まず最初に。ただのブラコン弟の自分語りだし対して面白くもないし長い。
こんな事増田に書かずチラ裏にでも書くべき事じゃないのかなと思うが書かせてほしい。
これがまた結構な年の差があって9年の年の差だ。
兄は今年で28になる。
晩婚と言われる昨今に対しては少し早いくらいの結婚なのかもしれない。
両親の事が好きじゃなかった俺は代わりに兄が大好きで今もいつも兄について回っていた。
年の差がある分大きな喧嘩もめったにせず、ここまで育ってきた。
兄と俺の性格はあまり似ていなくて、遊び人だが正直で人に好かれる兄と、増田やるくらい捻くれた不器用な俺。
兄は自然と人を引き寄せるというかその往来の無邪気さに人が集まってくるような人だった。
代わりに俺は家で引きこもってネットやゲームばかり触っているような人間でまぁひねくれていた。
そんな兄の友人と遊ばせてもらう事があってそれが外との大きな接点でもあったように思う。
そんな兄と俺の共通の趣味がゲームで二人でよくゲームをしていた。
俺が幼稚園の時からゲームをしていてお兄ちゃんにはゲームでは絶対に俺は勝てなかった。
その時から俺にとってはお兄ちゃんは「さいきょう」だったのだ。
一緒にスマブラをしていて幼稚園児の俺を容赦なくボコボコにしてくれる。どうあがいても勝てない。
それでも俺に気を使って時折わざと負けてくれたりした。
そう、「さいきょう」なのだ。
いつも友達と遊んでいて、ゲームも強い兄ちゃん。俺の友人にもカッコイイと言われ、やたらモテていた。
知識も俺より豊富で賢い。おまけに体格と年の差もあり、空手部主将の兄は殴り合いになっても絶対に勝てなかった。
対して俺はまぁ人見知りで上手くしゃべれないどこにでもいる不出来な弟
兄が高校で空手の試合をしている時、俺は会場の隅っこでゲームをしていた。興味がないわけではないが、お兄ちゃんはさいきょうだから勝つに決まっているのだ。
兄はある程度のところまで勝ち進み、両親もいささか鼻が高いようだった。
対して俺は小学校で問題を起こし、親を学校に呼び出され、勉強もからっきしで授業を抜け出して図書館で本ばかり読んでいた。
担任には「お前はロクに高校も行けないぞ。クズが。」と言われた。
両親は俺と兄を意識的に比べる事はしなかったが、「あぁ、俺は失敗作なんだろうな」と小学生ながら思っていた。
両親の事は好きではなかったし、どう思われようとよかったのだが。
だから最初にスマブラを一緒にした時からこの時も俺のお兄ちゃんはやっぱり「さいきょう」だったのだ。
そんな兄が高校を卒業して就職した。少しして俺は中学生になった。
俺のさいきょうのお兄ちゃんは仕事を辞めた。悪の上司が俺のさいきょうのお兄ちゃんをいじめて辞めさせてしまったのだ。
両親は落胆していたようだが俺はどうとも思わなかった。兄はさいきょうだからどこでもやっていけるはずだ。
俺は中学に入ってもモテることもなく、時折両親が学校に呼び出されながらも普通に生活を送っていたが、勉強はそこそこできた。
と言ってもあくまで身内レベルの話であったが、あまり頭がよくない俺の家庭では異例の存在だった。
兄は少しフリーターをしてから専門学校へ通い始めた。実家の家業を継ぐつもりだったようだが両親と揉めてあきらめて専門学校へ行ったようだ。
このころから俺は兄にスマブラXで勝てるようになっていた。モンハンも俺が引っぱり、兄は死んだり俺に負けたりすることが多くなっているようだった。
俺は高専へ進学した。就職も良いとの事だったので将来安泰かな、と考えての事だった。
地元の工業高校へ進学した兄とは少し似ているが少し違った道だった。
兄は専門学校で3年かけて資格を取った。俺は高専へ合格したので2人だけでオーストラリアへ旅行へ行った。
俺が中学英語でホテルやレストランで注文を取りながら兄は楽しそうに笑っていた。兄は勉強はからっきしである。
体裁なんて関係ない。俺はさいきょうのお兄ちゃんが本当に大好きなのだ。
兄が3年かけて取った資格を他の学科の友人が1年たらずで取っていたのを知った。
進学か就職かで進学を選んだが兄の親会社に就職する可能性もあった。
絶対に腕力では勝てないと思っていたが一度殴りあいの喧嘩になった。昔は殴られてばかりだった俺は初めて殴り返した。
さいきょうの兄は少しよろけた。あの痛かったゲンコツが昔ほど痛くなくなっていた。
俺は兄に負けるものが少なくなっていた。それでも、さいきょうのお兄ちゃんが大好きだった。
何一つバカになどしていない。持っている能力の話でもない。理屈抜きでお兄ちゃんはさいきょうだからだ。
兄の友達から聞いた。兄は「あいつは俺を超えた」と笑いながらこぼしていたようだ。
笑って認められること、それが兄の強さだった。
もう俺だけのさいきょうのお兄ちゃんじゃない。夫であり、お父さんになるのだ。
ご祝儀も少し奮発して渡した。
俺は少しいじけたように兄に渡した。兄は屈託なく素直にありがとう。と言った。
捻くれた俺にはあんな顔はできない。気づいた。あぁ…やっぱり、兄はさいきょうだったのだ。
悟った。どれだけ頑張っても俺は絶対にさいきょうのおにいちゃんをこえられない。
あのスマブラをした日から、やっぱり、ずっと、どうあがいても俺は兄に一度も勝てていなかったのだ。
兄の部屋は今日から俺の部屋になる。オーストラリアで買ったワインが飾ってある。俺が20になったら一緒に飲むつもりだ。
式の準備をしなければいけない。
スーツを漁っていると兄が3歳の泣きじゃくる俺を笑いながら抱いている写真を見つけた。
記憶にないはずなのにボロボロと泣いてしまった。勝てない。絶対に。さいきょう!さいきょうなのだ!
お兄ちゃんは。俺の大好きな大好きなお兄ちゃんは、やっぱりもう究極的にさいきょうで兄を超える弟もぜったいにいないのだ!!
式できっと兄と両親は泣くだろう。無愛想な俺はきっと泣かないと思う。
でも思う。だからこそ俺は兄を超えられないのだと。初めてスマブラで泣かされたあの日から。ずっと、兄に追いついたこともなかったし、超えたと思った事もなかった。
どれだけ成功しても俺は兄に勝てない。人付き合いも上手くなったがそれでもぜったいに勝てない。理屈抜きでおにいちゃんはやっぱりさいきょうなんだ。
俺は写真を泣きながらそっとまた押し入れに戻した。もう、兄は俺だけの兄ではないのだ。その決別でもあった。
さぁもう式の準備をしようと思う。
お兄ちゃんは俺ら弟にとってやっぱりさいきょうなんだ。どれだけ頑張ってもお兄ちゃんたちには勝てないと思う。
今まで素直に言えなかったけど式でお兄ちゃんに大好きという気持ちをまた伝えたい。
無愛想な俺が兄みたいに両親を支えられるか不安だけど、頑張ってみようとおもう。
おにいちゃん。大好きだ。ずっとずっと、俺にとってさいきょうの兄はただ一人だ。
さいきょうのお兄ちゃん。
さぁスーツを着よう。俺はもうこの家の実質長男だ。兄を超えられなくても、俺が兄の代わりになるのだ。
弟より。
さいきょうのおにいちゃんが、結婚して、 きょうさいになった。 というオチが後日疲労されるのである。