悲しいことに、クリスマスに特に予定がなかったため一人で映画を観ることにしました。
すると、色々な意味で公開前から話題になっている作品である「えんとつ町のプペル」が公開初日とのことでした。
幸い、原作(といってよいのでしょうか?)の絵本も発売して少し経った頃に購入して読んだことがあり、ざっくりと内容も知っていたのでこれを選ぶことに。
そこまで映画をたくさん観るほうではない一般人の感想ですので、生暖かい目で読んでいただけましたら幸いです。
まず最初に、映像や音楽の美しさと、声優をしていらっしゃる方の演技の違和感のなさは素晴らしいです。
ハロウィンという非日常的なキラキラとした雰囲気から一転、煙突から上がる煙とそれによって画面全体が暗くなり退廃的な日常がやってくる(戻ってくる)。そして最後にまたキラキラとした画面で幕を閉じるのですが、どちらもとても丁寧に描写されており、これだけでも観る価値は十分すぎるくらいです。
音楽も絵本が元になっているからこその分かりやすく可愛らしい曲が多く、聴いていて明るい気分になりました。エンディング曲も作者の方がほとんど手がけていらっしゃったんですかね? 作品専用曲というのはやはりワクワクしますね。
声優をしていらっしゃる方は、今回はほとんど本職の方ではないと記憶しているのですが、近頃は本当に皆さんお上手で何の違和感もなかったです。
多少棒読みなところはあった気もしますが、全体的に頭身が低めで可愛らしい絵柄なのでその拙さも可愛らしさになっていたのかもしれません 笑
※ここからマイナス評価です。また、ストーリーに関するもののため、ネタバレが多くなります
逆に、ストーリーと演出(特に序盤)が冗長で退屈で全体的に説明しすぎだと思います。
特にストーリーに関しては、絵本は良くも悪くもまとまっていた物語だったにも関わらず、色々と設定や描写を盛った結果とっ散らかってしまい、良かった部分すらなくなった印象を受けました。
「夢を語ることを笑われる世界に終止符を」といったようなことを総監督であり作者の方が仰っていたらしいのですが、「星を見たい」という夢をバラされたことでルビッチがプペルを突き放し、そのあとにプペルが父であることが判明してしまうため、ルビッチが自ら行動したというよりは「プペル(父)の信念に動かされた」印象になってしまいます。
父の思いを叶えるだけの機構として存在しているだけで、彼自身が自ら動いて成長したというには少々疑問が残ります。
絵本では最後にプペルは父だと明確に出されてはおらず、そうかもしれないという匂わせで終わっていたはずです。ルビッチが気付いたのかわからない、でも少なくとも彼は父のブレスレットではなく、プペルという友達と一緒にいることを選ぶんですよね。
そこが好きだったので、母が喘息だったり父が殺されたりとベタな「悲劇的な主人公」に改変されたルビッチというキャラクターが可哀想でした。
恐らく親子の絆のようなものを作りたかったのでしょうが、同時に公開された「ポケットモンスター ココ」が親子の絆と成長の物語として素晴らしかったことは不運だったかもしれません。
閑話休題。
成長という意味では、昔星を見たことがあるのに周りに流されて「そんなものはない」と自分に言い聞かせていた少年、アントニオのほうにドラマが詰まっていましたね。
こちらを主人公に据えたほうが「信じ抜くこと、そして諦めてしまってもまた上を向くことの難しさ」をうまく表現できたのではないかと思うほどです。
絵本では描写が限られるためここまで気になりはしなかった(それでも絵本としては情報量が多すぎ、想像の余地がほとんどない作品ではあった)のですが、映画という更に情報量を詰められる媒体になった結果、全体的に「くどい」作品になってしまったな……というのが正直なところです。
観る側に寄り添っておらずただ主張を続けられ、見終わった後には感動より疲れを先に感じてしまいました。
絶賛されるほどではありませんが、ストーリー以外に引っかかるところはなく良作、というのが私の中の評価になります。
長々と失礼いたしました。
お読みいただきありがとうございます。