パワハラなんて言葉が一般的じゃなかった時代もそうだし、現在でも現場は怒号が飛び交ってるよ。
ひとつは土方が働くような現場は、大卒で日本語が通じて、1を聴いたら10を知るような人間が少ないということだ。昨日、アレをするなと注意しても、翌日になったら忘れている人もいる。昨日とは違う人間がくることもある。新規入場者に対する教育は、必ず行うことになっているが、教育を行う方の立場になれば、もう還暦も近いおじさんに毎日毎日、同じことを言い聞かせてるので、自然と言葉が荒くなる。
言い聞かせることも、何も難しいことじゃない。挨拶をしろ。安全確認をしろ。手をつける前に監督に一声かけろ。問題や事故が起こったら、隠さず申し出ろ。ゴミ捨てるな。タバコは決められた場所以外で吸うな。デカい声で私語をするなetc…こんなのばかりだよ。言う方も言われる方も嫌気がさしても当然じゃないかな。
ふたつ目は、やはり危険作業が多いからだ。いくらヘルメットや安全帯をつけていても、頭の上を鉄の塊が通過したり、そこかしこに鉄筋が飛び出ていたりするのが現場だ。一般の人が安全に過ごす前の段階で働いているんだ。ヒヤッとしたら、そりゃ怒鳴りたくもなる。安全に安全を重ねているつもりなのに、この前渋谷の再開発工事で鉄骨落としていたでしょ。絶対安全なんてないんだよ。
それに土木や建築は、工場の中で生産なんかしていない。現地で組み立ててるんだ。雨が降ればずぶ濡れになるし、鉄板や足場は滑る。せっかく掘った穴が崩れる。地面よりしたの区画は排水が追いつかなければ泥水のプールだ。雨で見通しが悪くなると、安全確認をしている人さえ一瞬見えなくなる。突風がいつ、どの方向から吹くのか予想できる人なんていないんだ。そんな現場でできる安全対策の中に、大声出して確認するのが重要になるのはわかるでしょ
それに大規模な事故が起これば現場は止まる。止まってもよその現場がすぐにあればいいが、そんなに都合良くはいかない。死者が出れば、警察が現場検証を行うまで何もできない。でも警察に現場の状態を聞くために呼び出されたら行くしかない。その間は金も出ないのに拘束されているようなものだ。一番避けたい状況でもある。
みっつめは、末端の作業員は今でも日当で働いているからだ。今日作業がなければ給料はない。だから事故や怪我で現場が止まれば、ご飯が食べられない。自然と危ない予感がすると声を荒げるようになる。
組み立て作業が多いということは、段取りが重要になる。自分が今日行う予定だった作業の、前の段階の作業が終わってなければ、作業ができない。つまりお金がもらえない。だから前の段階の作業が遅れていてら、そいつにも、現場監督にも怒鳴る。俺が稼ぐ予定だった時間を無にしやがって!てね。自分の作業を終わらせて、さっさと帰りたいのに、物事には順番があるから進まない。そしたらチンタラしているヤツに怒号が飛ぶ。理不尽だけど当たり前だ。
理由はもっとあるし、複雑だけど、だいたいこういうことが主な原因だ。怒号が飛ぶ現場は、パワハラばかりだと思うかもしれないし、自分も半分ぐらいはそうだと思っている。でも命懸けの仕事ってそういうものがつきものだから、もしこれを読んでいる人間で、そういう環境で仕事をしたくないと思っているなら、家でパソコンひとつで、人にも合わなくて食べていける職業を選んだらいいと思うよ。個人トレーダーぐらいしか思いつかないけどね。
個人トレーダーってギャンブラーやんパチプロやん😩