周囲の人がビビりまくっているので、実際の制作に従事している人に向けて、私の考えを述べたい。
様々な情報や意見が飛び交っているが、現場の制作において今回の件に学ぶべきことは、以下の1点だけだと私は思う。
少なくとも「絶対にバレない」という状態まで加工しろ。「もはやオリジナル」と言えるまでに。
実際のところ、今回の敗因(?)となったのは、佐野氏がネットの画像を無許可で使用していたことがバレたことに尽きる。ほんとにこれだけ。
「⚪︎⚪︎に似てる」とか、そんなことは個人の意見の範疇なんだから、問題の根本ではない。
(事実、佐野氏は画像の無断使用にしか謝罪はしていないし、それ以上の謝罪は必要なかったように思う)
昨日(8/1)の会見で、組織委員会はエンブレム取り下げの理由を「ひとえに一般国民の理解を得られなかったから」と言っていた。
まあ、それはそうなんだろう。だって、ほかに決定打となる明確な理由などない。
しかしより根本的には、その明確な理由があったとすれば、エンブレム自体ではなく、佐野氏自身のデザイナーとしての信用の問題だろう。
「パクり」と「画像の無断使用」に関して(ネットで両者が混同されていることに驚く)、前者に関しては真偽はわからないものの、後者は明らかにおこなっていたのだ。
著作権を犯した作品を現在進行形で商業の場で発表していた人(それが部下の仕事とかはマジでどうでもいい)を、国際的な祭典の壇上に立たせることは、問題視されてもしかたがない。
前科が見つかって立場を降ろされるのは、個人的には納得ができる。
ネットの勝利だとか、インターネット時代のクリエイティブの危機とか言っている人がいるが、さすがにネットの意見に押されただけで、組織委員会は決定を覆したりはせんでしょう。いや、絶対ない。
今回の騒動は、「エンブレムが気に入らない」に端を発し、「明確な著作権侵害」という、攻撃されるスキを見せてしまったことでここまでの騒動に至った。
しかし逆に言えば、ただそれだけの話だし、ただそれだけの結果をもってして、何か危機的な状況だと感じている人は、「ネットの画像をつかえなくなるのが危機的な状況なんですか?」と問いたい。
今回の件は、ただただ佐野氏が悪い。「ネットの画像を無断で使用して国民からの信用を失った佐野氏」が悪いのだ。
さて、筆がノったついでに、以下、もっと大きな問題についての私感を少し。
現場への影響に関しては上記くらいの認識で良いと思っているが、そのほか、業界的に問題だと思っていることを2点。
・(コンペの審査員とかの)村社会的な体制は、村社会が通じるところでやろう。
・業界のエラい人は、文句があるならどうして猛抗議しなかった。
そのままなんだけれど、一応ひとことずつ。
前者に関しては、本来ならべつに問題ないというか、どの業界でもだいたいそういうものだと思っている。
が、「ここを攻められたら反論しにくいよね」というポイントのひとつだと思うし、オリンピックは相手が悪かった。
実際、「デザイン」っていう分野がここまで脚光を浴びたことなんて、私が生きてきたなかでは初めてのことだと思う(同時に、東京で生きてきたなかで最大のイベントだと思う)。
オリンピックSUGEEってことね。
後者に関しては、素直にかっこ悪いなあという印象。
こういう態度を取られると、「ビビって逃げてる」か、「ネットのバカには意見するだけ無駄だと考えている」と捉えられても仕方がないように思う。
いずれにせよ、「一般国民」から距離を取って、「あたし佐野さんと友達だから」とか、「この良さがわからないとは」みたいなJKの女子会レベルの論拠を持ち出すのは、マジでダサいからやめてほしい。