2020-08-04

ゲーム配信視聴者エアプ多すぎ」問題について

近頃youtubeなどでゲーム実況配信を見ていると、一部の視聴者コメント欄に間違った情報書き込み、それに対して別の視聴者が「エアプは黙れ」「エアプ湧きすぎ」などと反応してバトルになっている光景をよく目にする。

「エアプ」とは「エアプレイ/エアプレイヤー」の略で、まあ英語としては意味不明和製英語だが、ざっくり言って「その場で話題となっているゲーム自分ではプレイしていないのに、あたかプレイ済みであるかのように訳知り顔で振る舞う奴」というような意味である

実際のところ、このようなコメントを書き込んでいる人間の中には、原義の通り実況対象ゲームプレイしていないのに偉そうにコメントしている「エアプ」や、あるいはコメント配信者を混乱させて楽しんでいるような愉快犯も少なから存在していると思うが、

しかし、一時期ゲーム開発・運営に関わった経験から言って、おそらく大半は「プレイ済みでありながらシステムを正しく理解できない・していないプレイヤー」によるコメントだと確信している。

熱心なゲーマーには想像もできないことかも知れないが、以下に書いていくように、ゲームシステム理解には実に様々なハードルがあって、それぞれの段階に実にたくさんのプレイヤーが存在しているのだ。

まず、根本的にゲームシステム理解することが難しいプレイヤーというのが一定割合存在している。これは、開発側のプレイヤー統計の数値などを出さなくても確認できる実例がある。

Steamなどの実績システムで、細かめに実績が設定されているゲーム適当に選び、グローバル実績解除率を確認してみてほしい。

作品ジャンル難易度、長さによって傾向差はあるものの、多くのゲームで最序盤のうちに2~4割のプレイヤーがドロップアウトする解除率の「壁」のようなものがあることがわかるはずだ。

この内には、「遊んではみたが好みに合わなかったから辞めた」というようなプレイヤーも一定存在するだろうが、やはり一定数は「システム根本的に理解できず、先に進めなくて諦めた」プレイヤーなのだ

また、サイドクエストアイテム収集カスタム要素などに関わる脇道的実績に関しては、「ストーリーを進めなくてもその要素を少しでも触ればすぐ取れる」というような実績でも解除率が低い傾向にある。

これも同じようなことで、そもそもそのシステム自体認識していなかったり、認識した上でもシステム理解できず、放置しているのだ。

そういうわけで、実績からプレイヤーのゲームに対する理解能力割合というものを窺い知ることができる。事実として、ゲームプレイヤーのうち何割かは「そんなもん」なのだ

システム理解最初ハードルを乗り越えてプレイ継続したプレイヤーであっても、ゲーム理解度には大きな開きがある。ゲームアクティブユーザー数に対して、攻略wikiなどを利用してデータ面の情報収集をしながらプレイに臨んでいるプレイヤーの割合は、体感では7割ぐらい。

そしてその7割のうちでも、大半はわかりやすFAQ系のページや、キャラなどの性能評価などをざっと洗っているだけのことが多い。システムの内部的な確率計算式などパラメータ的な側面を詳細に解説しているページは、如実に閲覧数が低下しているのが見て取れる。

「内部計算式や理論理解した上で、この部分が強いからこのキャラは強いのだと理解説明できる」というようなレベルに届かず、「キャラのページに強いと書いてあるから強いらしい」レベル理解で止まっているプレイヤーはかなり多い。

このようなざっくり理解にとどまっているプレイヤーや、そもそも攻略情報を見ていないプレイヤーは、知識の不足分をイメージ経験則や直感、時にオカルトなどによって補ってプレイしている。そしてその内容は残念ながらしばしば間違っているのだ。

そして、このハードルを乗り越えてゲームシステム理解に努め、しっかり情報収集しているプレイヤーでさえ、そもそもその情報源となるwikiなどに書かれている情報事実である保証がないという問題にぶち当たる。

内部的な処理の説明に関しては攻略サイト側が勘違いして記載しているパターンも多いし、確率などが絡む要素についてはさらにひどい。(このあたりの内部ロジックを過度に隠蔽するゲーム開発側にも罪はある)

そもそも匿名wikiであれば悪意を持って誤情報を書き入れることも出来るだろうし、近頃は広告収入目当てなのか粗製乱造的なゲーム攻略サイトも目立つようになってきた。

このような理由最初から誤情報が書かれているサイトを読んでしまう、というパターンもあるが、近年はアップデートなどでゲームデータや判定計算などに随時調整が入ることが多いため、攻略サイトの側がキャッチアップ出来ず、過去情報が残っていて結果的に嘘になってしまっているケースも多い。

また、個々のプレイヤーの側でも、そうした調整が行われたこ自体を把握しておらず、過去の時点での情報理解で止まっていたせいで、結果的に嘘を言ってしまう……という事例も少なくないだろう。

そういうわけで、自分システム理解が間違っているかもしれないとか、攻略上どの選択が一番有利だとか、確率論的にどの選択が一番丸いとか、システム上の最高効率を考えた場合の立ち回りとか、最新のメタゲーム動向とアップデート情報とか、そういうことをとことん突き詰めて「最新かつ正確な情報を抑えてアドバイスできるプレイヤー」というのは、上記のような大量のハードルを全て飛び越えた一握りのスーパーエリート層であり、逆に言えばそうでないプレイヤーはどこかで間違った認識を持ってしまっている可能性がある。

そして、その上で、多くのプレイヤーは各々の段階において「それでよし」としてゲームを遊んでいる。ここまで割と否定的ニュアンスで書いてしまったが、ゲームは娯楽なんだから各々のスタンスでやればいいし、たとえシステム理解が間違っていようとなんだろうと、本人がゲームを楽しめているならそれが一番なのだ

しかし、ゲーム実況コメント欄という空間においては、こうした様々な理解段階のプレイヤーが同じ視聴者として接触してしまう。

そして、各々の視聴者自分プレイ経験範囲事実を言っているだけなのに、ごく一部のスーパーエリートを除けば上記ハードルのどこかで引っかかってしまい、「エアプ」として責められてしまうことになる。

「誰もがエアプ扱いされる可能性があるから優しくなろう」とか、逆に「スーパーエリートを崇めてそれ以下のプレイヤーは黙るべきだ」とかそういうことを言うつもりはないし、そもそもこの問題解決できるとは思っていない。

ただ、従来このようなプレイヤー同士は、それぞれ分かたれたコミュニティの中で活動している傾向が強かった。そうした垣根がなくなり、いち視聴者として一つのゲームを楽しむ実況配信という環境において、対立が強く表面化しているのはとても悲しいことだと思っている。

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