2019-04-04

妻が嫌いになった

本当に情けなくて本当に悲しい。

セックスレスが5年間続いた。

その間は何をしてもやんわりと断られ、自分努力が足りないのだと色々なことを頑張った。

妻は専業主婦だが、一人の時間が作れるようにと家事もお風呂も寝かしつけも積極的に行った。

妻はそうして手に入れた時間で、一人で夜遅くまで海外ドラマを見ていた。

スキンシップが足りないのかと思い、ハラスメントにならないようにできるだけ気をつけながらハグや手を握ったりした。

その度に妻の体は僕を避け、握った手は早々に解かれ、再び握り返されることはなかった。

食事も褒めた。日々の家事子育てにも感謝をした。

話を聞いてほしそうにしていれば、仕事で疲れていても見たいTV番組があっても後回しにして話し相手になった。

セックスのために頑張っていたわけでもないし、ただセックスがしたかったわけでもない。

妻とセックスがしたいという気持ちを快く受け入れてもらうことで、妻との愛を確かめたかったのだ。

子供が寝ている横ではそんな気持ちにならないと言われれば、子どもたちを実家に預けて外食に誘うようにしたし、妻の両親を旅行に招待して子どもたちを両親の部屋でねるように促したりもした。

その度に妻は何かと理由をつけて僕を拒んだ。まだだ。努力が足りていないのだと、その度に何をすれば妻が喜んでくれるのかに頭を悩ませた。

そんなこととは別に、年に1度は家族旅行を心がけているのだが、先日の家族旅行で信じがたいことが起こった。

妻とセックスをしたのだ。

今考えても意味が全くわからなかった。

隣でこどもは寝ていたし、早朝たまたま目が覚めたときだったのでお酒が入っていたわけでもなかった。

空が白み始めたころ、ふと目を開けると妻の横で携帯がぼおっと光を発していた。

「起きたの?」の問いかけに「なんだかね」とそっけない返事。

何時も通り、どうせ拒絶をされるのだろうと妻の布団に入り込んでみると、妻はさっと体を横に避けて僕が入り込むスペースを作ってくれた。

あれ?っと思った。今までこんなことは一度もなかった。

半信半疑でスペースに入り込むと首の下に腕を回してみる。

それも全く拒絶されることなく受け入れられた。

戸惑いながらもまるで教科書に書いてある通り一つずつ手順を進めてみる。

妻はその一つ一つをとうとう最後まで拒絶することなく、めでたく5年のセックスレスは終止符を打った。

ただどうしても腑に落ちなかった。

何故って、すぐ隣には寝息を立てている子供がいたのだから

目が覚めてしまったらせっかくの機会が台無しになるととても急ぎ足なセックスだったのは確かだが、それでもなぜ、妻がこのタイミングで僕を受け入れたのかがわからなかった。

努力が実ったというよりは、妻がたまたま気に迷っただけとしか思えなかったのだ。

少なくとも、それから半年は再び妻と交わるような機会はなかった。

全くこちから働きかけなかったわけではない。相変わらずスキンシップはやんわりと拒絶されるし、妻から二人の時間を作ろうとの歩み寄りがあったわけではなかった。

それをセックスレスの解消というには程遠い現実だった。

あの時のセックスが、気持ちさえ乗じていれば誰とでもするセックスと同じように感じられて疑問は徐々に悔しさのような感情へと変わっていった。

そうではないことを証明してほしかった。

たまたま妻の実家子供を預けて二人で家に帰ってくる用事があった。

日中ではあったが、少し長めの時間をとることができたのだ。

せっかくの機会だからと、普段子供をつれては行けないようなお店でランチを食べた。

食事中は妻の日頃の苦労を労い、褒め、そんな妻を心から愛していると口説いた。

妻も嬉しそうにはにかんでいた。

まだ時間ゆっくりある。家に帰って二人きりの時間を楽しめるのかもしれない。そう期待していた。

しかし、家に帰って妻が最初したことは、テレビを付けて海外ドラマを見ることだった。

子供を迎えに行く時間が迫ってくる中で、唖然とするしかなかった。

いつも欠かさず見ているようなドラマではない。その証拠に、内容もそれほど理解していないし、本人もなんとなくで見てしまうというようなことを口にしていた。

だったらば、これほど二人だけの時間をすごせる機会にすることではないではないか

多少強硬になってしまうかもしれないと思いつつ、妻の隣に寄り添い、恐る恐る膝枕になるように頭を載せてみる。

妻はそれを明らかに嫌がった。

とっさに頭を上げ妻を見て言う。

「ごめん。ただ、せっかく貴重な二人だけの時間からさ、今しかできないことをしようよ。」

何のことかわかっていない妻の手を握ってみる。

すると妻は間髪をいれずに僕の手をぱっと振りほどいた。

「せっかく子供がいない自由時間なんだから一人でゆっくりさせてよ!」

その時の妻の表情と語調は、僕の心を粉々に砕くのに十分すぎるほどだった。

憤りよりも先に惨めさで一杯だった。

その後はただ、呆然と迎えの時間が来るのを待つことしかできなかった。

いままでの自分の頑張りは何だったのだろう。

妻を追い詰めて挙げ句に怒らせて、自分はただひたすら惨めで。

湧き上がってくるどうしようもない性欲のはけ口にしたかったわけではない。

夫婦レイプをしたいつもりなんて一切ないし、だからこそ相手気持ちが動くように働きかけてきた。

それなのにどうしてこんな仕打ちをうけなくてはならないのか。

はいつも僕に何かを求めるばかりで、自分から何かをしようとすることはなかった。

それがある程度はジェンダーロールだと理解した上で自分が頑張り続けてきたが、もう限界だった。

この日を堺に、それまで自分を苦しめ続けてきた妻とセックスをしたいという願望は嘘のようになくなってしまった。

性欲としてセックスをしたいという願望はある。ただ、そんなものは理性でどうとでもできるレベル欲望に過ぎない。

いまだから改めて言えるが、やはり自分は誰とでもセックスをしたかったわけではなかった。

性欲のはけ口を妻に求めていたわけではなかった。

ただ、愛する妻の喜ぶ姿を見たかった。

セックスという直接的な行為しか得られない喜びをともに感じたいだけだった。

今はもう、妻の顔をどれだけ眺めていても、そんな願望は一切として湧いてこなくなってしまった。

もし万が一にも妻がセックスを求めてきたら自分はそれに答えることができるのだろうか。今は全くその自信がない。

同じ惨めな気持ちを味あわせたい気持ちがないわけではないが、それで何か自分に得られるわけでもない。

これも一つ、セックスレス解決だと思えばそれほど悪いものではないのかもしれない。

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