2018-10-29

[] #64-1「ヴァリランキン」

いま最も人気のあるアニメといえば『ヴァリアブルオリジナル』、通称『ヴァリオリ』だろう。

異世界で生まれ変わった主人公が仲間たちと共に冒険をしつつ暴虐共をぶちのめす、完全オリジナル王道ファンタジーだ。

個人別にファンではないが、それでも知っているのはそれだけヴァリオリが人気だということでもある。

今回は、そんなヴァリオリの人気にまつわる話をしよう。


『ヴァリオリ』が第4シーズンクライマックスを迎えようとしていた頃だ。

とうとう四天王の一人であるスコロペンドリドを打ち倒したことで、ファンの盛り上がりは最高潮だった。

上役はこのタイミングで、ヴァリオリの人気投票企画した。

次のシーズンまで間があるため、その熱を保ちたかったのだろう。

俺にとっても、投票中のファンたちの奮闘ぶりは記憶にも新しい。

身近な観測範囲内でも、弟やバイト仲間、クラスメートなどのファンたちの眼光は鋭かったからな。

まあ、そいつから聞かされるのはもっぱらロクでもないものだったが。

「ねえ、兄貴投票してよ」

「いや、ああいうのってファンがやるべきもんだろ。何で俺がそんなことしないといけないんだ」

「一理あるけど、実際のところファンたちの“度合い”なんて誰にも決められないだろ。広い意味では兄貴だってファンとすらいえるし、そうじゃなかったとしても兄貴には投票する権利があるんだ。だったら、やるだけやっても誰も責められない」

そう言われて頑なに断れるほどの理由もないため、仕方なくテキトー投票した。

そのことを何気なくバイト仲間のオサカに話したら、やたらと詰め寄られた。

「マスダ、そういうのって正直やめてほしい。作品のことを大して好きでもない人間安易投票することを容認すれば、そいつらが寄り集まってネタ投票とかする悪ノリにも繋がりやすいわけだから

同じ作品ファンでも、言っていることが全く違う。

まあ、当然といえば当然だ。

人気投票というのは、要は個々人の価値観の寄せ集め。

理由も違えば、認識の程度も違う。

から臨み方も違ってくる。


結果が発表された後もロクでもなかった。

ランキングの結果だけどさあ、そもそも投票方法イマイチなんだよなあ。ネット投票しかなくて、しかも1人1キャラ、1エピソードまでってのはなあ」

クラスメートタイナイの場合は、こんな感じで愚痴っていた。

「そうしないと集計が大変だろう。それに組織票とかが発生するだろうし」

「そんなの対策としては意味ないって、いくらでもズルなんて出来るんだからもっとシステムレベル最適化しつつ、フェアなやり方をすべきだよ」

まあ、大した理屈じゃない。

こいつの場合ランキングの結果に納得できなかったから、過程ケチをつけることで自分の中で帳尻を合わせているだけだ。

もし自分が納得できるような結果だったら、多少の粗があっても同じような主張はしなかっただろうからな。

「他のやり方ってどういうのだ? ことわっておくが、現実問題で十分可能方法にしてくれよ」

「……もう、その断りを入れたら僕が答えられないの分かって言ってるだろ」

そんな感じで、俺にとっては大した出来事じゃあない。

だが後に、この裏で凄まじい激闘があったことを俺は知ることになる。

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