日本テレビで2016年4月期 から「ゆとりですがなにか」という連続ドラマが放送されるという。まあ50代後半にもなる私には今イチ興味ひかれるタイトルではないが、宮藤官九朗さんの関わるドラマは好きな方なので日テレHPのドラマ情報をチェックしてみた。すると、イントロダクションで非常にマズイ情報が提示されていたのである。
「2002年に行われた教育改正。完全週5日制、授業内容、時間数削減、絶対評価導入 ゆとり第一世代と呼ばれる 1987年生まれの彼らは今年29歳。 人生の岐路を迎える」
これを読むと、あたかも授業内容や時間が2002年から減っているように読めてしまうが、実際は違うのである。
実は、実際に学習量や授業数の削減は1980年から始まっているのである。http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1318313.htm
2002年よりも20年も前である。しかも文科省の情報を見ると、この1980年の教育改訂は「大幅な学習量削減と思い切って授業時間を減らしたこと」が特色とされており、さらに「ゆとりと充実」というキャッチフレーズまで登場しているのだ。
なぜ、この時の教育を受けた世代を「ゆとり世代」としないのか?
いや、実は本来はこの世代が「ゆとり世代」だった。若い人は昔の記憶が無いだろうが、1980年の教育を受けた世代を「ゆとり世代」だとするのは私のようなオヤジには非常に納得感があるのだ。私は50代後半だから実感としても「ゆとり世代」という言葉が少なくとも十数年前から出ていたことを知っている。
そして、十数年前に10~20代を意味していた「ゆとり世代」が、数十年経過した現在には20~30代にならずに未だに10~20代であり「1987年生まれの彼らは今年29歳になっている」という定義に変わってしまった事も知っている。
定義が途中から変わった表向きの理由として、2002年の学習量削減の方が規模が大きかったという事がある。減った学習量が多いわけだ。
でも、私のような詰め込み世代から見れば、多かれ少なかれ学習量が減っているのだから同じようなモノである。「俺の方が学習量の減りが少ないぞ。だから俺は若い奴らより偉いんだぞ」と言うのは幼稚すぎやしないか?
こういった事を「マズイ」と内心気づいた最初のゆとり世代、つまり1980年の教育を受けた人達は、おそらくネット上などで何らかの工作をしたと思われる。
その結果、何と学習量が最初に減った時期に関する情報自体が長い間ウィキペディアなどで消され続けていたのである。復活したのはつい最近の事だ。
復活したきっかけというのは、池上彰氏の発言が大きいように思う。池上氏はちゃんと文部科学省から情報を得ていたため、ゆとり世代が実は40代も含まれることを知っていたので、それを発言してしまったのである。
また、長い間学習量が最初に減った世代に関する情報が隠され続けていた別の要因として「若者バカにする系」を好んで視聴したり支持したりする特定層の人間の存在がある。これはヘイト・スピーチの対象をそのまま若者に移したような若者嫌いもいれば「おバカブーム」の支持者のような若者好きもいる。どちらも共通しているのは「若者の中でもバカな奴をピックアップして注目する事で優越感に浸れる中高年の娯楽」を重視している事である。
マスコミが若者をバカにする事を目的とする記事を書いたり、番組を制作する事で、一定の視聴率なり支持が得られたのだとすれば、そういう社会心理が透けて見える。
人間には嫉妬という感情があり、老いていく自分を日々感じるなかで、身近の若い人が、自分よりも肉体的に優れていたり、容姿がキレイだったりすると、無意識にそういった感情が誘発されてしまう。しかも、若い人の多くは自分よりも社会的地位が低い場合が多いため「俺の方がエラいはずなのに、なんでアイツが・・」という気になる。その結果「若者バカにする系」信者となる。
集団というのは、時にそういった感情を生み出すので注意が必要である。そうしないと今回のように事実が隠蔽され、多くの人に間違った認識を広めてしまう結果となってしまう。この恐ろしさに気づいている人が、まだ少ないように思う。
この程度の情報をさも自分だけが知っていたかのように声高に喧伝するこのアラ還のおっさんのドヤ顔こそが致命的である。
大丈夫だよ、馬鹿はこんな長文記事なんか読まないからね