大学4年。4月20日。就活解禁から一ヵ月半ほど経った。平成ももう数えるほどで終わり、内定が貰えている人も少なくない。そんな私もありがたいことに一つの会社から頂くことができた。
というのは嘘でまだ説明会に行きつつ、いくつか選考に進んでいる程度である。周りを伺いつつ、ネットや先輩から情報を集めつつ何とか普通に就活をしている。
特に第一志望も無いので、条件が合いそうなところや説明会で良さそうなところを受けて、いわゆるESを悩んでは書きという生活である。
私が意識が低いのか、毎日就活です、スーツ着てます、という感じもなく週2~3ほどスーツを着つつ大学に行き、空いた時間にはバイトもするし、友達とも遊ぶ。思っている以上に時間にゆとりがあり、追い詰められてもいない。ただ内定が早くほしいことに変わりはない。こんな風に就活生をしているわけだが、就活自体全く面白くない。まず、そもそも企業に興味がない。
元々、読書とりわけ文学が好きで文学部に入った。というか、小さいころから読書、国文学!だったのでその先のことを考えていない甘ったれた人間だったのだ。
かといって、研究者や学者になるほどの金銭的な余裕も有り余る熱意もない。だから、就職せねばならない。しかし、まるで企業に興味がわかない。そうすると説明会は地獄に等しく、内容も右から左である。
それではあまりにも行く意味がないので競合他社を事前に調べ、比較して特徴をメモし、企業の求める人物像を聞きながら自分のアピールできそうなところを考える。必死に聞く努力をするのだが、乾いたスポンジであるはずなのに表面に強力な防水加工をしているが如く、頭に入らない。説明会自体は大体一時間ぐらいのものが多いが、大学の一コマよりも長く感じる。
事業内容よりも、まだ社員のおすすめの本を教えてもらったほうが何倍か頭に入る。
とりわけ、ああ出たなと頭を抱えてしまいたくなるのが映像である。しかも、社員の一日を。働いている姿をイメージしやすいようにとの配慮に喜ぶべきなのだろう。
私からすると苦痛以外何物でもない。やり手の社員で推薦されたのか、それとも出演したくて立候補なのかは知らないが、とりあえず社員の様子がいい感じのBGMとともに少しのストーリー性を伴って流される。いわゆる、アナザースカイや情熱大陸風にである。案件や各々に行われいるインタビューは真実かもしれないがよくわからないストーリー仕立ての映像はやめていただきい。反応に困る。
私が求めるのは、社内にビデオを設置してその映像を流すというものだ。そちらのほうがよっぽど雰囲気がわかる。
あと、まだ嫌なものがある。仕事にやりがいを持てる会社!ここの会社はひとがいい!楽しく働く大人になろう!などの主観的な内容を最後辺りに話されることである。
そもそも働きたくないし、やりがいよりストレスなく働きたいし、いい人かどうかは私が決める。
そして、「電車で疲れた顔の大人になるな」これが最嫌悪賞である。「電車で疲れた顔の人も出社したら元気に」なら分かる。そもそも、電車でニコニコルンルンしている人は老若男女問わず基本見ない。誰かと一緒に乗っている人であれば、笑って話している。だが、一人で乗っている人はスマホかイヤホン、たまに読書くらいである。
大学が始まってから、辺りを見回してみたが一人で楽しそうな人など見つけられなかった。うまいこと言ってやった感が鼻につくし、電車に乗っているときの顔を鏡で見せてやりたい。電車で疲れた顔という枕詞にかかるのが大人じゃないことに気が付きますように。そして、もう説明会で聞くことが無くなる言葉でありますように。
これもまた「活気=善」という思想に基づくのだろう。