ,,,,,,,
私は目をおさえながら、ふうっと息をついた。
これは時間がかかりそうだ。
今日中の提出は無理かもしれない。
席を立つと、台所にあるコーヒーメーカーに水と粉をセットしてスイッチを入れた。
とにもかくにも、コーヒーでも飲まないことにはやってられない。
あと、必要なのは、何か食べるものだろう。
私は部屋を後にした。
またコンビニかよ。
母親がおかしくなってしまった。
原因は親父の不倫と貯金の使い込みなんだけれども、発覚してからもう3年になるが母の症状が治まる気配はない。
というのを先日知った。
地元に残っている妹たちは、私に心配をかけまいと「母親がいまだにおかしい」ことを隠していた。
ことあるごとに家庭内別居中の親父の部屋に出向いて「死ね、殺してやる」と呪詛の言葉を投げつける。
スイッチが入ると半狂乱になって暴れる。孫が来ていてもお構いなし。
親父を一生許さないんだと。虐め抜いて虐め殺してやるんだと。
自分は30年以上ずっと我慢してきた。もう我慢はしないんだと。
今回は私の帰省と妹の出産に合わせて家族が集まり、寿司をとってお祝いでも…という状況だったのだが、
些細なことで発狂、「スシをぶちまけてやる!」と服が破けるほどに暴れた挙句そのまま家を飛び出して、
私が帰る日になっても戻ってこなかった。
心底たまげたのだが、こんな状況は以前から何度もあったらしい。
言えよ、妹ら。
こうなると、元は親父が悪いのだが、自分が元々母親とそりが合わないのもあって親父に同情してしまう。
母さん、あんたはいつまでやるんだよ。
我慢しないからって周囲に迷惑かけてもいいのかよ。
心の病院…なんて言葉を持ち出そうものなら、余計暴れるのは間違いない。
いやそれおかしいから。ぜってー病気だって。
メンヘルという言葉が世の中に溢れていて、でも自分には無縁な言葉の様に思っていたけれど、
こんなに身近なところにあったとはなあ。
さて、どうしたものか。
激しい喉の乾きで突然目が覚める。枕もとの煙草とライターをまぶたも開けずに手に取りカサカサに乾きあれ果てた、割れ果てた、唇にくわえ火を付ける、ここまで3秒だ。
ふた息ほど肺に送り込み喉の乾きが最高調を迎えてから立ち上がり、冷蔵庫の中のうんと冷えたコカ・コーラの缶を開け、流し込むように飲む。
ようやく意識がはっきりと戻ってから今が朝か夜かを確認する。僕は起きた時はここまでしないと喋ることも考えることもままならない。起き抜けの煙草と飲み物、ここまでが見物。この2つで僕はやっと僕という存在になる。察するに今は夕方、だいたい4時といったところか。部屋の中を見回してもいつもと変わった様子は見られない。脱ぎ散らかされた服、いつもどうりだ。汚くて狭い部屋。その通りだ。僕の部屋を末期症状と呼んだのは誰だっけか、そろそろ掃除のしどきかもしれないな。
とりとめのないことをそこまで考えたところで、僕は自分が泣いていたことに気づいた。いや、正確にいうとさっきまで泣いていたのだ。足元に転がった鏡に顔を写し、見ると目の下に涙が乾いた跡がある。それは、とても妙なことだった。なぜなら泣かなきゃならない理由がない、思い当たらない、仮に嫌な夢や怖い夢。憶えないよね?見ていたとしてもそれは妙なことに分類される。僕は眠れば必ずといっていいほど夢を見、またそれをことごとく覚えているという割合特異な人間なのだ。特別何もなくても、何はなくとも、何かの拍子に涙がこぼれることがあるのだろうか。窓の外では子供の声がする。今、何時?汝、そういえば僕は寝る前、何をしていたんだっけ。
僕は、なんで泣いていたんだろう。僕は何してたんだろう。ねぇ。
TRACK2
何年前?5年前。
僕は浪人生だった。とある大手の美術の予備校に通っていて、それなりに志を抱いてもいた。一体、僕の志って何だろう?愛称は「ダル夫」、同時にそういう悩みを抱え始める年でもあったのだが、最初、風向きはすっかり僕にあるような気がし、そして何かが僕の思うとうりに、旗幟、動きはじめるそんな気がしてもいたのだ。単純に浮かれていたといってもいいのかもな。
その年、僕が夏の捕獲に成功したのは5月ごろだった。
「何してるの?」
「昼寝しようと思って」
「あ、そうなの」
あたりさわりのない会話の中でもとびきりあたりさわりのない、言葉を交した。裃から下。僕は臆病な割にはずうずうしい人間なので、誰もいない屋上のベンチの彼女の隣に座った。これから寝ようとしてる時に、よくしらない男に隣に座られることがどのくらい嫌なことかなんて気に、考えたこともないし、考えてもよく分からないし。なので考えないけどどういう訳か彼女は眠った。
時計は2時を回り僕の居る建物の廻りでは人がせわしなくぐるぐると回る、その証拠にたくさんの音を巻散らていた。カサカサと葉擦れの音。聞こえ出すと。彼女の少し茶色い髪もさわさわとなびきだすのです。とたん、工事現場の騒音も人びとの喧騒も、不思議と遠のき、何も、聞こえなくなってしまった。僕はなんとなく彼女の髪を撫でた。訳もないけれど。
僕は何も確かなことは分からなかったけれど、ショートカットの彼女の髪の暖かさと連動。この世界に、やがて、ほどなく、やってくる季節のことをそっと教えてくれた。
僕は鉛筆をカッターナイフで削る。これは僕にとってとても落ち着く行為なのだ。何故か。別に僕が文明の利器を忌み嫌い、しつこくアナログにこだわっているというわけでもなく、純粋に絵を描くためには、そのためには、字を書くときに比べ長い芯を必要とするだけの話だ。
どういうわけか、というわけで。僕は鉛筆をカッターナイフで削っていた。全部で30本くらいは削ったんじゃないだろうか。この時は時間潰しのつもりで筆入れの中の鉛筆という鉛筆を削ってしまおうと思っていたので、だので、むやみに使うあてのない鉛筆を中心に削っていた。
僕の座っていた場所、もう人の通ることのなくなったアトリエの前の廊下。普通はこの時間はアトリエの中で一生懸命になっているものなのだが僕はそこにいた。ふとした拍子にドアが開き、見覚えのある髪の色が目に飛び込んで。時、綻んで。
「描かないの?」
その髪を知っている。
驚いたことに、僕は隣に座る彼女の名前さえ知らない。驚愕に値。なのにこうしてもう随分と話をしている。
彼女も自分の鉛筆を削っているが、並んでこんなことをしているのは、なかなかどうして変なものだ。僕はもう指が痛い。意味あんのか、だいだい。
「カッテぇなこれ」
「貸して、こういうのは…ほら」
と、その髪。
「うまいね」
鉛筆の木の部分を大きく削り取り芯を露出させた。彼女にそう言うと少し得意そうだった。6Hの鉛筆ともなると、異様に固く、尖らすのにも苦労するのだ。
「ねぇ、ご飯食べないの?」
「うん。俺はあんまり減ってないからいいや。食べたら?」
「…わたしもいいや。お昼ご飯とかっていつも食べないから」
「そう」なんて言っていいか分からなかったからそう答えた。
僕も彼女も結局絵なんて描きやしなかった。なんだか知んないが、かったるくなってしまったのだろう。
その何日か後。僕達は1度だけデートした。
TRACK3
J子さんの髪の色には変化、少し変わった。どのへんが?あそこのへんが。あ、そこらへんか。
彼女は僕よりも歳がひとつ上で。その上でそのせいも有るのか無いのかそれは分からないけれど、ときおりお姉さんぽい態度をとろうとした。しかしながら、彼女は僕と同じ年度に卒業している。留年したからだ。入院したからだ。とにもかくにも、彼女は何となく僕に世話を焼いてくれてるようだった。
彼女の作ってきてくれたお弁当を一緒にたべながら、僕は彼女に好意を感じたが、それははっきりした形をとる様なものではなかったし、言わなければいけないのであろう一言が僕にはどうしても言えなかったのだ。あるいは彼女はただ親切だっただけなのかもしれないのだし。シット。
何月だったか忘れたがとりあえずは冬のとても寒い日だ。ラッシュアワー時よりはいくらかは空いた、電車から降りてきた僕はそう急がずに改札をくぐり、彼女の姿を探す。姿を捕捉。細かい位置まで指定しなかったのに、彼女はきちんと分かりやすい場所にたった今定刻どうりに立っていたわけだ。
「ごめんね。待たせちゃった?」
「ううん。そんなに待ってないよ、さっき来たから」
「来たね」
「来たよ」
僕はそう答えて微妙な顔つきをした。
なぜ僕達がこの朝などに待ち合わせをしたのか。といういきさつはこうだ。前後するが戻る。
この頃僕の足は予備校から大分遠のいていて、ほっといてたまに行く程度になっていたのだが、たまたまクラスの奴(ボケ)が僕のことを学校に連れて来いと彼女にちょこっとほのめかした。軽い冗談ぐらいにしか僕は考えいなかったのだが、帰りがけ彼女はこう言った。
「何時にする?」
僕は驚く。
「早目に着くようにしよっか、そしたらいい席取れるし。わたし達来るのとても遅いでしょ。だから、変な場所でばっか描いてるから、やる気にならないんだよ。8時じゃ早いか、8時15分は?早すぎる?」
早過ぎるし、展開早過ぎるし。早く過ぎるシーン。
「がんばるよ」
彼女の乗る電車はもうすぐホームに入ってくる。それを知らせるアナウンス。
アーッ、アーッ。…イエスッ、プラットフォーム、ナンバシックス、まもなく打診。
「ちゃんと来るんだよ。いい」
アーッ、アーッ。ンンッ。…イエスッ、プラットフォーム、ナンバシックス、まもなく打診。答えはアイ、シー。
ネクスト・デイ、という呈。
2日目の待ち合わせも同じ時間・場所で行われた。まるで口の中にドライアイスでも入ってるかのように白い息がもわもわと凝固せず出る。当たり前のような話、僕はそんなもの食べたくない。けど、でも。あたりの人という人の口からも同じように白い煙が出ても、誰ももうドライアイスなんか食い飽きたとは言わないので、僕も不平不満を口からは出さなかった。出したのはまさに白い煙だった。
腰の絞られた濃いグレーのピーコートのポケットに手をつっこみ、眠い頭と当惑する気持ちをこさえ、彼女を迎え、姿を残さねぇ。そんな背が高くないというよりは小柄と言ったら正しいくらいなのに、彼女はロング丈のコートが意外に似合った。
と彼女と翳す手。
「そりゃね」
と僕。
言葉少なにそう歩き出す。
「こうやってお互い待ち合わせればきちんと行けそうだね。こういう風にしてればわたしも行くしかないしね」
「俺だって早く起きないわけにはいかないもんなぁ。7時くらいに起きてんだよ俺」
「えらいじゃん」
初めからそうだったけど僕達は相変わらず言葉少なだった。けれど、淡々としているというわけではないのだけど、大はしゃぎするふうでもない。笑いはしても、腹を抱えてゲラゲラと笑うなんてことはなかったようなという記憶で。19才になったばかりの僕と20歳の少女、差異があると、「サイ」が変わるの。そう彼女は20才になっているにも関わらずその印象は少女のままだった。その2人がこんなにも、まるでうっすらと積もった雪の上を静かに歩くように言葉を交すことは、僕にある風景を描かせた。
描く、書くと。
その風景とはこうだ。
(ムーボン、ムーブ、オン。見えるか、聞こえるか。始まるぞ、濃そうな妄想のシーン。)
陽の光がとても弱々しく感じられる。風が強いせいか肌寒い、ここは何処だろう?
見慣れた風景と感じるのはきっと有るものがすべて決まりきっているせいなのだろう。僕はここが何処か分かった。学校、おそらく高校だ。びゅうびゅうと風が空想の怪物の呼吸みたいに聞こえるので僕は心細くなりフェンスにしがみつく。その僕の指を固く食い込ませた金網の向こうに彼女が見える。小さくしか見えないが僕の知っている彼女は僕だけが学校と分かり得るぐらいの小ささで建つ建物と僕の中間に立っている。なぜか僕も彼女も制服を着ている。バサバサと髪が巻き上げられ服の皺がとたんに生命を持ったように暴れる、風が僕達の世界の全て、有体から思念体、一切合財何もかもを飲み込もうとしているみたいだった。
「 」
僕は胸が潰れそうになって必死に彼女の名を呼んだけど全てかき消されてしまい、届かない。すると、髪を服を草を巻き上げる耳を裂く風の音、一切の音という音を彼女が遠ざからせてくれた。
あたりにはもう心配する事なんて何もないのだ。
けど、けれど、何で彼女はまだ思いがけず不幸に命中してしまったような悲しい顔をしているのだろう。
(ちょっと調子が悪いのか、そうか。なら、鬱蒼など晴らそうか。そのスイッチを押せ、行くぜ。)
リブート。
その後。
僕は何度か彼女の悩み事のような話に付き合ったことがある。そのたびに快方にむかったように思われた彼女も、それはしばらくするとまたがくんと調子を落とす。こういうふうに言うと冷たいかも知れないけど、そういうのはどうにもこうにも本人次第だ。何とかしたいが、したいが、悲しいけどどうしようもなく本人次第だ。SPみたいに、彼女にへばりついて、いつ降ってくるか分からない災いの流星群から守ってやることもできないし、だいたい、彼女が望むかどうかも不明じゃ現実的じゃないじゃない。
というわけで僕はただ見ていた。
その日も彼女は複雑な表情。僕はと言えば相変わらずも怪訝な顔。それらには触れられずに帰りの道を僕は彼女と歩いた。
「ご飯食べていく?真直ぐ帰る?」
「お腹も減ったんだけどそれよかコーラが異常に飲みてぇよ。どっかに自販機ないかな?」
下がる血糖値、命の危機。
「ここら辺ないね」
仕方がないので彼女の知っている店へ向かった。彼女の指差す先は目的の店の電飾で、その店はばっちりコーラが飲めたのだ。
「行く?」2本目のマールボロに火をつけながら僕は尋ねる。
食事を済ませた僕達は向かい、駅構内へ降りていく地階からは長い。長いエスカレーターに乗っていると改めて僕は彼女の横顔が視界に。そしてきっと僕には何もできないだろうなと思ったのだ。何故そんなことをこんなときに思わなければいけないのかさっぱりだが、僕はその顔を愛いと感じた。ウイ。
またホームへ電車が入って来た。けたたましいブレーキ音とまるで抜けた魂、知性の感じられない雑踏のミックスジュース、もう嫌気がさす、ミキサーから出す、一息で飲みほしてしまいたい、彼女の声が途切れる前に。耳を澄ましたが池袋駅でははっきりと聞こえない。もし今が初夏だったら。その奇跡の力ならば。
「 」
「え?」
僕は憂う。
何であの時みたいに必要なものだけ、必要な声だけ、それだけを抽出してくれないんだ。僕には必要な世界があって、そんなこと勿論はなから分かってる、多分そんなに重要なことは言ってないんだろう?僕はそんなこと勿論分かっているけれど、彼女の表情はそうは見えないし、多分そうじゃない。なんだか胸が詰まりそうだ、僕の傍、彼女の顔が無理やり笑ったみたいに見えた。胸が潰れそうだ。
「バイバイ」
電車が行ってしまったあとには言葉を遮るものは邪魔も何もない。だけどきっと遅かったんだとは思う。彼女は誰かに救いを求めたかったのだろうし、あのいやらしいノイズがかき消したのは、彼女のなんとなく悲しげな顔に含まれた聞かなきゃいけない一言だったかも知れないのに。そしたら途切れないのに。
「ふぅ…」
僕はため息をひとつついてみた。人とすれ違う。
あくまでも推測だ、多分僕の考えすぎなんだろう。
でも、僕に何かができたんだろうか。何だろうか。見当つかない、それは分からない。
ねぇ、笑ってよ。
止めてぇよ。
TRACK4
「なぁ、花火大会行かねぇ?俺の友達の女の子も来るんだけどさ」
昼ご飯時で人の多い通路に,5・6人もかたまり地べたに腰を下ろし、カップラーメンOR出来合いの弁当、貧相な食事を僕らは済ました。それぞれ煙草を吸ったりジュースを飲んだりと全身からやる気を排出していた。
「あ、俺行きてぇ。女の子来るんでしょ。何人来んの?」
「多分3人くらいは来るんじゃねぇの。行かない?」その場の全員に振るのは主催。良い返事下さい、と同意求め。
「行く行く」
「女かぁ女かぁ」
「俺は無理だな、無理無理」
めいめい自分なりの反応を示し、僕はデニム地のベルボトムのパンツで灰に汚れた手を拭きながら尋ねた。
「そんでその花火はいつよ?」
それは皆が知りたい重要な事だ。
「今日」
結局一緒に行ったのは僕だけだったとか。
僕が挨拶をすると2人の女の子も同じ要領で続けた。1人はショートカット、割合奇麗な娘。もう1人はロングのパーマの表情の豊かな娘。有体に言えばそういう子。僕はニコニコ。
「良かったね、ちょうど人数あって」
僕がそう言うと彼はあまり同意はしなかった。聞いた話によると田舎に恋人がいるとのことだ。そうは言っても毎日モチーフとにらめっこしていて大分クサッていたところなのだ、遠くの恋人は恋人じゃない。4人は電車で目的地へ向かった。話をしながら。
目的地がもう目の前という頃まで近づくと、僕とロングの娘はすっかり仲良くなった。いざそうなると最初に感じたファースト・インプレッションも変わり、「ケバイ」も「チャーミング」に変わろうというものだ。僕はそういうところが調子良いようだ。
「次の駅で降りるよ」彼の指示で僕達は降りた。
僕にとっては見知らぬ街で、駅から出たとたんに潮の香りで、満ちるような海辺の街に降り立つとダウン。僕はロングの仲良くなった彼女と並んで、先導する友達の後をついていった。途中、道で擦れ違うのは真っ黒に日焼けしたサーファー風の男女ばかりで、
「サーファーしかいないのか?もしかして」
と、誰に言うともなしに言うと、
「なんか、あたし達だけ格好が違うよね、みんなショートパンツにビーサンとかなのに」
「俺なんかめちゃくちゃ浮いてるんじゃない。Tシャツ小せぇしパンツの裾開いてるし」
「そしたら、あたしも浮いてる。だって格好似てるじゃない」
そんなことを話しているうちに波の音のするところまで来てしまった。多分、僕は相当うかれていたんだろうと思う。だって波の音がする。潮の香りもする。僕のような人間にとって、海という所は、そう簡単にほいほい来れる場所ではないので、しかもそれが、もう目の前とあっては高揚せずにいられるものか。浜辺に降りるには多少なりとも道なき道を行かねばならぬもので、僕達も慣例に従い膝丈くらいの草を踏み倒して進んだ。16ホールの編み上げブーツは砂利だろうと草だろうと蹴散らして行ける。爪先にスチール入りの頼れるタフガイは彼女の履いていたサボ状のサンダルとは違い、あちらはどう見てもタウン用なのでそれが理由かどうかは知らないのだけれど、結果、我々一行の中で彼女は遅れぎみだった。
「ほら」
差し出す手、手出して、握り返して、そのまま固く封印。
僕の手を握る彼女の手の平は汗でじっとりにじんでいた。
花火なんてない。いらない。
クラスメイトの彼は相当がっくりきたらしくご機嫌斜めでショートの娘の相手すら放棄している。その娘にも悪いんだけど、本当に悪いんだけど、僕とロングの彼女は楽しんでいた。途中で買ってきたビールを開けひとしきり、
「ちょっと海の方いってみない?」
と彼女は言った。
僕達は軽く走りだす。別に急ぐこともないのだけど何故か足早に。渚は玉砂利を転がした様な音だけをたて、波が僕の足の下にあるものを掴もうかと、否かといった感じで近ずいたり遠のいたりする。
「わ」
ふいに勢いのある波が靴のソールを濡らす。
「靴脱いで足だけ入っちゃおうかな」
「いいね、そうしようか」
紐を解いてブーツをほうり投げ、サンダルを脱ぎ捨てるとジーンズの裾を捲り上げて。ちょっと悪いことをするみたいな顔をちらと僕に見せて。確信犯の顔、隠し得ぬと、一歩、また一歩と沖の方角へ歩を寄せると、いともあっさりと捲った裾が波に晒され、「ひゃぁ」と背中を撫でられた様な声を彼女は発した。うかれた僕達にピークがやってきて水をかけたりする行為をとらせ、あろうことか渚を走らせた。ここで擬音、もしくは無音、体だけはムーブ・オン。手をしっかりと繋いで。はぐれないように。
そのとき、彼女の悲鳴が聞こえた。知らないうちに波がさっきよりも満ちて僕達の靴が波にさらわれかけた。僕は悪の魔王からお姫さまを救出する、まるでブロンドの王子。白馬にまたがり魔の手ののびる靴たちをひどく格好良く助け出すのだ。彼女は、幸せに暮らしましたとさめでたしめでたし、といった顔をして笑った。 一番最後に僕も何も特別なことはないようなフリをして、そして笑った。
二人は幸せに暮らしましたとさ、めでたし、めでたし。
TRACK5
話はそう簡単じゃない。人生は長く複雑である。というのがまさに一般論だぜ。
僕は中央線に乗っている。僕の用事はパーマをかけたロングのあの娘に海で借りたハンカチを返しに行くと言う至極下らないものだが。だがもちろん、世の若者が往々にしてそうであるかは僕の知ったところではないんだけど、僕の用事がそれだけであるはずがない、僕は彼女に会わなくてはいけない。いや、会うべきだ。
待ち合わせ場所のファーストフード店で、コーラを飲みながら過ごすこと数分。彼女はやってきた。奇麗な茶色のタートルネック、サマーニットにジーンズという出で立ちに画材道具の入ったトートバッグを抱えて。気持ちの良い笑顔と一緒に駆け寄ってくる。本当ならばハンカチなんてここで渡せば用事はそこでフィニッシュなのだが、あいにくと僕はおみやげを持参していたのでそういうわけにもいかないのだ。おみやげの名称は下心っていうんだけど。そこら中で見かけんだろ?
彼女、FMの部屋は一般的なワンルームから比べると少し広めで、あまり物がないせいか当時僕が住んでいた部屋とどっこいぐらいの、な、はずなのにもっと広く感じた。備え付けのキッチンの小さな開け放した窓からは小気味良いまな板を叩く野菜を切る音が空へと帰り、その間、僕はただ彼女の後ろ姿を眺めていた。
手慣れているとは言い難いものがあった。が、毎日自炊しているというのもままんざら嘘ではなさそうではあった。借りたハンカチを返すだけで手料理が食べられるなんて僕は全然知らなかったけれど、割とメジャーな潮流に乗った、そんな不問律らしいとの噂は聞いた。女の子からは何はなくとも、必ずハンカチを借りることを是非おすすめしたい。
出てきた料理は手の混んだ代物ではなかったがそれだけになかなか感動的でもあった。味よりもむしろこの事実、リアリティが僕を満腹にさせる。その後、僕たちはマットレスの様な寝床でごろごろと転がり、何を話すでもなくうだうだ雑談していただけなのだが、僕が帰るためにはそろそろ私鉄の電車の時間が近ずいてきていた。ここで。僕はけっこうな勇気とカロリーを消費しなくてはならない。
「あ、もしかしたらうちの方へ行く私鉄がもう間に合わないかもしんない。やばいな、多分今からじゃ終わっちゃうかも」
本当にもう正気の沙汰ではない、この白々しさといったら。真っ白だよ。
「どうしよう」
こんな風に反応を伺うのももう最悪だ。
「…いいよ。泊まっていっても」
まさに、まさに。嘘をつくのは大変な作業である。でも無理も道理も通った。押しの一手、おっしゃる意味が分かりません。
TRACK6
僕と僕との会話。
『気分はどうだい?』
「ああ、すこぶる良いね。まるで風が僕に吹いているみたいだね、別に強がりじゃないよ。だって、そうだろう?もはや何の憂いもない」
『そう?』
「そうだよ。見ててみなよ、きっとうまくいくから。そういつまでも同じことは繰り返されないさ、アンラッキーだなんて言わせないね、君にもだよ」
『別に運は悪くないよ』
「立ち位置の問題なんだよ。僕はここなら平気さ。大丈夫。ノープロブレムだね」
『そうなの?』
「そうさ。僕も捨てたもんじゃないだろ?」
『どうだろう?』
暗転、という呈。
TRACK7
同じ布団の中、僕も彼女も眠れていない。大分個人的な話へと突入し、立ち入った空気が男と女を意識させる。いや、意識せずにはいられない。話の途中で彼女はごく自然に寝返りをうち、肩を下にして僕の方を向いた体制をとった。その鮮やかさに感心する。明鏡止水、拳法の極意。きっと僕の寝返りはとてつもなくみっともないんだろうから。
向かい合った体制の均衡がふいに破られ無我夢中できつく抱き合う、が、彼女は僕の足を自分の股にきちんとはさんだ形に。一枚上手だ。僕は自分のイニシアティブの存在をないがしろにするわけにはいかないのであえて言わせてもらうが、僕達は破ってはいけない沈黙を破るように同時にキスをした。同じ心音、同じタイミングってことだ。正確なところは僕が気づいたときにはすでに彼女の舌は僕の喉内に潜りこもうという意気込みであったがとりあえずそういうことだ。そこから彼女の前の彼氏の話が始まる。
長いので省略。
「うん」
曖昧に、何も言うまい。このスタンスはとても便利だ、いつも僕を助けてくれるのだ。言うべきことなんか在りはしないんだから。たかだか、僕らの歳などでは。
「あたし、けっこううまいよ」
「前の彼氏より大きい、してあげよっか?」
と舌舐めずり。
返事はあとまわしにして僕はマウントポジションを取り返す、そして彼女のくりんくりんとうねるライオンのたてがみみたいな髪の毛を見つめていた。彼女はしっかりと現実を見つめている、だけど僕に見つめられるのはその髪ぐらいのものだ。ひどくうつろなまま彼女の服に手をかけひとつひとつボタンを外しにかかり、ワン、トゥー、スリーで3つまではずしたところで彼女がブラジャーをつけてないという当然のことが分かったが、かまわず全部はずした。ワン、トゥー、スリーで出るのは鳩ばかりとは限った話じゃなく、ハッとする。乳房だったからね。
でも僕はぜんぜんダメだった。
うん、とも、ううん、とも言えなくなってしまった僕に腕をまわし、そんな僕をよそに、
「なんか、あたし、したくなっちゃった」
「あたし、したいよ。しない?」
もはや疑いようもなくなってしまった。セックス。
「よそうよ」
10秒経過、残り20秒。10秒。5秒。持ち時間は無常にも、少なくなる。こんなときには異常に早くだ。
オーケーと気軽に言えたらどんなにか楽だったか知れない。軽く堕落へ踏み込む覚悟もできていたはずだ、なのに、僕はダメだった。ぜんぜんダメだった。一体何の為だった?
胸の内、頭を抱え。イエス、ノー、オー、ノー。いや、不能なんだよ。
10数年前に父を亡くした。私は19歳だった。
それでも私は月々のお小遣いをもらってはいたが微々たる額で
流行りの服も買えず、同級生と一緒に遊びに出かけても
小遣いの心配ばかりで少しも楽しめなかった。
いつも家にいる父のことを邪魔だと思ったし
そんなことばも平気で口にしたこともあった。
当然母には怒られた。父は何も言わなかった。
やがて父は入院し母が泊まり込みで看病することもあった。
私はそれをいいことに彼氏を家に連れ込んだりもしていた。
それは秋のことだった。厳しい食事制限のため
肉も抜かれほとんど味のない病院食しか食べさせてもらえない父が
ふとマクドナルドのCMを見て、月見バーガーを食べたいと言った。
母は仕事でいなかった。
いれば、きっと反対しただろう。
病院からマクドナルドは遠かったが、私は車を持っていた彼氏を呼び
目当てのものの買い出しに成功した。
半分冷めてしまった月見バーガーを、父は「美味しい」と喜んで食べた。
父は言った。
「もうお父さん、永くないことを知っとるから……
隠さんでいいよ。」
それから2週間後、父は亡くなった。
出棺時に母は取り乱し、気を使った親族の判断で
母は家に置いていくことになった。
火葬場では、故人と一番近い人間が点火のスイッチを押さなければならない。
一人娘の私が押すことになった。
「しっかり押さんと、お父さんは成仏できんからな」と親族は言った。
目を瞑ってギュッと押すと、それまで出てこなかった涙が出てきた。
初七日のあと、入院していた病院へ置いたままの荷物を取りに行くため
私はあまり病室に行かなかったので看護師の顔をあまりよく知らない、
しかし看護師はみんな私のことを知っていた。
母も私もいないとき、薬をもってきたり点滴を交換する看護師に
父はいつも私の話をしていたのだと言う。
見舞いにきたときに屋上へ一緒に行ったこととか。
その話を聞いてまた皆で泣いた。
それからしばらくして。
病院に置いていた父の私物の整理をしていると
二つ折りの、くたびれた黒い皮の財布があった。
着物を着て笑っている私の写真。それより大きくなってからの写真は
私が触らせなかったから、持っていなかったのだ。
小銭入れの部分には、いくばくかの小銭と、ティッシュに包まれた
「蛇の皮」が入っていた。
「蛇の皮を財布に入れているとお金持ちになる」
そんな話をどこかで聞き込んでいた小学生の私は、通学路の途中に落ちていた
蛇の皮を持ち帰った記憶がある。
「そんな汚いものを拾わないで!」
母には怒られ、すぐに捨てるように言われたが、父はゴミ箱からそれを拾っていたのだろう。
あれから何年もたったのに、まだ残っていたなんて。
四十九日が終わってからも、亡くなったことを知らなかった父の知人が
訃報を知り家を訪ねてくることがあった。
私とは面識もないその人々もまた、私のことをよく知っていた。
○○大学に通っているんですね。足が速くて駅伝でも二区を走っていたとか。
父はあちこちで、たいして出来もよくない私のことを吹聴して歩いていたのだ。
父が亡くなった時につきあっていた彼と別れ、
その後も出会いと別れを繰り返し、結婚できないまま現在に至る。
そして、こんな私を
無条件で誰よりも愛してくれていたのが、父しかいなかったことに気付かされる。
いろんなところで見かける家族連れ。
中でも、小さな娘と歩いている父親の顔は、いつも幸せそうに蕩けている。
ちっとも気付かなかったが、私の父もあんな顔をしていたのだろう。
娘を愛さない父親なんていない。
もしもそんな父親がいるとすればそれは男ではない、違う生き物だ。
http://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-320.html
だからこんな話でも涙が出てきて、止まらない。
そんなオチだ。
食後の食器洗いなんて誰にとってもめんどくさいものだと思う。
僕もそういう人間なんだが、面倒だと思いながらも普段はその都度洗っている。
しかし、たまにどうしようもなく面倒くさくなって「この番組見終わってからしよう」とか「朝起きてからでいいや」と、先延ばしにすることもある。
しかし、そうやってしまうとたいてい先延ばしにした時間(「番組の後」や「次の日の朝」)になっても洗うことはない。
そればかりか、食器洗い以外のことに関してもやる気が起きなくなったりする。食事するのに食器洗うのが面倒だから出来合いのもので済ませる、というのはありがちだとしても、食事と直接関係ない学校の課題やバイトまでやる気がなくなってしまう。
自分では意識したことがなかったが、僕のなかで「食器洗い」というのがやる気の点火スイッチになってるみたいだ。
これからはしんどくても淡々と食器洗いをこなしていこう。
元ネタの記事を読まずに書きますよ。
たとえば相撲中継では、観客の表情まではっきり見える。金色の帽子をかぶった常連のおじさんもくっきりだ。
いつも見てる番組をハイビジョンで見ると、違いがよくわかると思う。
もう戻れない太陽の牙ダグラムだよ。
そもそも、HD解像度が必要か必要でないかという問いはナンセンスだと思うなあ。
カラー放送って必要? 白黒のままでいいんじゃね、的な話も昔はあったんじゃないかな。
でも今はカラー放送しかないよね。
受像器が普及すれば、ああハイビジョンで困ることはないねえきれいだねえ、でおさまるんでないのかな。
問題は、ハイビジョンで放送されている番組が今は基本的にコピーワンスだということだ。
でもこれは解像度とは別の話であるね。
いっぺんスイッチ切って入れ直すと10分ぐらいは使えるのに。
使おうと思えば際限なく金を使いたいし、
使わなくていいやと思えば本当最低限しか使わない。
やろうと思えば際限なくやりたいけど
やらなくていいやと思えば本当最低限の事しかやらない。
ひとたび「やるよ」スイッチが入るととことんまでやりたくなるけど
それを消すとどうでもいいよ……生きてるだけで……って感じになる。
スイッチが入ってると、興味あることにたいしてどんどん突き進んでいくモードになるため、金もどれだけあっても足りなくなる。
しかしなんというか「悟るモード」に入ると「でも別にそんな事しなくてもいくね?興味あるっていって色んな事やってるけどこれって単なる自己顕示欲とかじゃね?なら別にやらなくてよくね?」って感じでどんなに興味あることでも意識的に一歩引いて、冷めモードに入ると冷める。でもその冷めた意欲を意識的に回復させることも出来る(それがスイッチ入った状態)。
そんな感じで、どちらかしかない。
どうでもいいよ。無難でいいよ。とひたすら省エネモードで進む人生か。
基本的には前者が多いのだが時々後者にもなる。それの繰り返し。中間がない。
一度、このこととは余り関係ないが精神科へ通っていた時、「0か100かの思考は危険だよ」と言われたのだが、そんな事は重々分かっているのだ……でも直すことが出来ない。人生一番賢いのは、7割8割で進むことなのだろうと頭では分かっているがそれが出来ない。俺の場合「やる気」がオンオフの二通り、デジタルな感じに二つしかない。オンになれば100だが、オフになると0になる。その中間のそこそこのやる気というのが起きない。やる気に火がついたらかなり精力的になるけども、やる気がなくなれば本気で何もしたくなくなる。風呂も嫌だし歯磨きも嫌だ、パジャマに着替えるのも面倒だというレベルにまでなる。
しなくてはならない事はオフ状態でもやらなくてはならないわけで、そういうことは100ではないこともあるがそれでもせいぜいが10、20である。80や70という状態にはとてもなれない。そういう効率のよい賢い生き方が出来ない。
そういう性格を直したほうがいい、と幾人もから言われ続けてきた。それでもこの性格は治らない。
別に変な教育を受けたわけでもないし親に問題があるとも思えないのだが一体全体どうしてこんなややこしい性格になってしまったのか。やれやれ。
くそ、これで書き込めるか?
増田、俺を除く10人の増田よ。読んでるか?これを見れたならリロードするな。おそらくこの記事はすぐに消される。スクリーンショットを撮れ。プリントアウトしろ。重要なことから言うぞ、俺たちは、仕組まれた11人だった。間違いない。これまでid:jkondoの手のひらのうえで遊ばれていたに過ぎないんだ。
俺たちは選ばれてしまった。自分でここに来ることを選んだ?違う。そうじゃない思い出せ。初めてここに来たときのことを。どうやってここを見つけた?書き込みたくなるような記事がなかったか?あるいは、自分の中で何か書きたいという衝動が起きたときに、タイミングよくここを見つけなかったか?id:jkondoは、はてなは、この広大なWEBネットワークを使って俺たち増田をコントロールしている。俺はおそらくインビテーターにやられた。今思えばそうだ。いかにも俺がレスしたくなるような話題が振りまかれていた。ちょうど俺が匿名ダイアリーにアクセスするタイミングに、だ。そんなことがはてなに可能なのか?最初は俺もそう考えた。だがしかし。それができるんだ、はてなには。
先に注意しておく。周囲を見るな。増田の周囲の人間に、必ず数人のidホルダーがいる。それは他人かもしれない。家族かもしれない。友人かもしれない。恋人かもしれない。くそっ!俺の場合は恋人だった。おそらくだが、あいつは俺の行動を匿名ダイアリーの方向へと誘導していたはずだ。「もういい加減増田やめようかな」俺のそのつぶやきをあいつは聞いた。あのときのあいつの目が忘れられない。あの、目。
俺が狂っていると思うか?ああ、俺が他の増田なら同じように思ったろう。だが、証拠がある。はじめに言ったよな。俺たちは選ばれてしまったと。俺たち11人には共通点がある。実に奇妙な共通点。だが。それを書き込もうとすると弾かれる。書き込みがうまくいかない。ローマ字もダメだ。あのキーワードがスイッチになっているのか?昨日までは書き込めた他の単語もいくつか書き込めなくなっている。時間がない。俺は逃げる。この記事はおそらくすぐ消されるだろう。ちゃんと残しておいてほしい。が、できるだけ目立った動きはするな、今は。いや、待て。もしもこの記事が消されないとしたら?それは、俺のこの行動も仕組まれtAfCl{IA@AGJ@@AEP:34;LQQ][;;R
FV
P
[
DFそ@
あ
でどっちかっていうとインドアで暗くてまあこうして増田とかに書き込んでネット大好きんぐな人間だから、絶対客商売は向いてないと思ってたんだけど、何の因果か服屋のバイトをすることに。
でもそしたら自分でも意外だったんだけど結構喋れる……んだよね。
超人見知りなんだけどね。
なんか逆に、客だから、割り切ってできる……のかな。
今も特に人見知りでインドアな性格は変わらないけど、バイトに入ると別人格のスイッチがはいったかんじで「いかにも最近のオシャレ好きな若者店員」風に「いらっしゃいませー。何かお探しですか?」とかなんとか言える。別人格を無意識に演じている感覚?というか。「ショップの店員」人格が入る感じ。でも、何らかの知り合い、例えば同級生とかが来ると素に戻ってしまうw一気にオタ臭い喋り方になる。
私より前にバイトはいってる人に「元気で人見知りしないから客商売向いてるね」って言われた。ええええええええ全然っすよ、人見知りしまくりですよ、元気はカラ元気ですよ、って言ったけどあんまり信じてくれず笑ってた。まあでも案外こんなもんなのかな。絶対無理って思ってたけどやってみるもんだね。案ずるより産むが易しって本当そうだ……今までの人生でこの諺が何回心の奥から引き出された事か。実行するとまあ案外できちゃったりするもんだ。実行せずにうだうだ考えてる時って物凄い最低最悪の事まで考えちゃうからなぁ。
とある場所で村田セーサク君を見た。
スイッチを入れた瞬間、カチーンと地面に固定されているかのように微動だにしない。
レールの上をわざわざ中央でなく、端まで1mmしかないんじゃないかと思うようなところをきっちり走る。
スイッチが切れた瞬間魂が無くなったかのように、ふらっっと倒れる。
しかし、じっさいの生活について考えると、
そういう99.9999%みたいな制御クオリティって実はそんな必要じゃなくて、
だいたい80%ぐらいでも、なんとか人間の側で適応してやってけちゃうだろうなぁ
と、そして、実用に足る安価な80%クオリティと、実際そこまで必要でないけどすごい99.9999%が売ってたら、
大部分のひとは80%を選択するんじゃないかなぁ、
などと、あいまいなことを考えたのであった。