昼2時。図書館に向かう途中、スマホをいじってると、●屋でワンコイン定食フェアが始まったとラインのメッセージを見て知った。
普段、豚バラ焼肉定食は550円なのに、しばらくはこのキャンペーンが続くんだと。
朝食べてないし途中に●屋あるから行こ。
そう思って向かった。
だろうなぁと思った。でも、いいや、急いでるわけでもないし。
600円だ。
しかも店舗限定で11時から15時までのランチタイムは大盛り無料ときた。
見えた。
小銭を全部投入して、券を買う。
空いてる席は前の客が食べ終えた食器が片付けられていない。
困ったなー、他に空いてないかなーと店内を見渡していると、奥の方に2つ空いてるっぽい。
でも、近づくと1つは食器がそのまま、もう1つはその席の隣の客がでかいリュックで占領してる。
隣の片付けられてない食器をその占領されてる席にずらすことで、席を生み出すことに成功した。
割とすぐ注文を聞いてくれた。
でも水が出てこない。
まあいい。
混んでる●屋において、これぐらいは想定の範囲内だ。
俺の心はこれくらいで動揺しない。
もちろん料理が出てくるのが遅いことも、おり込み済みだ。
料理が出てきた。
肉の盛り付けが下手すぎる…。
なぜだ?
忙しいからか?
そして肉にポン酢(俺はポン酢派だ)をかけて、箸でつまみ上げようとする。
第二の違和感。
カリカリだ…。
これはベーコンか?
まあいい。
カリカリベーコンが美味しいことは、西荻窪の洋風居酒屋で、シェフの気まぐれサラダを食べたときに確認済みだからだ。
とりあえず食べよう。
第三の違和感。
常温?
言っておく。
冬の常温は冷たい。
あったかいと思って口に運んだ料理が冷たいとき、それはハッカ飴を舐めるよりも体が冷やされたような気がする。
食べた瞬間に、かたみ、つめたみ、しおこしょうみが、口いっぱいに広がる。
まずくはない。
だいたいの料理が美味しいと思えるこの舌のおかげで、料理下手がコンプレックスだという女を、そのコンプレックスから解放させたくらいの自慢の舌だ。
話を戻そう。
俺の前にでてきた豚バラ焼肉L定食600円は、だいぶ前に作られていたものではないか?
オーダーミスなのかはわからんが、さっきミスって作ったものを横に置いといて、すぐに注文来たら出しちゃおう的な。
この忙しい状況ならありうる。
それにしても、肉は、かたく、つめたく、しょっぱい。
悩んだ。
この作り置きを許すかどうかだ。
俺は●屋が好きだ。
おかげでBMIは29だ。
店員さんに、作り置きではないのかと、尋ねるべきか?
いや待て。
その都度、俺は内心、その客を蔑んでいた。
●屋ってのは、低価格でそこそこのサービスでそこそこの定食が食べられる店だ。
胡麻ドレッシングが空になってるときもあるし、テーブルに乾燥した紅ショウガが落ちたままになってることだってあるし、外国人旅行客の集団が券売機で苦戦してなかなか券を買えず、ガラガラの店内で結構長時間待たされるときもある。
それが●屋クオリティだ。
そこを勘違いして、何やらクレームをつけているおじさんを見ては、あーはなりたくない、おれはまだマシな人間だ、とか、そういうことを考えながら、独身30男がメシを食う場所なんだ、ここは。
おれは決めた。
クレームはつけない。
今後は作り置きもおり込んで●屋に通う。
朝、作っておいた弁当だと思えばいい。
一旦弁当に入れておいたおかずを皿に乗せて出したってなもんだ。
ほら。
おれは食べきった。
そしたら、向かいの30後半の男性の豚バラ焼肉L定食のオーダーが入った。
気になる。
あ、出てきた。
俺は作り置きを受け入れたぞ。
あんたはどうする?
その客は「これって、注文聞いてから作りました?」と若い店員さんに尋ねている。
店員が厨房の奥に入っていき、すぐに、30代後半の女性店員と一緒にでてきた。
「今作ったところなんですが、すぐ作り直します、すみません」。
その客は何事もなかったかのようにアツアツ豚バラ焼肉L定食をほおばり、店員たちはいつも通りいらっしゃいませーと叫んでいた。
俺もo屋はわくわくして初ソーセージエッグ定食頼んだらごはんが保温しすぎてクソまずくてそれがショックでそれ以来朝以外でも行かなくなった