2020-06-20

お前らはただ働くだけで友人を救っている

敷布団をまるごと洗濯しようとしたことはあるか?

俺は今夜、クソを漏らした。

いから聞いてくれ。

あんた達はただ普通に働いて、週末に仲のいい少人数の友人と気軽に飲むって生活をしているだけで「いつまでこんな生活が続くんだ」とか悩んでるかもしれない。

でも、それだけでお前らは友人を救っているんだ。確実に。

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寝ている時にクソを漏らすと、大抵は下着台無しになる。パジャマだってそうだ。「着る派」かそうでないかはこの際問題じゃない。

普通なら、その下にあるのは布団だ。正確に言えば布団のシーツがあって、その中に布団がある。

やってみればわかることだが、布ってのは液体をけっこう通してしまう。

から、盛大にクソを漏らせば、下着と、シーツと、そして布団が大変なことになるんだ。人によってはパジャマもな。

後で理由は話すけど、俺はシーツの上に折ったバスタオルを敷いている。

こうしておくと、漏れた量によってはここで汚れが止まってくれることがある。

飲みすぎた日の深夜に、トイレや海の夢を見ていて、小便を漏らす寸前か微妙に漏らしたところで目を覚ました経験はたぶん誰でもあるだろう?

本当にちょっとした液体だけなら、布もけっこうがんばってくれるんだ。バスタオルってのは保険みたいなものなんだよ。

おいおいちょっと待ってくれ、質問は後だ。先にいま考えてる疑問に答えておいてやろう。

「クソってのは液体じゃないだろ?」って思った奴もいるよな。やっぱり色々理由があるんだけど、寝てる時に漏れるクソなんてのは大概は液体なんだ。

もしくは両方かもな。なんにしても、ひどい汚れをまき散らす癖に、水みたいな無粘度の液体がケツから出ていっちまう。だから布団までやられるんだよ。

布団を洗濯したくて、下着シーツ洗濯機にまず突っ込んだ。

風呂場で体を洗ったら、今度は布団を三つ折りにして丸めて紐で縛るんだ。そうすればコインランドリーの大きな洗濯機には入れられる。

俺の布団は安いポリエステル100パーセントのヤツだから、あまり心配せずに洗えるんだ。どうせまた洗うことになるかもしれないしな。

クソまみれの布団を丸めて縛っていたら、友達からLINEが来た。

学生時代から腐れ縁の、俺を入れて三人組の奴等だ。お互い近くはない微妙位置にいるけど、月に1回くらいは飲んでる。

今日は俺以外の二人で久々に店で飲んでいたらしい。コロナも落ち着いてきたしって…… ちょっと危機感足らないよな? 他愛もない会話が続いていたよ。

30代で、夜中にクソを漏らして、その後始末を自分でやって、コインランドリーどこだったっけとか考えたり、

「布団 コインランドリー 洗濯」とかググったり、紐で縛ったり、そうして泣きながらLINEに返事をしてたんだ。

まさか飲みに参加してない男が、手前のクソの後始末で泣いてるなんて夢にも思っちゃいないだろうが、そういうことだってある。


話は変わるけど、お前らの近しい友人に慢性的で治らない病気を持ってるとか、そういう人がもしいたら悩むかもしれない。

なんて声かけたらいいか考えちゃうし、簡単に慰めていいものかもわからないよな。

勇気を持ってもらおうと考えてみるほど、相手にとっては逆効果なんじゃないかって思えてくるもんだ。

俺は腹に関する難病ってのを抱えていて、これは国に指定されてる。

もう10年以上付き合ってるから、今更その大変さとか、どうやって対処してるとか、ここでそんなのを語るつもりはないんだ。

ただ、俺は友人たちの…… つまり "普通に毎日しっかりと働いているお前ら" のお陰で救われてるってことを伝えたいんだ。

もしそういうものを抱えてる友人がいたら、これまで通り付き合ってやって欲しい。それだけで救われるんだ。

そして…… もしかしたらお前らは「何の力にもなれてない」と思ってるかもしれないが、今日まで「これまで通り付き合ってきた」期間は、

すべてがその友人を "救い続けて" きた期間だったんだと、誇りに思って欲しいんだ。罪悪感なんてものはクソッたれなんだよ。 ああ、クソッたれは俺の方だったな。

俺は夏に大きな手術が控えてるんだけど、いつもの三人組の俺の友達今日の飲みLINEの中で「じゃあ退院したら行こうぜ」とひとこと言ってくれたんだ。

コインランドリーに向かって深夜の0時近く、クソまみれの丸めた布団を左手に、友達とのLINE右手に持って、それを見て道路上で泣いていたことだけは彼らには秘密だ。

もう休職も長く、実家にも戻ることになった。復職の予定は一応あるけど、この歳で親に心配かけて世話になって、働きもできず、うんこ製造機自分客観的になんて見たくない。

ああ…… 製造機ならまだマシか。管理できてるもんな。俺のケツは管理すらできちゃあいない。「うんこ製造機以下」の存在だ。やっぱりクソッたれだ。

腹を壊すことを恐れてまともなメシも食えなければ、ちょっといい布団を買うのだって躊躇する。俺は怖くて彼女を作ろうとすら思えない。ずっといない。そういう迷惑をかけることが簡単想像できるからな。

それでも、友達が俺を待ってくれていると思えるだけで救われるんだ。もうすこしがんばってみよう、時間は掛かっても「社会に戻る」努力をしてみようってな。

から、お前らは普通に健康で、少しずつでも前進しながら「ただ働く」ことを続けてくれさえすればいいんだ。今夜の華の金曜日はお前ら、自分にご褒美をくれてやったか

ブラックで一度つぶれちまった友達の一人は最近、ようやくまともな現場にいけることが決まった。

三人組で一番結婚できそうにねえよなとか言ってたヤツが、一昨年結婚できた。

俺は、自分の事のように嬉しいんだ。ちょっとしたことであっても。わかるか?どれだけそれが俺を勇気づけているか

全力で励ましてくれたっていい、気を使って放っておいてくれたっていい、でもお前らが自分人生を委縮させることだけはしないでくれ。

いつまでも健康で、普通生活を力強く続けていてくれ。


──伝えたいことはここまで。この先は蛇足だ。読まなくていい。どうせやっぱりクソッたれな文章だしな。

ますというのは関係性の問題なんだよ。「がんばれ」という言葉が実はリスキーだなんていう話があるよな?

これはもちろん俺の感覚であって、一般化するつもりはない。でも、俺は「がんばれ」と三人組の友人に言われても全く嫌な気はしない。

了解」が「承知」になっちまったハイパーマナー講師案件みたいな話じゃねえかと思うことだってある。

でも専門家がきちんと研究した結果の "がんばれリスキー" ということなら、従っておこうかなと思わないでもない。

友人という関係性なら、お前らが「ただ働き続ける」だけで、それ自体が誰かの励ましになるんだ。絶対にだ。

誰かががんばれと言ってきた時に「こいつは最近の "励まし情報収集" を怠った意識の低い奴だな?」なんて判定をいちいちしようと思うか?

もちろん、精神的に問題を抱えた人にとってはマジメに苦しい言葉なのかもしれない、だから軽視していいとは思わない。

知識としてそうしたことが広がるのはいいことだ。だがどちらにしても、励ますというのは関係性を外してはみられないんだ。

親友・戦友とも言うべき人間は、もう作ることはできないんだ。そういう風に、サンテグジュペリも言ってた。

そんな希少価値のあるものを贅沢に求めることなんでできないだろ?希少だからダイヤモンド価値が高いんだもんな。

から俺は、関係性があまりない人からの励ましこそ想像力を働かせて受け止めたいと思う。そっちの方が普通からだ。そして社会の大半は普通物質でできてる。コンクリートとか。

「がんばれなんて薄っぺらい」とか言うつもりは毛頭ない。そもそも難病患者気持ちなんて、同じ病気患者同士だって理解しがたいんだからな。これはマジだぜ。

それがヘタクソだったとしても、仮にマジで軽いものだったとしても、「この励ましは間違ってるかもしれない」っていう恐怖との格闘の上で、俺に向かって出してくれたものだと俺は受け止めたい。

人を励まそうっていう難易度SSSクラスの発意を、さも答えがあるかのようにひとくくりで決めつけちまおうなんて方がおこがましい。だけど学問研究は大切だ。

から、友人を心配する、友人を励ますっていうことを恐れないでくれ。時にはせっかくの親切を反故にされるような状況になっちまうかもしれないが、卑屈にならないでほしい。最強難易度なんだからな。

いつか恩返しをしたい。普通の飲みの席で一緒に笑い合うという姿で。

俺はそう思えるから、クソまみれの布団を道路上で持ちながら泣いちまっても、またがんばろうと思える。

聞いてくれてありがとう。次はバスタオルを3重にしておこうと思う。

布団の乾燥が終わるころだから、これでおしまいにするよ。じゃあな。

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