2021-08-11

日本のECMOは足りるのか (あるいはCOVID19死亡とECMO)

ECMO治療中のCOVID患者数が全国で84名とのことで、これからも増えそうだ。

医療崩壊するのか?という疑問は「医療崩壊」の定義あいまいで、群盲象を撫でるような議論になりやすい。

ちょっと考えてみたが、医療崩壊は I.医療サイドの問題 と II.患者サイド(医療を受ける側)の問題がありそうだ。

自粛しないのが悪い、という医療を受ける側への文句はひとまず措いて、医療供給力問題ちょっと考えてみようと思った。


日本にECMOの装置は何台あって何台使えるのか

 1400台強 https://www.asahi.com/articles/ASN4K6D83N4KUPQJ00M.html

ただしhttps://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/04/ecmoecmoecmonetecmo414-ecmo-ecmoecmo2-ecmo-ecmonet400-400ecmo-ecmoecmo-ecmo-ecmo30ecmo60-ecmo_1.php

 装置が多くても使える人は少ない ”日本では、機械のほうが先にばらまかれてしまった。どの病院でもECMOを購入し、誰でもいじることができる状態になった。”

 ”これまで日本ではECMOを導入する症例は、恐らく1つの病院で年間に2例や3例しかなかった。”

 というわけで同記事(0204月18日)の挙げられた数字①400台は1400台よりはるかに少ないが、実働可能上限としてそれなりに妥当と考えられる。(むしろもっと少ない可能性もある)


・COVIDに使用可能な人工呼吸器は何台あって何件使用可能なのか

https://crisis.ecmonet.jp/ これによると "受け入れ可能件数” 1894で、多少増減あるもの丸めて(期待を込めて)②2000件とする。


・人工呼吸器使用からECMO使用に移行する割合はどのくらいか

ttps://crisis.ecmonet.jp/ これによると第一23.2%、第二波11.1%、第三波8.3%、第四波7.6%

"ECMO症例が減少した理由は薬物治療、人工呼吸治療改善してECMOに至る方が少なくなったためと推測しております。また患者数の増加による負担増でECMO移行を回避している施設がある可能性も否定できません。"

第五波の予想を、おおざっぱに③10%とする



・ECMO、人工呼吸器使用者の救命率はどのくらいか

ttps://crisis.ecmonet.jp/ これによるとECMOは50-70% 人工呼吸は70-80%程度のようだ。ただし”人工呼吸だけの治療の方で亡くなられた方々については、多くはECMOに移行しても救命は困難という判断がなされECMOへの移行が断念されたと考えます(注A)。またECMOに移行した方々の救命率が徐々に下がってきております。これはより重症の方がECMOの適応になったためかと推測しております(注B)。”

 注A:ECMOやっても無理だろう、と思われるくらい重症なケースは最初からECMOに行かない。これはECMOの死亡率を下げる(救命率を上げる)方向に働く

 注B:もう少し様子を見よう、あるいは、今日はECMOの機器が使えないからと言って重症化してからECMOに行く(先手を打ってECMOにまわすことはしない)となるとECMOの救命率は下がるため、数字はどちらの方向にも動き得るので不安定であることが予想される。

 

・ECMOに移行する理由

 a.人工呼吸器装着が必要レベル重症度に加え b.ECMOを使用しない限り救命可能性がとても低い  c.逆にECMOを使用しても助からない可能性が高いケース(高齢者など)は除外       ttps://crisis.ecmonet.jp/では明らかに高齢者のECMO導入は減っている(原因は不明重症化率の低下も一因と言われているようだ)

・途中のまとめ

 人工呼吸器装着患者必要者の現時点での上限②2000名に達したとき、ECMOに移行する患者は③10%だとすると200名となる。これはECMO台数1400、使用可能数①400に比しても極端に多い数字ではない。

 したがって、ECMOの運用物理的に飽和して、ECMOが装着できれば助かったであろう感染者がバタバタ死んでいくという状況に限定していえば、実現する可能性は低そうだ。

 (人工呼吸器の方が先に飽和するという意味。③移行率が極端に高い場合のみ、ECMOの方が先に飽和する)

 ただし、②2000名に達したとき、人手がECMOにどれだけ割けるか、使用可能数上限①は150や200でないのか?という疑問は残る。



推計続き

上記のように人工呼吸器装着患者重症者数が増えすぎるとECMOにまわすマンパワーを他に回す傾向が考えられるとのことだ。

 仮にECMOに必要な人手を人工呼吸器の5倍⑤と仮定する。

 重症者22名 人工呼吸20件 要ECMO2件とする(③より)合計30単位マンパワー必要となり、それぞれ救命率80%救命率50%とすると17救命される。(救命率77%)

 重症33名 人工呼吸30件 要ECMO3件とすると必要マンパワーは 合計45単位となる。(1.5倍) 

       ECMOを全員断念すると3名は死亡し、残り30名の救命率が同じと仮定⑥すると同じ30単位マンパワー24名が救命される。 (救命率72%)

 今度はECMOに必要な人手を10倍⑤’とする

 重症者22名 人工呼吸20件 要ECMO2件とする合計40単位マンパワー必要となり、17救命される。(救命率77%)

 重症33名 人工呼吸30件 要ECMO3件とすると必要マンパワーは 合計60単位となる。(2倍) 

       ECMOを1名断念し2名に実施すると同じ40単位マンパワー24+1名で25名(救命率75%)

※このマンパワー単位職種考慮していない。実際にマンパワーを増やす必要、あるいは上限で飽和する事態は臨床工学士、看護師医師のうち、最も融通がきかない部分で決まってくる。 

⑥の仮定上下どちらにも動きそう。



   


続く(続かない)

突然変異治療進歩新薬ワクチンの影響など、年齢構成重症化率は今後変わってくると考えられるがそういったパラメータ考慮していない。

問題は人工呼吸器使用の可否の影響が大きそう

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