2018-02-02

日本出版業界について説明こころみる

アマゾン出版取次外し加速 印刷工場から直接調達

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26392390R30C18A1TJ2000/

ネット通販なら取次いらないし、マージンとられないし、出版社が儲かるし、ウハウハじゃんwww

ではない事情をできるだけ話を単純にして説明してみたいなー。と思った。

日本で本が書店に並ぶまでの流れ

→[出版社]が原稿を作って

→[印刷会社]が本を作って

→[取次会社]が買い取って

→全国の[書店]に配本されて消費者に売る。

まず、これが基本。出版業界は、大別して[出版]、[印刷]、[取次]、[書店]の4つの業種で成り立っている。

再販制」と「委託制」について

解説

日本出版業界は、この2つの制度採用している。

再販制;書店販売する本の価格を、出版社が決定できる契約の事。本など特定商品以外では独占禁止法に引っかかる違法行為

委託制;書店で売れ残った本は、出版社が買い戻さなければならない契約の事。

【背景】

出版は「文化的活動であるため、市場原理から保護されるべきである」という思想から

単純な市場原理に従って本を作ってしまうと「売れないけど文化的価値のある本」は儲からないので、作られなく・売られなくなってしまう。これを避けるために上記つの制度特別保護を行っている。

再販制」によって、出版社は、市場原理に基づく価格競争に対して強い抑止力を持つことができる。

委託制」によって、書店は、売れない本でもほぼノーリスクで店に置くことができる。

効果

「大して売れないだろうけどニッチニーズに答えられる可能性のある本」を作るリスクを極端に下げる事ができるので、出版文化多様性が確保できる。

「取次」について

原始的役割倉庫と配本】

出版社日本の隅々の書店まで本を届けるのは難しいため、その部分に特化した1次受け書店が「取次」。

本業務は、ある程度まとまった数量の本を出版社から買い入れて倉庫ストックしておいて、全国の書店からの注文に(ある程度)従って適宜本を配る。

ただ、これだけだと、ネット通販の普及とともに消えてしまう業種になる。

役割の変遷:銀行

委託制のため、取次は「出版社から一旦本を買い取って全国の書店に配本。その後、全国の書店からの返本を受け取り、出版社に買い取らせる」という業務を担う事になる。

このため、出版社は、とりあえず大量の本を作って取次に買い取らせれば、一時的にはまとまった資金調達する事ができる。

通常、新刊を出してから返本までには1年程度の猶予があるため、出版社は、作った本を担保にして、無利子で1年程度、お金を取次から「借入」する事ができる訳だ。

取次が出版業界における金融機関である、と言われる所以

業界内における力関係

1) 取次は、出版社に対してはお金を貸して、書店に対しては自分裁量で本を配る事ができる。

2) 取次は、大規模に展開するほど、商品多様性が増し、配本コストが下がるため、企業規模が大きくなる。一方で、出版社は高い専門性を保つ必要があり、書店地域に根差す必要があるため企業規模が小さくなる。

3) 取次は、「文化的活動を促進する企業」として錦の御旗を掲げることができる。

結果、取次は業界全体に対して圧倒的な支配力を持つことになる。

まとめ

このように日本出版業界では、出版文化多様性を確保しようとした結果、取次が非常に強い力を持ってしま構造になっている。

Amazonによる取次外しが、いかに大きな話であり、しかしそんな簡単ではない話なのかが判る。

さてここで、これまでの話に全く登場していないプレイヤーが一人いる。

出版業界における「最強の奴隷印刷会社である

(つづかない)

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