2017-05-21

ライトノベルレーベルノベルゼロ」の異世界転生禁止についてその背景を説明する

以下の記事が発端となってノベルゼロのことが多少の話題になっている。

ラノベコンテストで「異世界転生NG」の縛り広がる ネット民「これは朗報」と歓迎 | キャリコネニュース

だが、どうも事情をよく知らないまま反応している人が多いようだ。

かくいう私も浅学非才の身ではあるが、せめて最低限の解説をしておきたい。

ノベルゼロは「30代男性向け」を標榜し「硬派」な作品志向しているライトノベルレーベルである

レーベルコンセプトは、「大人生き様」です。

強大な敵に対し強く在りたい。逆境を打開したい。

社会に抗い、誰にも恥じない生き様を見せたい――。

大人の男であれば誰もが求める「逆転感」を持つ痛快な物語を描き、提供する。

「格好いい大人生き様」をレーベルの唯一のテーマ矜持します。

大人の男で硬派気取りかよ…」といった話は措いて、このようにコンセプトのはっきりしたレーベルが、コンセプトに応じたコンテストを開催しただけである、ということは念頭に置いていただきたい。

また、ノベルゼロ編集担当していると思われるメディアファクトリーは、少年向けのラノベレーベルMF文庫J)やWeb小説書籍化単行本レーベルMFブックス)も抱えており、ノベルゼロのコンセプトはそれらとの住み分けの結果にすぎない。

話の対象安易に拡大して「そっかーライトノベル業界も異世界転生に飽き飽きしてるのかー」などと言えるようなものではない。

新人賞」ではなく「コンテスト」であり「異世界転生以外」はお題にすぎない

NOVEL 0がついにコンテストを開催します! 成人男性主人公にした、「今の大人が読みたい!」と思う小説を広く募集いたします! 題材は「異世界転生」以外であればなんでもあり! 時代舞台も内容もオールジャンルOKです!

https://kakuyomu.jp/contests/novel0_contest

新人賞」であれば、そのレギュレーションレーベル精神性を表しているとみなされることも多いが、「コンテスト」ならばその限りではなく、むしろ募集ジャンル制限はつきものである

また、「大人が読みたい小説を成人男性・異世界転生以外に限定してしまうのはいかがなものか」という声もあるが、今回の募集内容はあくまでこのコンテストに限ったものだと受け取ったほうがよい。

たとえば今後、ノベルゼロから世界転生ファンタジー刊行されたとしても、私は驚かない(ちなみに転生でない異世界ファンタジーは創刊当初から刊行されている)。

さらに付け加えれば、ノベルゼロにはこれまで「新人賞」がなかったので、「異世界転生がたくさん応募されてきたか制限したのだろう」といったもの邪推である

カクヨム」「なろう」との共催であるが故に「異世界転生」を禁止するということ

今回の「大人が読みたいエンタメ小説コンテスト」はカクヨムとの共催、以前に「異世界転生禁止」したことで話題になった文学フリマ短編小説賞は「小説家になろう」との共催である

小説投稿サイト内で開催されるコンテストは近年増えているが、それらは「既に投稿されている作品コンテスト用のタグを付けるだけで応募完了」という形式であることが多い。

そのため、ある程度の制限を設けなければ、そのサイト流行しているジャンル――たとえば異世界転生系――に偏ってしまうことは否めないだろう。

また繰り返しになるが、これらは「場」となるノベルゼロ文学フリマのコンセプトに応じて募集の内容を変えているだけであり、決して「業界全体の傾向」として語ることができるような話ではない。

実際、異世界転生ありのコンテストも、やはり多く開催されているのである

ラノベ業界は異世界転生を禁止しなければならないほどの状況にはない

ライトノベルレーベル現在でも異世界転生以外の作品を潤沢に供給している。

https://dengekibunko.jp/newreleases/

http://www.fujimishobo.co.jp/novel/fantasia.php

http://sneakerbunko.jp/release/index.php

また新人賞受賞作品も異世界転生に偏っているわけではない。

http://dengekitaisho.jp/special/

http://fantasiataisho-sp.com

http://sneakerbunko.jp/special/rookieaward2017win/index.php

そもそもから、何かが流行するたびに新人賞にそのフォロワーが大挙してやってくる、といった話はよくされるものであり、そうした際にもわざわざ規約禁止するようなことにはなっていない。

結論

世界転生に飽き飽きしているというなら、あん記事に乗っかって文句を垂れるだけでなく、異世界転生以外のラノベを買え! たくさん出てるから

「異世界転生」への偏見についても反論たかったが、果てしなく脱線していくのでここで筆を置く。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん