しかし、運営のマツウソさんから返ってきたのは、「不正だと思われる投票の動きはなかった」というものだった。
「お願いします。もっと調べてください。明らかに第23話が5位というのには、何らかの“力”が働いている」
「そんなこと言われても、不正に操作されればすぐに分かりますし、データで投票の流れを見れば矛盾には気づきます。それがない以上、時間の無駄にしかなりませんよ」
だが、それでは辻褄が合わない。
百歩譲って不正がなかったとしても、ないなりの理由はあるものだ。
作り手目線で見ても、世間の反応を見ても、23話は5位になれる理由が見つからない。
にも関わらず何の不正もなかった、の一言では済ませられなかった。
いくら他社の運営している企画とはいえ、ヴァリオリのコンテンツに変なミソはつけたくない。
父たちは原因を探し続けた。
このまま人気投票の結果を公表すれば、間違いなくファンによって紛争が起きてしまう。
「結局、投票サイトで不正な動きがなかったってのがネックですよね……」
「運営の人たちが気づかないほど高度なサイバーテロがあった、とかでしょうか」
「それこそ有り得ないだろ。やることが地味すぎるし、テロだと分からないようなテロなんてテロじゃない」
「ん……待てよ」
その会話の時、父はあることに気づいた。
「どうした、マスダさん。まさか本気でサイバーテロだとでも思ったわけじゃないだろ?」
「もちろん違います。この不正疑惑の原因を見つけられない最大の原因は、『投票サイトで不正な動きがなかった』ことです」
「それは分かってますよ。だから他に不正の方法がないか調べている最中なわけでしょ?」
「そこで躓いて、思考を放棄したのが問題なんです。そして他の方法を模索して、解明を困難にさせていたんです。だけどネットで一般人が組織票をするような動きはない。秘密裏にサイバーテロを起こすとも考えにくい。なら現実問題として、原因はやっぱり“そこ”なんですよ」
「何が言いたいんだ、マスダさん」
しかしフォンさんは気づいたようだ。
「あ? どういうことだ?」
フォンさんは恐る恐る、その“可能性”を口にした。
「人気投票の運営をしている会社、そのスタッフの中に不正操作をした人間がいる、ということですか」
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