2014-04-05

失った恋、叶わない恋

会社の先輩ですごい可愛いらしいA子という女性がいる。顔、容姿もそうだが、なにより性格がいい。真面目で、素直で、前向きで、優しくて、周りを笑顔にできる人だ。仕草女の子らしくて可愛い。なかなかそういう女性はいない。恋愛感情抜きにしても、みんなも彼女のことを気に入っているだろう。僕もそうだし、入社しばらくして、僕はA子に惚れてしまった。

しかしA子には恋人がいるらしい。極めつけに高校の頃から付き合っているとかで10年も一緒にいるそうだ。まるで手も足もでない。話しかけてみても惚れているせいか緊張するし。というか、自分自身恋人がいた。あっち側もこっち側恋人がいるならなおさらどうしようもない。ただ、それでも、せめて友達として付き合えればなと思って、一緒にランチやディナーを行ったり、仕事上の話をしていた。また、お互い、そろそろ結婚を考える時期だということでお互いの恋人との生活やこれからイメージについて話しあったりしていた。

僕も恋人とはうまくいっていて、10年には及ばないが長らく一緒にいるし、同棲もしていた。そろそろ結婚するだろうか、という段階だった。親に挨拶もしていたし、A子のことは気になっていたが、”今の生活を壊す勇気はない。”だから愛情は全て僕の恋人に向けていた。

だが、ある時僕は気づいてしまった、恋人が僕に素っ気なくなっていることに。愛情を与えても、暖簾に腕押しというか、反応が薄い気がする。しばらく悶々としていたが、遂に決意して「本当に僕のことを好きか」ということを聞いてしまった。「なにいってるの、好きだよ」という言葉安心しかけたが、それでも粘って問いただすと、「好きかわからなくなった」そうだ。恋人なりに熟考したようだが、結局その2週間後にフラレてしまった。

僕は失意のどん底に突き落とされた。僕はあまり友達がいない、仕事人間だ。人間関係恋人との間だけになるべく収束させて、恋人さえ僕の味方でいてくれれば、それでいいと思っていた。僕にとっての礎がなくなったのだから、相当こたえた。楽しみもなくなったし仕事ほとんど手がつかなくなった。

気を紛らわすために、A子を飲みに誘った。いままで食事には行ったことはあるが、飲みに行ったことはなかった。僕なりの一線だったのだろうか。A子は快諾してくれて、飲みに行けることになった。ふたりきりで行こうという僕の誘いに対しては、A子は僕に警戒心を抱いていないのか、まぁいいか、という風だった。心配されるのもいやなので、恋人と別れたことはとりあえず黙っていた。

飲みに行く当日、会社で見るA子はいつもよりおめかしをしているような気がした。なにもないとは知りつつも、僕は期待していた。正直言うと、いっそのこと、一夜だけでも関係を持てないかと思いホテルまでの導線を描いたりしたが、失礼な気がしてやめた。そもそもA子は純心で、恋人のことを裏切るはずがなかった。

約束通り、夜になるとふたりきりで、おしゃれなバーへ行った。ムードも手伝って僕はいつもより余計に緊張していたが、悟られないよう動揺などを見せず男らしく振る舞うのに必死だった。酒が入ると話は弾んだ。他愛もない仕事の話だが、話をしていくとあることに気づいた。A子と僕の考えは、驚くくらい似てるのだ。価値観感受性が。だからお互いに、会社や現状の不満への考え方が一致したし、不満を前向きに昇華することができた。酒とシンパシーと充実感が入り混じり、高揚し、気分が良くなってきて、A子手を握ってみたり褒めてみたりした。彼女はまんざらでもなさそうだった。帰るのが惜しくなってきて、時間もほどほどに場所カラオケに変えた。

カラオケルームに入っても僕らの話し合いは盛り上がっていてやまなかった。さて、そろそろ曲でも入れてみるかというときに、僕は元恋人のことをふと思い出してしまった。心配されるからうつもりはなかったのだが、フラレてしまい、傷心していることをA子にどうしても伝えたくなった。それで何か解決するわけではないが、僕の傷心を共有したかった。ちょっと相談がある、と切り出し、そのことを伝えた。A子は驚いていて、同情をして、慰めてくれた。傷心の様を全て出し切った僕は、感情が抑えきれず、隣に座っているA子に抱きついてしまった。取り乱していたわけではなく、あくまで男らしくした。こうなると止まらなかった。朝まで一緒に居てほしいと伝えた。A子は同様していたが、すぐに拒否をしなかった。すかさず押しに押した。恋人と別れた寂しさから、そうしたのではなく、純粋に好きだということを伝えた。A子はまだ動揺が収まらないようだったが、それを無視して半ば強引にホテルに連れ込んだ。最後まで嫌がることはなかった、恋人に対する罪悪感が邪魔をしたが、同じ気持ちだったのだ。

ホテルに連れ込んだあとはキスと愛撫をして、セックスをした。セックス自体に満足感や達成感はなかった。ただ、好きな人と一緒に居られることに幸せを感じた。これは夢なのかと何度も思ったが、目を開くと隣で寝息を立てているA子を見ると、現実にいることを実感した。起きた後、あらためて話をすると、彼女からの僕への好意は以前からあったようだ。純心な彼女がいうのだから、嘘ではないだろう。

人に好かれるのはすごく良い。好きな人からなら、なおさらだ。A子に彼氏がいることをこれほど呪ったことはない。言わなくても分かる、価値観が似通っているのだから、”今の生活を壊す勇気はない。”という彼女の考えを。僕だってそうしたのだから。これ以上どうにかはならないだろう、結ばれることはないだろう、知りたくなかった。一時の幸せと同時に絶望も結局ついてきた。今も想い続けているが、その一夜から日常に戻って、その後は何も特別なことはない。今までと同じく、同じ会社の仲間として接してくれている。

全く何もなくなってしまった僕だが、A子の僕に対する素振りからほのかに感じる、彼女との間にある確かな好意が僕の湾曲した自尊心を支えている。

どうにか振り向いてくれないかなぁ。

  • いいなぁ。 俺も好きな子(だいぶ年下)がいて、その子には彼氏がいて、その子は俺と無邪気に遊んでくれるが、俺のことは異性だとすら認識していない。 むしろ、異性だとすら認識し...

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