ヴァリオリ人気投票は、あえて面倒くさい手続きを要求するシステムになっている。
1人につき1回のみで、アカウントとも紐づいているので連続投票は出来ない。
もしもそれを潜り抜けたとしても、まだ関門があった。
手続きの途中では、ヴァリオリに関する様々なクイズがランダムで出題されるようになっているんだ。
それに正解しなければ投票することが出来ないってわけ。
クイズはファンならば簡単だがニワカには分からない、絶妙な難易度になっているらしい。
投票する人間をふるいにかけることができるし、自動化などで連続投票することも防げる。
つまり、よほどの工作作業でもない限り、この人気投票の結果は誠実なものであるはずなんだ。
それを踏まえて、そう安心できる材料が欲しいってことなんだろう。
ならば可能性として考えられるのは、シューゴさんも言っていた通り組織票だ。
父は、人が多く集まりやすい有名なコミュニティサイトを一通り回ってみた。
しかし、第23話『こんな感じのスクロールありませんか?』について言及された、組織票を目論むようなやり取りは見つけられない。
父はそのことをシューゴさんに伝えた。
「うーん、腑に落ちないが、オレの気のせいってことなんだろうなあ」
どこか喉に引っかかりを覚えつつも、確信があるわけではない。
とどのつまり、自分たちが思っているよりも評価されているエピソードってことなのだろう。
シューゴさんは、そう納得することにした。
「いや、ちょっと待ってください」
だがその時、今度はフォンさんが“ある違和感”に気づいた。
「むしろ変じゃないですか」
「『むしろ変』とは、どういうことです?」
「その23話は、各SNSであまり話題にあがっていなかったんですよね。なのに他のエピソードを差しおいて、順位は5位ってことでしょ?」
フォンさんの指摘は核心をつき、そして確信へと近づいていく。
「……ああ、そうか!」
問題にしているものが順位である以上、その正否は相対的に判断すべきだ。
それを考えると、他の高順位のエピソードと比べて23話だけは明らかに不自然だった。
その他のエピソードは、父の回ったコミュニティサイトでもよく話題にあがっている。
5位になるようなエピソードであるなら、これも話題になっているようなものでないとおかしいんだ。
「やはり“何か”あるな」
「企画の運営に連絡を取ります。ちゃんと調べてもらいましょう」
「どうしました?」 「このエピソードの方のランキングなんだが、第5位が『こんな感じのスクロールありませんか?』になってる」 第23話『こんな感じのスクロールありませんか?』 ...
俺がその一件の裏事情を知ることができたのは、父がヴァリオリのアニメスタジオで働いていたからだ。 人気投票の結果発表から数日経った頃、父は仕事仲間を連れて家に帰ってきた。...
いま最も人気のあるアニメといえば『ヴァリアブルオリジナル』、通称『ヴァリオリ』だろう。 異世界で生まれ変わった主人公が仲間たちと共に冒険をしつつ暴虐共をぶちのめす、完全...
≪ 前 しかし、運営のマツウソさんから返ってきたのは、「不正だと思われる投票の動きはなかった」というものだった。 「お願いします。もっと調べてください。明らかに第23話が5位...
≪ 前 「おいおい、まさかそんな……」 「だけど、辻褄は合います」 実のところ、シューゴさんもその可能性はチラついていた。 しかし得意先を疑うなんてことは、できればやりた...
≪ 前 有るかどうかも分からない、あったとして巧妙に隠されている可能性が高い。 二人は数字の羅列を注意深く凝視した。 どこかに異常な数字はないか、矛盾点はないかを探す。 ...