pay系の乱立に辟易した人たちがどれだけ持ち上げたところでその現実は変わらない。
誤解の無いように書いておくと、Sは現時点で電子マネーの最有力だし、そうあり続けるだろう。
「商売人の理屈なんぞ消費者の知ったことか」というのはもちろん正しい。
が、同時に「商売人側が事業が成り立たないレベルの負担を受け入れてまで商売する義務もない」というのも真っ当な意見。
どれだけ客にメリットがあろうが、負担が重けりゃ導入なんか出来ない。
初期費用もそうだし、手数料もそうだ。歴史の長いクレカですら使えない店が結構あるのはそういう理由。
過度な負担を押して導入したところでより早く潰れるだけで導入しない方がマシな場合もある。
というか、これから先消費活動をする人間の数が減ることが確定している日本国内では仕方の無い判断だろう。
「なんでJRは本腰入れて普及させないんだ」みたいな言葉もよく見るが、「やったんですよ!やった結果がこれなんですよ!」ってどこぞのニュータイプの慟哭のような言葉が返ってくるだろう。
そもそも、Suicaの最優先目標は発足当初から常に「東京の異常な通勤ラッシュ客を捌く」だ。
今までも、これからも当分これは変わらないだろう。
そうなると、決済速度のなどのスペックはもちろん下げられない。
そして世界的に見てもまれに見る高スペックな規格なので、海外展開において多少採用事例はあってもさほど普及してるとは言えずコスト低減にも限界がある。
もしかしたら社内では外販部隊から矢のようなコスト削減要求がなされているのかも知れないが、海外展開も東京のラッシュ解消もうまくいかない現状でここまで普及したことが賞賛されることはあっても「本気でやれ」なんて寝言を投げつけられる理由にはならんだろう。
そもそも、Suicaが自社鉄道外での決済を普及させるのは「不安無く大きめの金額をチャージしてもらうため」という、自社鉄道の業務効率化の為でもあるからだ。
電車賃にしか使えないSuicaに万単位の金をチャージする人はそう多くないだろうが、それでは改札の列を券売機に付け替えるだけにしかならないので、自社外での決済利用拡大は「どうせ他でも使えるから多めにチャージしとこう」と思わせるための施策だ。
Suicaに関して、ここまで普及しながら本来の目的が微塵もブレることなく事業遂行されてるのはホントにスゴいと思う。
浮かれて普及のために無理なコスト削減するバカな責任者がいなかったことの証左なんだから。
B2Bならうまくやれば少数精鋭でビッグビジネスを成功させることが出来るかも知れないがB2Cでは無理だ。
だからビジネスパートナーの負担を減らして巻き込んでいくのは当然の施策だ。
というわけで、Suicaは現状最強の電子マネーで、しばらくは電子マネー市場で存在感を示し続けるだろうが、覇権は取れない。
まぁ、個々人の生活範囲によってはその人にとっての覇権にはなってるかも知れないが、広く一般で、特に関東以外の地域で覇権を取るのは無理だ。