半年前、卒業式から時間も経って大学入学の直前に、告白された。
私は、ここに書き込んでる時点でもうアレだけど、オタク一直線で何年も恋なんて忘れていて。だから当然そいつのことは恋愛対象ではなくて、大分困惑した。そいつくらいに親しい異性は何人か心当たる。私にとってはその程度で、だからその時点で断るべきだったのだと思う。
でも少し「彼氏」という言葉に憧れがあった。所謂少女漫画思考というのか。異性をそういう目で見てなかった分、自分にも魅力はないだろうと思っていたのだ。だから、私にもそんな魅力があるらしい、って告白されたのが嬉しかった。悪い奴じゃないのはわかっていた。だから、かなり悩んで付き合おうということにしてしまったのだ。
好きじゃないけれど、君なら恋愛対象にできる気がする。そんな文言でメールを送った。(告白事態がメールだったからその返信である。)
めちゃくちゃ彼は喜んだ。好きになってもらえるよう頑張る、と言われた。彼がそんなに喜んでくれるのがこちらまで嬉しくて、なんだか私はふわふわした気持ちで彼から送られるメールを見ていた。
けれど、今は思う。初なオタクさんが二人付き合っても楽しくない。
……いや、違うかもしれない。恋に憧れていて、情の無かった私が付き合おうなんて時点で破綻していたのかも。
付き合ってみて思ったこと。彼はとにかく愛情表現が下手だった。告白以外、私が聞いてみない限りは何も言わない。ただデートに付き合うと彼が楽しそうにする。楽しそうにしてくれるから、好いてくれているんだな、とは思ったし嬉しかったけど……全くときめくポイントがなくて、静かに静かに冷めて、温度差ができていくのが辛かった。
デートの後半は愛想笑いが増えてしまっていたのに、全く気づいてくれない。
楽しみきれていない自分が何だか嫌だった。気づいて欲しい、と期待してるのも自分勝手な気がして、一層デートの気が重くなった。
付き合い初めてすぐ、かなり遠回しに、親がいなければ家に呼びたいのにな、と言われた。何の気なしにああ、近いうちに私独り暮らしするだろうし、その時ならうちにこれるね、と返した。そうしたら、その時ならいいんだね、楽しみ、とラインが来た。上手く言えないけど、それは遠回しに性行為を仄めかすような文章で、心がモヤモヤした。その時は解らなかったけど、多分私は自分勝手に、「自分のことを好きになってもらおうという努力より先にそれがくること」が嫌だったんだと思う。
酷い話だ。付き合いはじめる時点で、彼は子供じゃないんだからそういうことだってしたいだろう、って思っていればよかった。そうしたらきっと、断っていただろうに。
手を繋いでみた。緊張でどうにかなりそうだった。だけど、それ以上でもそれ以下でもなかった。緊張だけ、繋げて嬉しいと思えない。当然だ、好きな人じゃないから。駅の改札の前でハグしたい、と言われて断った。手ならいい、と思ったけど、体重はなんだか預けたくなかった。
ハグを断った日、駅で別れてから二週間くらいは、ちまちまデートのお誘いの連絡が来た。ただ家から遠くの大学に通っているのもあって、付き合い出しての一ヶ月はかなり忙しかった。歓迎会、サークル見学、土曜授業。ごめんね、と数回断ったら、そこからぱたりと連絡が止んだ。……いける日を聞いてくれたらよかったのに、って思うのだが、なら私もそれ言っとけよって感じだから黙ろうと思う。
そうしてあっとい間、連絡すらとらなくなった。隣の県に住んでいる彼とは会わない。絶望的である。かなり悩んだ。新しい環境で疲れている。でも初彼氏、ちゃんと好きになって、ちゃんと恋がしたい。じゃないと、失礼だ。だけど連絡がない。
痺れを切らせて、連絡が途絶えてから一ヶ月後、私は少し起こった口調でLINEをした。
「連絡がないのはどうかと思う。このままじゃ全然君を好きにならない」
そんな文面だったと思う。それにたいしての彼の返信で私はもうこいつとは付き合えないと思ってしまった。
すいません許してください、なんでもしますから。すいません許してください、なんでもしますからだ。アホかよ。もうLINE見た瞬間怒りが込み上げた。真剣に悩んでたのにこいつはネタで返そうとする。茶化してすまそうとする。静かに怒って、LINEを放り投げた。
(というかそれ以前に淫夢ネタ好きじゃない。結局人をダシにして笑うのは、見てて気持ちいいものじゃないから。)
心のどこかでわかってもいた。きっと彼的には軽いノリで、付き合う前くらいの会話がしたいんだろう。わいわいわやわや喋りたいんだろう。だから、私の模範解答は、このネタに乗っかることなのかな、なんて。
だけどやっぱり、私の怒りは収まらなくなっていた。再びスマホをもって、丁寧に腹を立てている旨を伝えた。彼に今度はごめん、そんなつもりじゃなかった、と言われた。じゃあどんなつもりなんだ。だからここまで抑えていた、カップルの女側のテンプレートでクソみたいな質問をした。「私のことホントに好き?どこが好き?」ってやつだ。
彼の返事はなかなかこなかった。そしてやっと来た文面がこうだった。「それ言ったら思い直してくれる?引くかも知れない本音ばっかだけど……いい?」
あ、絶対こいつ私の体の話まぜる。こんなこというとアレだけど、私は細くかわいくない代わりに、胸がそこそこある。そんなことが理由なのか……。なんか一気に落胆した。
もう私の気持ちがだめだと思うからいい、と短く返事して、今度こそベットにスマホを叩きつけた。スマホ文化はクソだ。こんな嫌な会話の履歴が残ってしまう。相手の顔が見れたら変わっていた?……八つ当たりだけど私は異世界スマホはクソ派に一票。スマホはチートじゃねぇ。
別れてから何がダメだったんだろうと思う。あんなどこが好き?みたいな質問、したくなかったんやけど。
多分、お互い恋に慣れていなかったから、恋人らしいことが出来なかった。それで私は恋人でいることに価値が見いだせなくなったのだと思う。
元々軽い気持ちで承諾したつもりはなかったけど、もう二度と気持ちがないのに告白を受け入れないと心に決めた。自分勝手な期待で誰かを振り回してしまうのはもううんざりだ。
唐突にdisられる異世界スマホ。
男見る目が養われてない状態ではそういう失敗をするのが普通