一連の電通セクハラ事件の報道を見て、ちょっとだけ救われたという話。
良い話でも何でもなく、薄汚い俺の心中を晒すだけなのでそこは期待しないでほしい。
まじめに勉強していて、サークルも真面目な輪読ゼミだったので、女を喰っただの何だのという話にとことん無縁だった。
しかし就職活動では自分と全く世界の違う人たちとの交流も増えてくる。
ヤリサーに限らず、世の男どもは女を喰い散らかして遊びほうけている、という実態を見せつけられたのはその頃だ。
就職してからは電通関係の知人が増えてくるわけで、そういった連中も確かに女で遊びまくっていた。
同年代の知人からは「先輩に、女を用意しろと言われるのが辛い」という愚痴も聞いた。
辛いというのは別に女に対して申し訳ないという意味ではなく、先輩が好む女を見つけてくるのが難しいというニュアンスだった。
きっとあいつは先輩の立場になってからは後輩に同じことを要求しているんだろう。
なんていうゲスどもだ、という感覚と同時に、俺には「なんてうらやましいんだ」という感覚も同時に立ち上がった。
俺はそんな良い思いをしたことがないないのに何でお前らだけ、と。
しかし彼女とは一度もセックスしたことがなかった。彼女の方がセックスに強い嫌悪を抱いていたからだ。
俺と付き合う前に男で嫌な思いをしたかららしいが、深くは聞けなかったし、聞かれたくないようだった。
だから俺はずっと童貞で、社会人になって金ができてからやっとソープで童貞を卒業した。
でも電通の連中は、いや世の中の男どもは、金も払わずにオフィスで堂々と女を喰ってるのか、と思うと悔しかった。
かたや彼女とセックスもできない俺、かたやSODの世界を実現できているあいつら、である。
その彼女と結婚してからもやっぱりセックスはさせてくれなかった。
この子もいずれゲスな男に喰われてしまうのかという辛さと、そもそもこんな薄汚いことを考えている俺が父親であること自体がかわいそうという気持ちが混ざりあって、素直に喜べなかった。
大体からして、素人童貞のままパパになること自体に違和感がある。
妻がもし昔レイプまではされていなかったのだとしたら処女懐胎の可能性だってある。
かたや中世カトリックもびっくりの禁欲生殖、かたやヤっては降ろさせる電通帝国である。
この世にこんな格差があって良いのかという怨嗟が蓄積していった。
そんな折、今回のニュースが飛び込んできた。
はぁちゅうの告発内容は、まぁそういうことはあるだろうな、もっと激しい事例もあるだろうな、と納得だったが、それよりも世の反応に驚いた。
#metooタグが流行っているとはいえ、電通ほどひどいケースはあまり見かけない。
そのことに、ちょっとだけ安堵した。
SODはフィクションだったんだ。
俺の怨嗟は、金のないホームレスがビル・ゲイツをうらやんでいるようなものだったんだ。
真にうらやむべきは、普通にただ毎週のように彼女と・妻とセックスができている程度の男だったんだ。
そう思えた。
娘よ、君はどうか、お父さんお母さんのような歪んだ人間観ではなくて、愛し合える人と存分に性生活を送れるようになってほしい。