2022-08-06

anond:20220806072158

自称官僚

間違った法令知識に基づき壺擁護するの巻

1 統一教会名称変更不受理行政手続法に反しない

 行政手続法は、1993年に制定された当初、その対象を(1)処分申請に対する、不利益)、(2)行政指導、(3)届出の3つに限定していた(行手法1条2項。なお「命令等を定める手続」が追加されたのは2005年改正)。この3つは限定列挙である(註1)。

 対象がこのように狭く限定されたのは、比較異論の出難いもの対象を絞り、その実現を容易にしようとした、という政策上の理由だった(註2)。むろん異論を唱えていたのは、手足を縛られたくない霞が関官僚であり、長年与党に君臨し続けていた自民党である

 宗教法人法は、宗教法人名称を変更する場合、「所轄庁(文化庁)の認証を受けなければならない」と規定する(宗教法人法26条1項)。認証は、(1)処分、(2)行政指導、(3)届出のいずれにも該当しない(註3)。

 以上より、宗教法人名称変更には行政手続法適用がない。1997年前川氏が文化庁宗務課長として決めた、統一教会名称変更を不受理とする水際対処方針は、違法ではない。

 第2次安倍政権下村文科相下の2015年8月に、この方針が変更され名称変更申請受理され認証された。この間、行政手続法は数次の改正を受けているが、22年8月現在認証対象に含まれないことに変わりはない(註4)。

2 このような運用が生まれる背景

 むろん文化庁対応が、堂々と胸を張れる正当なものだったか議論余地があるだろう。違法性と不当性は別の問題である違法ではないとしても不当という評価はあり得る。行政手続法対象限定したものだったとしても、行政手続の明確性・透明性を図るという精神に反するという批判ができるかもしれない。文化庁の取り扱いは、宗教法人法恣意的運用であるという批判ができるかもしれない。この点は次の3で考察する。

 まずここまでの流れを見ておく。日本行政は、昭和時代、各種のグレーゾーンに漂う手法



などが公然用いられる不透明ものだった。どこが担当か明らかにせず、省庁をたらい回しにするなども問題視されていた。

 平成に入ると国会限定的ながら行政手続法を制定した。行政法学における議論の進展、それらを反映した判例法理が、一定規範提示する努力をしてきた。しかし、もともと行政対象とする活動は極めて広範多岐に渡る。それぞれの分野で専門技術知識要求される。官僚の高い専門的見識に依存せざるを得ない部分がどうしても大きい。すべてを詳細に法律であらかじめ定めて、グレーゾーンをなくすことは不可能ともいえる。

 ところが、それを口実に官僚政治家は、行政コントロールする詳細な法律の制定を極力回避しようとする。仕事は誰だって自由気ままにやりたいのだ。都合の悪い話には手をつけたくないのが世の常だ。省庁の業界団体国民個人に対する影響力は、省庁の権力の大きさそのものである。当然、予算獲得にも影響する。天下り代表される利権だってあるかもしれない。政治家口利きで介入できる余地をできるだけ多く残したい。特に閣僚を選出でき、影響力が大きい与党政治家にとっては、政治力と集票力の源泉となる。これらがひどい場合汚職問題まで発展することになるわけだ。

 現在でも日本行政運用にゆだねられている部分が大きい。あげ連ね始めれば、文化庁統一教会名称変更不受理で行った程度の話など、あらゆる省庁から出てくるだろう。(むろんそれを放置していいと主張するわけではない)

3 文化庁方針は不当でもない

 統一教会名称変更問題では、次の点に留意する必要がある。

 宗教の名を借りて悪徳商法まがいの献金集めを行う集団が、その悪名を隠すために名称変更を試みる場合、端的に拒絶できる仕組みが必要だった。被害拡大を防止して国民を守るためである。あるいはそもそもそのような集団が、宗教隠れ蓑宗教法人としての信用・恩恵を得ていること自体おかしい。宗教法人になることを認めるべきではない。法人化後でも剥奪するシステムを用意すべきだろう。しかし、1997年当時(そして現在も)、そのような仕組みは作られていない。国民を守る法律がなかったことが問題なのだ。作らなかったのは長年与党だった自民党責任が最大だ。

 法律がない中、文化庁ギリギリ違法とはならないラインで、不受理方針を決めた。統一教会名称変更できなかった不利益過大評価して、文化庁方針を不当と断じたらどうなるか。それは統一教会による被害拡大は黙認するという考えと表裏一体である文化庁方針を不当とはいえないだろう。付け加えれば、統一教会名称変更不受理によって、文化庁前川個人が受ける利益は想定できない。ここに私利私欲はない。

 一方、この方針を変更して統一教会名称変更を受理した安倍政権下村文科大臣(当時)はどうだったか想起してみるべきだ。既に自民党清和会)と統一教会関係は、外形的公正性が破綻している。

 安倍政権下で私利私欲疑惑が持ち上がるたびに、そもそも従来の行政運用形式的法令に乗っ取っていない、違法だという切り返し政権周辺から繰り返された。清和会がらみだと、通常ではお目にかかれないような擁護弾幕が張られる。あるべき法がないための苦肉の運用がなされている時、形式論で法令通りの運用に戻しただけとうそぶき、私利私欲を満たすのが政治家仕事ではない。国民のために必要立法を行い、法改正をするのが政治家仕事である

4 誤魔化されないために統一教会問題本質を今一度確認

 統一教会朝鮮半島被害者性を根拠に、日本からお金女性韓国のために献上することを正当化するかの教義を掲げている。これまで霊感商法合同結婚式で多くの日本被害者を出してきた。政府自民党は長年にわたって、そのような団体政治的連携してきた。国民注意喚起すべきところ、安倍政権下では逆にお墨付きを与えたと捉えかねない言動を強めた。

 統一教会問題は、政府自民党がそのような団体と明確に手を切り、国民を守るために責任ある態度に転換できるか否かが本質である

脚注

註1 塩野宏行政法Ⅰ」有斐閣(第3版、2003年)p249

註2 藤田宙靖行政法Ⅰ(総論)」青林書院(第4版、2003年)p151

註3 前川氏が「「認証」は事実認定する行為を指し、「許可」や「認可」とは性質が異なります。」とわざわざ指摘しているのはこの意。

より正確には、認証とは、一定行為文書の成立・記載が正当な手続によってなされたこと(事実)を行政確認する行為

処分行政指導、届出の定義行政手続法2条参照。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/308472

註4 Q1 行政手続法とはどんな法律ですか?

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/tetsuzukihou/faq.html#Q01

記事への反応 -
  • いやそれ違法だから。 行政にできるのは 役人「これはこのままだと申請通らないっすね~無駄な申請になっちゃいますよ」 相手「なら今回は止めときますね」 までであって、 相手...

    • 自称元官僚 間違った法令知識に基づき壺擁護するの巻 1 統一教会の名称変更不受理は行政手続法に反しない  行政手続法は、1993年に制定された当初、その対象を(1)処分(申請に対す...

      • はい嘘 前川自身がYouTubeで、不受理が行手法違反になり得ることを認めてる(8/5) 都合の良いとこだけ抜いちゃダメだよ

      • 与野党有利不利問わずファクトチェックをやってる楊井弁護士が解説してるけど元増田に分がありそう。 少なくとも申請の不受理は不味いって共通認識はありそうだね。 https://twitter.com...

      • 少し知識はあるみたいだけど、党派性のせいで致命的に間違ってる。元増田が正しい。 宗教法人法26条1項の規則の変更の認証は行政手続法の「申請」に対する「処分」に該当する。文...

        • 行政法学において、許可、認可などは明確に別のものとして定義されてるけど、実際の法律では許可、認許、特許、免許、承認、認証などなどの語が出てきて、厳密に使い分けられては...

          • 一番肝となる「宗教法人法26条1項の認証は行手法上の処分に該当する」には反論ないの? そこを反論しない限り元増田が正しいよ。 そして、少なくとも元増田と長野県庁は同じ見解だね...

            • 横からだけど別に行政でなく司法でも普通に処分。 でも挑発はよくない 規則変更認証処分取消請求控訴事件- 東京高判平成17年04月28日)

              • 増田が見つけた判決の事案は、単なる宗教法人の名称変更ではなくて、もともとあった被包括関係の廃止=別の宗教団体として独立するという内容を含んでいるね 個別に実質判断する説...

            • ふつうに認証という文言にかかわらず、中身を個別に判断するって書いてると思うが 単に国語力がないだけでは

              • 個別にみたところ、文科省も長野県庁も「処分」って認識してるんだよ。 宗教法人法26条1項の認証は行手法の適用対象じゃないなんてのは通用しないってこと。

                • 一応規範を立ててそれに丁寧に当てはめて見せた増田に対して、文科(ソースが出てないみたいだが)も県もそう言ってるの権威主義論証では、増田に分がある感じ(もっとも行手法の...

                  • いや、ここでいう認証が行政手続法上の処分に該当するなんてのは行政法勉強したことあったら当たり前の話なんだよ。 それに噛みつく方がどうかしてる。 講学上と行政手続法上と実...

                    • 行政手続法が限定的って話は立法時の経緯からも正しいし学説上も通説だけどね つうか審議会の親玉も学説の親玉も塩野教授で、その塩野がそう言ってるんだから当たり前

    • 取りあえず前川元次官って反自民の側の無能な味方だよね

    • 役所が生活保護の水際対策するから共産党議員つれてきました 役所が名称申請の申請無視するから自民党議員つれてきました 構図は一緒

    • 前川黙らせた方が追及しやすいとおもうんだがなぁ

    • 聖人に列せられた前川さんの言うことは常に正しいぞ 共産党が言ってるから間違いない

    • 前川さんが所管課長のときは合法的に対応して、相手が自主的に取り下げた   ← 結局こうだったと言いたいんじゃないの? 公に明言するからには、そうとくらいしか考えられな...

      • そのあと、前川さんは「(文科省は)申請を出させない方針だった」と言ってる。これは完全に違法

    • むしろ前川課長(当時)は、統一教会が公共の福祉に反しないと積極的に結論付けた当事者だぞ。 とすれば、前川の後輩たちは名称変更だろうがなんだろうが、新たな証拠でも出てこな...

      • 自分に都合よく語ってるようでどんどん墓穴掘ってるよな 出会いバー前川のイメージ通りの行動してくれてるよな

      • この時に前川が「統一は反社!」って判断しておけば終わった話やん 大臣が了承しなかったとしても、 「起案したけど○○大臣が通してくんなかったんだよね~」 って言えた。 それ...

        • 文部科学省の下っ端でしかない文化庁にはキツすぎるな。 本省の出世頭である前川の決定を覆せるやつなんて文化庁に存在するわけない。 偉そうに語ってる前川こそが統一教会を25年...

      • いやもう加計学園問題の時と同様、隙の多い証言を批判側が無防備に取り上げるから追及が緩むという…

    • だとしても、クリンチを狙っているという推測は一応は成り立つと思うぞ。行政官としての自分の対応がまずかったとしても、それを告白することによって誰かに政治的な打撃を与える...

    • 名称変更を認めないルールを変更するなら大臣の決裁を取ってるはずだ! →なら1997年にも名称変更を認めない決済をしているはずだが 前川喜平が1年間課長だったうちの10カ月は清和会...

    • 文句あるなら統一教会が裁判に訴えて不当だと訴えろって話だろ? しかし、数千万円や億を騙してるような詐欺組織が、名前をごまかして逃げるためと疑って拒否したのだってことが裁...

      • 統一教会が公共の福祉に反しないって決めたのは前川だぞ

        • 役人は先例主義だし、政治家の意向があるからできるのが統一教会に対して名称変更拒否が精一杯だってことだろ。 まあ山上義士のお陰でカルト宗教に対して暴風が吹いているから今か...

          • つまり、前川の決断(統一教会は公共の福祉に反しない)が先例になっちまったんだよ 名称変更申請を受け付けないってのは先例にはならんからね。違法なのが明白だから。

            • 今からでも統一教会の宗教法人格を剥奪するべきだな。 名称変更拒否は前川以前から行われていた。

              • 前川は自分が拒否することを決めたように語ってたけどソースは?

          • 普通の刑事法体系で摘発できる でも被害届が出てても摘発されなくなった 統一協会関連の法曹がけっこういるからじゃないか 20世紀初頭の日本には正教の統一教会があって、YMCAと対立...

      • この辺面白いよな 役人の独断を喝采してみたり、他方ジャップランドと言ってみたり 自身を律する正しさを法や立憲主義におかないと、人民裁判をやっちまう

        • もっとも、政治家に取り込んだり、法整備をさせないことで悪事をなすような連中もいるから、法が正しいか?政治家の関わり方は正しいかは常に批判され見直していくべきだな。

          • それは別にカルト関係なく、いろんな思想団体についても同様で 「正しいとボクが思う」で法を破っていい話はない アンパンチが許されるのは創作の中だけで 子供だろうが私刑は叱ら...

            • 法を守らずに名称変更拒否をしてはいけない/宗教法人格剥奪をしてはならないってのなら統一教会が訴えろよ。 宗教の名を騙った詐欺集団だから裁判でフルボッコされるからしなかっ...

          • 法の正しさをチェックして改善していくために国会があるんだけど スキャンダルばっか追いかけてて役に立ってないよね

    • そもそもこれまでの批判的意見って、 「『何度も何度も』文部省の担当官が却下してきたが、2015年になって『突然』名称変更がなされた」って話だったけど、 実際は97年に前川が申請を...

      • 文句あるなら統一教会が裁判に訴えて不当だと訴えろって話だろ? 97年はオウム真理教事件に近かったからたまたまそのときに前川が宗務課長にいて、拒否したって話だった。公安が統...

        • 何が言いたいのかわからないが、統一が不満なら裁判なんかの前に97年に申請を出せばよかっただけ 申請の拒否などできない 申請が出たら認めなきゃいけないことは前川も認めている

    • 名称変更が2015年ってタイミングが一番のカギだったっぽい >改正で法律の要件に適合しない行政指導を受けたと思う場合に中止等を求めることができま す。 ということで前川が決めた...

      • 統一教会は詐欺的な消費者トラブルを繰り返しており、同一性を担保するためと戦ったらいいだけじゃないの。 そもそも早く宗教法人格取り消せとは思うが。消費者トラブルを繰り返し...

        • 一度寄付しておいて後から返せって訴えたら宗教法人潰せるのか 怖い国だな

          • そもそも詐欺的な行動で献金を集めるのが悪い。宗教の名を語れば騙しても良いというのは許してはならず法律で防ぐもの。

            • 天国の実在を証明できないカトリックと極楽の実在を証明できない浄土真宗は詐欺団体ってことになるな

              • 浄土真宗やキリスト教の天国は現世の良いこと、悪いことで行ける場所が決まるというものであるから良いことをして悪いことをするなという考えで言ってる。金を出さないと天国に行...

        • そもそも早く宗教法人格取り消せとは思うが。 その方針で戦うように方針変更するにしても、それをしないという判断をした前川を祭り上げるのは悪手じゃね?ってのが元増田の主張...

          • 政治家を抱き込んで工作をしようという悪逆団体相手に、ただの一課長がそこまでできるわけ無いだろ。 でも政治家を抱き込んで工作が成功している状況に至るという状況にいたっては...

            • でも課長程度が工作して申請を止める脱法作戦はできるんですね。

              • できる範囲でやっただけでしょ。そして統一教会のやり口から見れば正しい。2015年の文部科学大臣が台無しにしたが。

                • でも前川はそういう判断をするのに大臣に話を通すって言ってるんだよね 2015年の下村に適用される話は前川にも適用される 水際作戦する判断は大臣を通してないとおかしい

                  • いずれにしろ、「法人格取り消しが正義だったんだ」で戦うつもりなら、 どう好意的に見ても「前川は悪の自民党の手先」でしかないわけで、一緒に叩く対象だよな どう好意的に解釈し...

                    • 統一教会から矛先を変えようと必死だな。 悪の根源は統一教会やカルト宗教と、それらをかばう奴ら以外の何物でもないだろう。

                      • だからこそ統一教会に「違法性無し」とお墨付きを与えた前川を批判するべきだって言ってるのになんで統一教会擁護になるんやら

                      • 前川共犯説は統一教会擁護というより、自民党への批判反らしやね 結果論としては、その時統一教会を解散させておけばってのはあるけど 当時の議論としては、無差別殺人テロを起こし...

            • 役所の課長を甘くみすぎ しかも前川自身が「統一教会は公共の福祉に反しない」と判断した主犯だぞ

              • 役所の課長なんざ政治家の前にはどうにもならんし、統一教会は政治家を抱き込みにいっている。

                • で、それと前川が「統一教会は公共の福祉に反しない」と判断したことに何か関係あるの?

        • 実態とし組織的犯罪してるにしても、法的には組織的犯罪を繰り返してるとは認定されてないからなぁ。 厳しいと思うぜ

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