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2021-06-10

妹に足を刺された転生

妹はモスキートだった。あまりに巨大すぎて、部屋に入らない羽は畳んで入るようだった。

口では喋らないので、羽音で挨拶するなどが得意だった。

飲水主食であり、時折血を欲しがった。タンパク質が足りないが口癖だった。

妹は見た目が完全に虫だったので、学校では異端視された。

ストローなしでも牛乳が飲めることが特典ではあったが、牛乳から得る糖質は花の蜜ほどの効率性はないようであった。

そんな妹は時折邪神扱いを受けることがあった。奇妙な宗教家たちや、学校を住処とするオカ研の連中にである

彼らは妹の羽音を邪悪なさえずりと言って忌避して真言を唱えるなどした。

塩水を振りかけられたこともある。いかなボウフラからまれた妹とはいえ、塩水は堪えるようだった。

そういえば、母は妹を産んだ記憶がないという、そういえば僕たちと随分姿が違う。

ボウフラからまれとはいえ雌雄があってこそのものだ。なぜ母は産卵した記憶がないのか。

夏が来た。妹は例年通りタンパク質が足りなくなってふらつき始めた。

欲求としては何者かの血が吸いたいらしい。しかし律儀にモラリストの妹はタンパク質摂取を良しとしなかった。

肉は分解できず。大豆摂取できなかったので、妹はやせ細った。こうして兄の私は彼女タンパク質点滴のために病院に担ぎ込むのである

妹が入院して数日後、何やら不穏な噂が流れてきた。病院が閉鎖したという報告もないのに、病院廃墟になっているのだという。病院への支払いや引き落としは滞り無く済まされており、音もなく病院廃墟化したという事実はにわかに信じがたかった。それが噂ではなく実際であるという情報地域に広まるにつれて、私はいても立ってもいられず病院へと足を向かわせた。妹の容態も心配である

病院看板は黒くくすんで、文字は書き換えられていた。邪教の館と書かれている。私は恐る恐る正門をくぐると、受付でミイラ化している看護師たちを尻目に妹の病室へとあがった。これは何かがおかしい。明らかに常軌を逸している。私は額に脂汗をかき、階段を駆け上がった。なにかが崩れるような、産まれるような、奇妙な感覚が襲った。そしてやがて見えてきた妹の病室からは光が漏れだしていることを確認した。稲光のような閃光が部屋から漏れたかと思うと、部屋は静まり返った。

私は恐る恐る扉を開けてみた。そこには奇妙なカプセル風の器具と、羽をはやし、人間のような姿をした、しかし人ではない異形のものが立ちふさがっていた。その元妹であった何かは私に向かって述べた。

「我が名はパズス邪神なり。今後とも​よろしく――」

私は妹の新たな人生に涙を流して拍手した。

anond:20210610154421

2018-02-19

エクソシストを観ての感想

エクソシストを観た。ただグロテスクなだけでなく、練られた表現であることが感じられる。

なぜ悪魔リーガンに取り憑いたのか?理由説明は皆無である

おぞましく忌まわしい悪霊が誰彼区別なく憑依する、それは恐ろしいことだ、と思いきや、続編でその理由が語られるという。いわく、リーガンは大いなる善なる者であるために、悪魔パズス攻撃したのだという。

だとしたら、倒すべき悪と善なる者の戦いであり、黒白明確に分かたれた両陣営の対決であり、結果的勧善懲悪浅薄ものがたりである

単純な世界観であり、大衆対象にしたただの娯楽作品といえる。アメリカの単純な世界観はこういうところにも現れているのかもしれない。

人生を豊かにする思想洞察を含んだ物語ではない。繰り返し観る価値はない。

 
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