2017-08-09

40代大学非常勤講師でも後悔はない

都内私立入学して「大学教授」と呼ばれる職業の人たちと出会い、憧れ、あんな風になりたいと思った。どうすれば大学教授になれるのかと思い、職業ガイドみたいな本を読んで、博士号を獲らないとなれないと書いてあった。姉に話すと猛反対され、就職することにした。猛勉強をして新聞記者になった。給料は良かったし、いわゆる「社会的地位」も高い。どこへ行っても「記者様」扱いをされる。でも、この仕事に興味は湧かなかった。新聞記者になればどんな有名人にも会える。総理大臣にも会える。権力好きな人新聞記者は向いている。自分はそういったことに興味はなかった。偉い人に会いたいとか、有名人に会いたいとかそういう欲求が少なかったから、新聞記者仕事に夢を感じなかった。出世することにも関心はなかった。組織の中で上に行くことにどういう意味があるのか、それで心が満たされるのかと言えば、そんな風には思えない。多分、自分変人の部類に入るのかも知れない。いわゆる「お勉強」が好きだったし、多分「お勉強しか向いている分野がなかったから、社会人としてのスキルとかそういうのは身につかなかったし、身に着けたいとも思わなかった(社会人失格とか、社会不適合とか言われれば、受け入れる)。多分、大学自由雰囲気が好きで、そこに身を置きたいという欲求けが続いたんだと思う。

30代になって会社を辞めて「お勉強」する目的海外留学した。最初語学学校で、そのあと修士課程に入って、博士課程に入って気づくと40代になっていた。博士号はまだ獲ってないし、お勉強研究は別物なので、実はあんまり研究には向いていないのかも知れないけれど、博士論文テーマは一応決まったし、想像していなかったようなきっかけで研究予算をもらえたので、「研究しなければならない」という逼迫した立場になったけど、研究については今まで怠けていたとも言えるので、自分を訓練するいい機会になったと思って毎日資料を読んでる。

留学を始めたばかりのころは新聞社給料が良かったか貯金がなかなかの金額になっていて、それで賄えた。修士課程博士課程では返さなくていい奨学金がもらえた。運が良かったと思う。今は奨学金はなくなって、貯金も底をついたけど、大学非常勤で何コマ担当させてもらえるようになって、大学生と同じか、それよりもうちょっといい生活ができる。40代収入としては笑えるほど低くて、普通の人なら絶対にやらないと思う。大学大学生相手仕事をしていれば、自分生活水準が低くても気にならないか自分収入の低さはあまり気にならない。非常勤講師でも初めて講義をさせてもらえた時は感動した。自分大学生だった時に憧れた職業の最底辺の隅っこの下座も下座とはいえ、入り込めたと思うと泣けてきた。あと、口座に「給与」が払い込まれることにも泣けてはきた。「給与」を受け取るのは、新聞社を辞めて以来のことだった。最近担当するコマ数が増えた。体力的にはそれだけ厳しくなるけど、生活費は楽になる。大学生と同じ生活をするのなら、少し貯金できるかもしれないくらいにはなった。後で聴いた話によると、少子化なので今後は新規採用はしない。とのことで、それでも時々辞める人はいから、結果として今すでに隅っこに入っている自分担当が回って来たということらしかった。運が良かったと思う。もうちょっと遅く博士課程に入っていれば、非常勤講師にすらなれなかった。非常勤講師アカポスとすらも言えないくらいの立場だけど、自分はそれになれたということにやはり今書いていていても感動してくる。

40代大学非常勤講師といえば悲惨人生典型例のように言われる。無駄高学歴で、驚くほど年収は低く、いつ切られるか分からいからだ。そういうのが悲惨で耐えられないという人は、大学院には行かない方がいい。理系企業に雇ってもらえるけれど、文系博士大学教師になる以外に道は残されていない。文系博士には「著述」という道はあるけど、著述はけっこうしんどい上にあまり金にはならない。それでもいいやと思える人にしか勧められない生き方だけど、自分大学という場の雰囲気に馴染みやすいと思うから、それでもいいやと思える。教授様になれるとは思っていない。老後のことも分からない。ある人は「詰んでいる」と言うかも知れない。でもやっぱり新聞社にいるより、今の方がいい。姉の反対がなければ人生の途中で新聞社就職することはなかったと思うし、それがなければ学問世界キャリアもっと積むことができて、もしかしたら教授様も狙えたのでは...と思うこともある。でも、会社を辞めて自分の願望を目指したのは次善の策だったと思う。あと、新聞社にいた時は贅沢な生活はできた。でも、今の生活の方が自分の好きな空間にいられる分、別の意味で贅沢できていると思うし、美味しいものを食べたり、高い服を買ったりするのは若いうちにさんざんやったので、今はあんまりそういうことにも興味はない。贅沢は若いうちにやっておいた方がいい。年を取ると無駄に目や舌が肥えて来るので、無駄な贅沢をしてしまうと思う。若いうちに贅沢しておけば、飽きが来るのでちょうどいい。

今後のことだけど、取り敢えず博士号は獲っておきたい。その後のことは分からない。いずれ帰国したいとも思う。帰国してアカポスに就けるほど甘くはないと思うから、生き延びるという点では今の大学にしがみつき続けるのがベストなのかも知れないけど、もし切られたら帰国するしかないなあとも思う。帰国したらどうしようか...ということは全く分からない。先が見えないという意味ではしんどい生き方かも知れない。でもやっぱり、牛のようなのろい歩みでここまでやれたことは正直に嬉しい。

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