2022-06-18

漫画実写化」とかいエンタメ業界の歪さを凝縮した何か

漫画実写化作品というのは、いつの時代しょっちゅう作られている。

その発表を聞いて、原作ファンはどう思うだろうか。「好きな漫画実写化される!やったー!」となる人はどれだけいるのだろう。

大抵の人は、「うわー、マジかよ」と内心げんなりするんじゃなかろうか。少なくとも、自分リアルインターネットで多く聞くのはそういう反応である

なぜそんな反応をされるのかと言えば、実写化作品の多くが原作を忠実に再現したものではなく、原作の設定や要素を無視し、大幅な改変などを行ったものからだろう。

原作ビジュアルイメージとかけ離れた流行りの俳優ジャニーズの起用、ストーリーの変更や短縮、まるで本編と合わない主題歌・・・

こうしたステレオタイプ実写化作品は「原作レイプ」などと揶揄されている。

ではなぜ、こうも世間から歓迎されていないにも関わらず実写化は何度も繰り返されるのか。その理由は至ってシンプル、「儲かるから」。それだけである

ただし、儲かるのは決して原作者ではない。基本的原作と全く無関係人間たちである

からこそ改めて実写化は滅びるべきだと俺は考える。

まず、実写化が具体的にどれだけ儲かっているのかという点だが、2017年のあるニュース番組で出されたフリップによると同年に公開された邦画は合計581本。

そのうち漫画実写化が32本、その他が549本である。そしてそれらの内、興行収入10億円を超えたのは実写化が13本、その他が25本である。そして10億円超えを果たした13本の実写化は同年の邦画興行収入全体の40%を占めているのに対し、その他の25本は全体の4%でしかない。

実写化は爆死している作品が多いイメージだが、それでもオリジナル邦画よりははるかに儲かっている現実がある。

では、このうち原作者の利益はどれくらいなのか。人気漫画銀魂』の作者・空知英秋氏によると「どれだけ観客が入ろうと、どれだけ興収をあげようと」原作者には最初原作使用料が支払われるのみだという。この金額について、空知氏は「全体の興収からいえばハナクソみたいな額」と皮肉っている。

実際、これは事実である。例えば映画テルマエ・ロマエ』(12年)は興行収入58億円を記録しているが、原作者に支払われた使用料わず100万円である。『海猿』(04年)も興行収入70億円を記録しているが、作者への使用料は250万円のみである。これらはすべて映画の話だが、恐らくドラマ場合契約形態は同様であろう。

まり実写化作品がどれだけ大きな利益を生み出そうが、原作者の収入はほんの僅かばかりなのだ作品の生みの親に支払われる報酬が、下手をすれば出演俳優のギャラよりも安いのである

ここまでで、実写化原作者にもたらすメリットは非常に少ないことが分かった。では、ファンにとってはどうなのかという話だが、最初に書いた通り多くの原作ファン実写化を決して快くは思っていない。

そりゃそうだ。だって臭い主人公がただの爽やかイケメンになってたり、大事なシーンがカットされてたり、その代わりに原作にはない女性キャラとの恋愛展開が謎に追加されていたり…。

原作に対する思い入れが強ければ強いほど、原作侮辱されているようにしか思えないだろう。不快な思いをしないよう実写化作品に関する情報シャットアウトしようにも、テレビネットバンバン広告が打たれ記者会見や本編の映像が流れまくるため嫌でも被弾する。そしてそのたびにやるせない気持ちにさせられる。

そんなわけで原作ファンにもやっぱり実写化メリットは無い。

では、誰が実写化を望んでいるのかといえば、配給会社広告代理店、出演者所属する芸能事務所など、原作に関わっていない連中だ。

あとはせいぜい出演俳優ファンくらいか

この「出演俳優ファン」たちが原作コミックを買うことで原作者の利益になるのではないか?という指摘もあるが、それはどうだろうか。例えば、『金田一少年の事件簿』はジャニーズ主演でドラマ化されているが、原作金田一イケメンではなく長髪に太眉で中肉中背の冴えないキャラクターであるジャニオタが好きなのはあくまで「そのジャニタレが演じている金田一」であり、主人公イケメンではない原作に惹かれるとは全く思えない。同じことは多くの実写化作品でいえるだろう。

まり漫画実写化とは原作無関係の連中が原作を安く買い叩いて好き勝手に作り変え、大儲けをするという非常に歪なもの原作サイドのことなど1ミリも考えられていない。

はっきり言えばリスペクトモラルも無い最低の存在である

私は漫画ファンとして、この卑劣な「原作レイプ」のさらなる犠牲者が出ることを食い止めるにはどうしたらよいか常々考える。エンタメ業界にはびこる腐った根性を撲滅するのは視聴者から不可能なので、一番現実なのは実写化より儲かる別のコンテンツ」が誕生することだろう。『鬼滅の刃 無限列車編』が日本歴代トップ興行収入を上げたように、アニメ劇場版ますます盛り上がれば「とりあえず実写化」の悪しき流れは変わるかも知れない。

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