三十路もだいぶ経つが恋人はいない。生物との交尾も四捨五入したら10年はご無沙汰だ。
彼氏が欲しいかと言うとそうでもなく、仕事をきちんとこなそうと思ったら帰宅して食事をとり、気持ち程度にだらっとして睡眠をとらないと翌日の集中力が維持できない。
男に構っている余裕もセックスをしている余裕もないので別に必要もない。
人生で唯一交尾したことある男はそんなに下手ではなかったが、長年二次元がお友達だった私にはひたすら退屈だった。
SかMかというと私はMだけど、奴はNだった。ノーマルのNだ。責めるという発想がなかった。本当にかわいそうだった。
挙句の果てに、私は前より後ろの方がもしかしたら気持ちいいかも知れないことに気付いてしまった。奴には尻を交尾に使うという発想自体がなかった。本当にかわいそうだった。
かといって、他の人間との密接なコミュニケーションが心底億劫だし、そう言うことを許されるのは可愛い女の子だけだなという認識なので、性癖の合う男を見つけようとも思わなかった。
出来れば女の子がよかったが、尚更だった。だから一人なのは別にいいのだ。
一人なのはいいけど、性欲がないかといえばそんなことはない。ある。しかもMで、普通はしないことをしないタイプのやつだ。
そこで、玩具を買おうと思い至った。
都内には大きな明るいお店の玩具の店がそれなりにあるので、送料勿体無いし買いに行くのもいいなと思った。
私はまあ猪八戒みたいな見た目なので他所様にはご迷惑しかかけないが、とはいえMなので、一人でアダルトグッズを買いに来た女だ……という視線を浴びるのはそれはそれで股間に来るものがある。
しかしながらこれは頓挫した。なぜなら私の性欲は、布団の中と、仕事が死ぬほど暇な時以外は完全に沈黙していたからであった。
欲しいのは主に布団の中に居るときなのだ。しかも夜より休みの日の朝だ。
まあ色々物色し、(色々な意味で)収まりのよいものを見繕って買い物かごにいれ、カートに進んだ。
最近の通販はすごい。中身の偽装、送り元の画像なんて当たり前だ。
コンビニ受け取りにするとなんと名前も偽装できる。お金もコンビニで払えばいい。
ファ◯ポートに番号を入れ、レジの若いお嬢さんからダンボール(玩具入り)を受け取る、このプロセスにさえなんかヤバいものを感じる。
コンビニで玩具に金を払って引き取るなんてとんでもない世の中……と思いながら、数日後に私はブツを持ち帰ったのであった。
そして箱を開けてみたんだけど、そう、通販サイトの悲しいところで、
『うわ想定よりでかい』
一気に正気に戻った。股間の潤いがこう、スーッとなる。半分くらいでよかった。
現物を見ないで買うことには限度がある。全然収まりよくない。ほんとに入るのかよこれ。
しかも次に性欲のビッグウェーブが押し寄せるのが何日後か、何週間後なのかも想像がつかない。試しようもない。
どうしよう。もう斯くなる上は支部とかでそういう助平な画像を検索して気持ちを昂らせるしかないのか。めんどくさい。
匿名の日記だから言いたい放題できるけど、一緒に暮らす年下の女の子に通販がバレて「エッこんなの使いたかったんですか?どうせなら今から試してみましょうか?」って言われてベッドに押し倒されたい人生だった。
こうしてセックスの才能がない三十路独身女は、ベッドの上でスマホを握ってこの気持ちを吐き出すしかなくなってしまったのだ。
いや、ほんとにどうしよう。何が困るって、取り敢えず、私は独身だけど、ここが実家というのが最高にまずい。このサイズは流石に隠しきれないかも知れない。なんにも収まりよくない。
生きるのって大変だな、と思いました。
三十路で独身なら家族にバレたところで一定の理解は得られるだろう。 安心して励みなさい。
笑っちゃった、ごめん。 ローションがあればだいたいは入るよ頑張って!