2018-06-11

口腔崩壊と言われた。

歯にだめな人生を送ってきた。


はじめての虫歯小学校低学年。連れて行かれた歯医者が驚くほどに下手くそ(ということすらわからなかった)で

子供相手にひどく痛い治療を施す。

二本目までの間に親がまともな歯医者を探し出したようで、2本めの治療は非常にスムーズで痛みもなく金歯が30年も保ってる。

転校先では虫歯発生が落ち着いていたが親が変な歯医者にばかり当たり、「あの歯医者はだめだ」「下手くそだ」「痛い」「ふつうの歯を削った」と

文句ばかりを聞かされ、立派な歯科不信が出来上がる。


大学生になり、喫煙者になる。この頃から坂道を転げ落ちるかのごとく虫歯が発生するも、歯医者は怖い。歯医者は高い。歯医者は大体がヤブだという

洗脳から抜け出せない。

実家は没落するも親はプライドの塊で「歯の治療は金を入れなければならぬ。銀歯なぞだめだ」とまだ歯医者文句を言う。一人っ子家族相談相手もない自分

まだ親の言うことを信じて「だめか。だめなのか」とぼろぼろになっていく歯を、祈るだけで見送る。

会社員になる。自分お金を稼ぎ始め、まだ喫煙者で、治すお金はあるのに今度は通う時間がない。

ひどく傷んで眠れない夜の次の日に、とりあえず抜歯をしてくれる歯医者を探し、気がつけば奥歯も親知らずもなくなった。

そして恐ろしいことに虫歯は前歯を犯し始めた。

予約もいらず、よる遅くまで空いている歯科で、まだ30代前半の自分歯科医は言った。「ボロボロからこの歯も抜歯です。治療法のオススメ義歯です。」


義歯

入れ歯!本気?まだ私30代なのに。


逃げるように自宅に帰り、痛みがなくなったのでとりあえず先送りにしようとみないふりをした


そして結婚し、子供を生んだ。

子供を生んだあとから虫歯はどんどんひどくなった。

赤子を抱えて眠れない。共働き歯医者にかかる時間もない。唯一できたのは、毎日朝晩、2分間しっかり歯磨きをするだけ。

数ヶ月ごとに歯から激痛が発生する。そのたびにネット歯医者を探し、とりあえずの対処をしてもらい、ごまかす。


40代が目の前に迫ってきていた。持病で全身麻酔を受ける事になった。医師に言われた。「禁煙しないと、手術しません」と。

禁煙外来に駆け込んだ。命は大事だ。手術も受けねばならない。では今の自分不要なのはタバコだ。

2回目の禁煙外来で、すっぱりタバコを捨て去った。

無事手術は成功した。禁煙もずっと続けることができている。


しかし、数ヶ月ごとの歯からの激痛は止むことがない。

歯医者抗生物質をもらい、きっつい抗生物質の入った点滴を受けて、流石に悟った。このままではいけない。このままでは、ほんとにだめだ。

気がつけば40歳を超えていた。


かみ合わせがしんどかった。いつ前歯が折れるかわからない。いつ歯がひどく痛むかわからない。恐怖から逃げて見ないふりをするのにも

疲れ果てていた。


夫に聞いた。「私が入れ歯になっても、好きでいてくれる?」

「もちろん。俺は大丈夫。歯がなくなっても大好き。」


歯医者を調べるのに、ネット封印した。

新しい技術があっても、合わない歯医者はたくさんあった。

他の人が良くても、私は怖かった。


子ども学校校医さんで、一度だけかかった歯医者があった。

一度、レントゲンを撮っただけの子ども宛に、通ってもいないのに律儀に年賀状を毎年くれる歯医者さん。

うちから歩いてすぐの歯医者さん。デンターネットの評判も、最新技術もなにもない。でも、毎年年賀状をくれる。そして近い。

校医からさな子をよく診ている。きっと優しいに違いない。こんなボロボロで行くのは正直恥ずかしいけれど、行くならここかなとぼんやり思った。


そして、また、歯から激痛。

半泣きになりながら、近所のその歯科電話をして予約をとった。

初回診察は、レントゲン歯周病の診断だけだった。痛み止めをもらって、次の週の予約を取って帰った。

次の週は神経を抜いた。前歯の麻酔は、叫ぶほどに痛かった。1分で痛みは消えていったけれど。

そして今、一つ一つの歯を治すために校医歯医者に通っている。


噛んだら折れるんじゃないかと思っていた歯に、土台がたった。

これで折れない、ふつうに食べる歯が増えた。これだけで、本当に幸せを感じた。

毎週、歯医者に行くときは1時間から恐怖と戦っている。でも、治してもらえる。痛いけど、痛いかもしれないけど、歯が増える。

歯がなくて、笑うのも遠慮がちだった。大きな口を開けて笑えるように、なるかもしれない。

写真に撮られるのも嫌だった。でも、我慢して通えば、撮られるのが嫌じゃなくなるかもしれない。

ボロボロと歯が落ちる夢を、もう見なくて済むかもしれない。


保険診療してもらっているから、お金ほとんどかかっていない。

銀歯だらけになるかもしれないという不安はまだあるけれど、それでも歯は出来る。崩壊していない口が手に入る。

テレビを見ても、街の人を見ても、きれいな歯を羨まずに生きていけるかもしれない。私には歯がないからという変な劣等感を持たなくて済むかもしれない。


30年以上グチグチと洗脳された歯科恐怖は、歯科不信は拭いきれていない。でも、きっとこのチャンスを逃せば近い将来、総入れ歯アラフィフを迎えることになるんだろう。

からとりあえず人並みの歯の数になるまで、毎週歯医者に通う。



今、「もうこんな虫歯の数じゃだめだ」「痛い、怖い。無理」「金属は嫌だ」「歯医者なんて」と思っている口腔崩壊中の方へ。

虫歯は朝までずっと痛いけど、治療麻酔は1分ちょっとで非常な痛みが消えるから歯医者に行ったほうが恐らく、痛くない。

こんなBBAも街の普通歯医者でなんとかかんとかやってもらってるからきっとあなた大丈夫。行ける。行こう。痛いけど。


こんなとこでBBA自分語りはキモいけどつい書いてみた。

  • 読んでるだけで汗が出るぐらいは医者が苦手 超画期的な治療法出るまで待ってるし、歳をとるほど神経が鈍くなると聞いてがまんしてる

  • たった二分しか磨いてないのよくないよー 染め出し歯医者さんで買ってちゃんと歯磨き指導してもらったほうがいい

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