2020-05-13

おじが自殺した年齢になった

自分中学生ときにおじは自殺した。

まさにバブル崩壊直後の話だった。

両親が険しい顔をして小声で話し込んでいるのを遊びながら横目で見ていた。

その時はただおじがなくなったという話だけを聞いた。

葬式に参列したとき、口の軽い別のおじからあいつは自殺した」と聞かされた。

両親もその場にいたが、そのことを隠したかったみたいでバツの悪そうな顔をしていた。

そのおじのことは嫌いだった。

見た目もしゃべり方もチンピラ風で、小学生の頃はいとこと遊んでいるところを何度も邪魔されその都度泣かされてばかりだった。

親戚の集まりはいつも遅れてきてくるばかりか大抵の場合すでに酔っ払っていた。

早々にお金の話を始めて、自分の羽振りの良さの自慢ばかりしていた。

いわゆる典型的成金だ。

父の妹の婿さんだったが、先に来た妹が兄弟に囲まれて泣いている姿も何度か目にしたこともあった。

今で言うDVのようなものもあったかもしれない。

おじの子どもたちは自分より年上でおじとは似つかないほどにしっかりと誠実な印象だった。

しかしながら酔っ払って大騒ぎするおじを止めるようなことは一度もなかった。

受け入れていると言うよりは諦めている印象だ。

その当時、こんなにも周りを敵に回して、この人はなんて強い人なんだと自分は思っていた。

こういう無神経な人が世の中で幅を利かせて思い通りの人生を生きていくのだと思っていた。

からこそ自殺と聞いたときは驚きが隠せなかった。

悲しいとか、ましてや嬉しいとかもなく、ただただ驚きがそこにあるだけだった。

そんな自分も今年で45歳になった。

正確には覚えていないが、おじが自殺したのと同じくらいの年齢だ。

10年前に滑り込むように見合いで同世代女性結婚をして、なんとか2人の子宝にも恵まれた。

おじの存在はいつも心のどこかに引っかかっていて、自分はそんな大人になりたくないといつもブレーキのように行動を見直させてくれた。

から自分大丈夫だと思っていた。

今、新型コロナという未曾有の災害に巻き込まれている。

自分仕事はもろに影響を受けている分野で、収入は激減。

これから先の未来においても、回復絶望的ではないかと思えるような状況だ。

就職氷河期直撃の世代なので、仕事を選ぶことなんてできなかった。

当時から底辺と言われるような業種だったが、働けるだけましだと思い、一生懸命ここまで走り続けてきた。

なんとか生活も安定してきて、自分はおじのようにならずに済んだとほっとし始めていた矢先だった。

このまま全てを失うかもしれない。

そんな漠然とした不安が、脳裏をよぎる。

自分が今までやってきたことは何だったのだろう。

業態ごとなくなってしまえば、もう1から何かを始められる年齢ではない。

今はまだ病気なんかに負けたくない気持ちだけで生きる気力をつないでいるが、コロナが落ち着いて経済を再建していく上で、皆が順調に再建していくなかで、業態ごとなくした自分はどうなってしまうのだろうという不安に押しつぶされそうになる。

そんな人間と一緒にいるくらいなら、なんとかまだ働いて行けている妻の親元に子供ごと帰らしたほうがよいのではないか

自分ひとりなら惨めな思いは耐えられるかもしれないが、家族に惨めな思いをさせるのは耐えられないかもしれない。

あの時、バブルが弾けて全てを失ったおじも同じことを考えていたのだろうか。

30年以上も過ぎていまさらあのおじに苦しめられるとは思ってもいなかった。

4月自殺者は減少したという記事を見た。

仕事学校ストレスから開放されたからともっともらしい理由が書いてあったが、自分は違うと思った。

なぜなら、生物死ぬかもしれない状況になると生きたいと思うようにできているからだ。

問題はこれから数カ月後だ。

常々、自殺に至るメカニズムは「死にたい」が原因ではないと考えている。

しろ「生きたい」と考えるからこそそれがかなわないことに絶望するのだ。

周りが生活を再開して生き生きとし始めた時、自分けが取り残されていると感じたらどうだろう。

「生きたい」のに「生きられない」と感じた時、心の引き金を引かないでいられる自信がない。

気が付かないままに自分もいつの間にか気高い存在になってしまっていたのかもしれない。

これを書いている最中でさえ、心は激しく浮き沈みを繰り返している。

全てを失った時、心の外側にべっとりと絡みついた贅肉のような傲慢さも一緒に取り除くことができるのだろうか。

  • 7行目からの「そのおじ」の説明は死んだおじ?それとも教えてくれたおじ?

  • 口の軽いおじを口の軽い親戚くらいに書き直しとかないと文脈で判断することになるから読みづらい

  • なくなった業態って何? 転売?

  • そもそも業態ごとなくなるって何だ 血も繋がってないおじに対して感傷的過ぎる 子供もいるのにグラグラしてるな

  • 子供と嫁を里に帰らせる、みたいな、発想が日本昔話みたいで笑った。 それはそうとやっぱ資力のある同士で結婚して二馬力でバリバリ稼いで子なしで気楽に優雅に生きるのが最高かつ...

    • それはそれで、妻の方は「在宅勤務で大変なのに夫の世話までさせられてもう限界だからコロナ離婚」って思っているという… 金あって子供いなけりゃ離婚なんか簡単だし

      • 子供じゃあるまいし夫の世話なんてしないよ。 大人がふたりで生きるってのは、誰かのお世話をする、してもらうことじゃなくてふたりで交互にやるから労働もリソースも半分で済むっ...

        • それはそれで、夫も一人の時間取れなくてストレス溜まってるわけで 人間、他人とずっと一緒に居たら煮詰まる人が大多数だよ そこでそういうストレスを感じないとしたら 他人とず...

  • 自殺の影響力ってでかいよなぁ。

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