はてなキーワード: 巽昌章とは
『ジャーロ』誌(光文社)で連載中の、架空のアンソロジーや叢書を作る持ち回り企画。書籍化希望。
No. 55 (2015 Autumn-Winter) 第1回 千街晶之「戦争ミステリ傑作選」
No. 56 第2回 鷹城宏「異論理図書館(ビブリオテカ・パラロジック)」
No. 57 第3回 巽昌章「死のカードあわせ――可動式アンソロジーのすすめ」
No. 58 第4回 千野帽子「ミステリのフロンティアはここだ――K文社ミステロイド文庫・創刊!」
No. 59 第5回 蔓葉信博「ライトミステリーの源流と現在」
No. 60 第6回 法月綸太郎「パリンプセストの舟――メタハードボイルド全集(第一期)」
No. 62 第8回 小田牧央「ポスト真実と現代の本格ミステリ」
No. 63 第9回 波多野健「暗号解読――ミステリと現実」
No. 64 第10回 廣澤吉泰「昭和五十年代アンソロジー(国内編)傑作選」
No. 65 第11回 羽住典子「春を売る本格ミステリたち」
No. 66 第12回 諸岡卓真「『そして誰も』系ミステリの世界」
No. 67 第13回 横井司「墓場へ持ちこまれた謎を解く」(テーマ…未完作品)
No. 69 第15回 浦谷一弘「飛行機ミステリ全集(第一期)」
No. 70 第16回 円堂都司昭「ベスト本格ミステリ21世紀」
No. 71 第17回 大森滋樹「『人面瘡』幻想ミステリ全集」
No. 72 (2020 Summer) 第18回 佳多山大地「鉄道ミステリー選集(二巻本)」
No. 74 (2021 January) 第19回 小松史生子「ミステリの中の『忘れえぬ女(ひと)』名場面傑作集(クラシック編)」
――今まで読んできた中で、一番印象に残っている作品は何ですか?
作家になる前後のころ、夢野久作や小栗虫太郎、久生十蘭なんかをずいぶんと読んだんです。彼らの文章の無駄なまでの過剰性は素晴らしい、これが小説の面白さかもしれないなと思ったんですね。『黒死館殺人事件』なんて、話としては何がなんだかわからないんだけど、やはり言葉がいいというか、言葉に力がある。
『黒死館殺人事件』は、私の感じからいえば本格ではないが、なぜそうなのかを考えるとわからなくなってくる。これは、難解な犯罪事件に推理の光をあてて、隠された真相を解明する物語に他ならないからだ。隅から隅までが。ペダントリーが過剰だといっても、それらはすべて何らかの形で犯罪捜査に奉仕している。法水麟太郎の推理が非常識だというかもしれないが、名探偵なんて多かれ少なかれそんなものではないか。この作品の姿形は、やはり本格以外の何ものでもないのだ。それでいて、誰もが首をかしげるおかしな小説へと、『黒死館』は突き抜けてしまっている。本格の姿を残したまま、外ではなく、内側にむけて、それは逸脱してしまったのである。
その作品にふれることによってその後の精神生活が豊かになった度合いでいえば『黒死館殺人事件』がいちばんかも知れない。これほど無際限な遊び方ができる小説がほかにあるだろうか。のちに『薔薇の名前』という補助線を得たときも、改めてつくづくこの作品の偉大さを実感した。
竹本健治 https://twitter.com/takemootoo/status/689053569517895680