高校卒業後にゲーム系の専門学校に入学し、就活を経てゲーム会社に入社した。
幼い頃からゲームは好きだった。自分が「オタク」と呼ばれる人種であることも自覚していた。
しかし専門学校に入学し、ゲーム会社に入社をし、様々なゲーム好きを自負する人々に出会い、私は「ゲームが好き」なのではなく、「好きなゲームが好き」なだけなのだと気が付いた。
このふたつの違いは、創り手になってしまった今の私には致命的なまでに大きい。
私は好きなゲームだけが好きなのであり、「ゲーム」というコンテンツが好きなわけではないのだろう。
いくつもある好きなもの、そのひとつとして「ゲーム」が存在しているだけ。
正直に言うと、頑張らなければいけないゲームは苦手だ。
飽きっぽい性格のためレベリングは途中で挫折するし、ハラハラするのが苦手だから対人戦も得意ではない。
オンラインゲームのレイド戦とかギルドとか、ほんとに勘弁してほしい。
なぜ知らない人間に、ゲームの為に自身の時間を強制されなければならないのか。
でも、ゲームはやらなければいけない。
なぜなら私は「クリエイター」で、ゲームに触れることは義務であり仕事だからだ。
もちろんスプラトゥーンの前作の売り上げや人気、今作発売からの怒涛の勢いは理解していた。
それを理解しながらも、私はスプラトゥーンに今日まで一切触れたことがなかったのだ。
しかも「wiiUもスイッチも持っていないから」というゴミのような理由から、だ。
スイッチが手に入ったらやろう。でも今、手に入らないしなあ。そんな言い訳を脳内で何度繰り返したことか。
そもそもゲーム会社に入社することが決まっているなら、スイッチぐらい予約しておけという話である。
そんな私がスプラトゥーンのプレイに至った経緯は簡単、会社の都合である。
スプラトゥーンやろうぜー!いぇーい!なるほど、わかりました。参加します。そんな感じ。
で、プレイした。
会社の人と対戦をした。
気が付くと3時間が経過していた。
いつの間にか終電を逃していた私は都内のネカフェに転がり込んで、今、これを書いている。
普段ノベルゲームばかりやっている私は、久々に心の底からこう思った。
ゲーム下手な私は全く勝てない。チャージと塗りの使い分けも上手くできない。
でも、楽しい。
上手くなってから楽しくなったのではなく、私は最初から、下手なままでも楽しかったのだ。
スプラトゥーンは対戦ではあるが、敵を倒すことが全てではない。リザルトは「どれだけ多くの面積を塗りつぶすことができたのか」で決まる。
そして塗りつぶすことは、ただボタンを押すだけでできる。だから下手くそでもちゃんとリザルトに貢献できる。
基本操作に慣れてくると、今度は敵を倒してみたくなる。ひたすらペンキをまき散らしていれば、初心者でもキルはできる。
下手な自分が敵を倒し、倒した相手の名前が画面下に表示された時、私は満面の笑みを浮かべていたのだ。
たかだか3時間しか遊んでいないため、私はスプラトゥーンに対して適切な講評を述べることができない。
だが、これだけは確実に言える。2が出た今更、ようやく気付いた事実。
スプラトゥーンは間違いなく、革新的なまでに面白い「遊び」だ。
ハードが無い。難しそう。対人戦苦手だし。ガチ勢多いし。疲れるし。
そんな理由をただただ並べて、自ら「遊び」を遠ざけていた。
ゲーム会社に入社して3ヶ月、肩書は「クリエイター」というらしい。
何がクリエイターだ、ふざけるな。
こんなに面白い遊びを知らない奴が、ゲームクリエイターなどであるものか。
スプラトゥーンを未プレイだった私は、間違いなくゲームクリエイターではなかった。
そして残念なことに、スプラトゥーンで遊んだ今も違うのだろう。
なぜなら私はスプラトゥーンを作れない。誰かの価値観を揺るがすゲームを、今の私はきっと作ることができない。
ゲームをやろう。たくさんのゲームをやって、それを誰かと共有しよう。私は間違いなく、「誰かと遊ぶこと」が好きなのだ。
この決意表明じみた文章を読んでくれたうちの一人にでも、私は、私が「クリエイター」として作った遊びを届けたい。
とりあえず、クリエイター駆け出し・ひよっこ新入社員の目下の目標は、スイッチを手に入れるという激ムズクエストをクリアすることである。