デザイン会社の一部署として、ネット小売の部署の専属として入社した。
専属つっても二人体制の予定が、うち一人が速攻でやめたので一人になった。
2年目くらいまでは良かった。こっちからの提案について社長も前向きに聞いてくれていた。売上も良かった。
だが3年目くらいから状況が変わる。同業他社が増えすぎて底だと思ってた値段の底が抜けたのだ。
市場売価は下がりに下がり、1万円のもの売ってロイヤリティやカード手数料を差し引くと、手元に残るのは10円切るとかそんな世界になった。
コンサルとして、その人間の意見をよく聞いて事業に反映させるようにと厳命された人間、実質上司に当たる、は
「ネットでの買い物なんか絶対しない。そんな血の通わない買い物は買い物じゃない。ネットで買い物する人間の心理が理解できない」と公言する人間。
ネット小売の部署の上司が「ネット通販を絶対にしない」とのたまうババァになったわけだ。
別にその人間が有能だったわけじゃない。ただ社長の旧知で、とりあえずすぐに回せる仕事がないから俺の上に据えただけの話だ。
こっからどんどん部署の軸はぶれていく。当たり前だ。ネットで買物をしない人間がネット小売の部署を仕切るのだ。
サイトデザインを変えろと言ってみたり(上がってきたラフはネット通販の一般的なフォーマットからかけな貼れていて最悪のUIだった)
とにかく言うこと、やること全てずれていた。
俺はそのババァを無視して、社長に直接他のもっと手っ取り早く売上を上げる方法を提案しようとしたが、そのババァと通せの一点張りで話は全く進まない。
このあたりで売上は月一桁万円行けば御の字と言うレベルまで落ちていた。
ネット通販を毛嫌いしているババァを防壁に社長に意見が通らなくなって、そこから2年耐えた。
この辺で仕事のストレスからうつを発症し、月に2~3回ぶっ倒れるようになった。
俺は社長に直談判の機会を作ってもらい、とにかくあの人を外してネット通販に通じた人を上に据えてくれと頼み込んだ。
結果は、タッチタイピングもできず一本打鍵法でメールをうち、ワードが固まると自分も固まり、
野良WiFiに会社のパソコンを繋ぐことの危険性を説明しても「ただで使えるんだから悪いはずがない」と言い、
挙句の果てに「OCNにお金払っているのに、通販サイトにお金がかかるのはおかしい」と言い出すババァの更に下をくぐる人間だった。
補足しておこう。
彼には「アクセスプロバイダ」と「レンタルサーバー」と「ショッピングサイトレンタル」の違いがわからない。
彼はITに関する仕組みを理解するための言語がインストールされていないのだ。
スマホで見たGmailがパソコンで見たら新着にない、メールが勝手に消えたと騒ぎ立てて人の作業の手を止めるレベルだ。どれだけひどいかはここから想像して欲しい。
彼に分かるのは、その3つ全てにお金がかかっており、「アクセスプロバイダのOCNからうちの契約だけでネットは全て使えます」と
言われたから、「レンタルサーバー代」と「ショッピングサイトレンタル代」は無駄な経費であると言うことだけなのだ。
ここに来て、社長はもはや小売事業で売上を上げようと言うつもりはなく、
グチグチとうるさい平社員である俺に嫌がらせをして自主退社に追い込むことが目的なのだとようやく理解した。
そしてそれを理解して尚、踏ん張れる程もう気力は残ってなかった。