ゲーム開発者とユーザーは数ヶ月〜数年レベルで生きている時間が違っている。
最近だと、とあるタイトルの制作発表に際して、「『このキャラを出して欲しい!」と言うツイートをたくさんすれば、DLC等で実装される可能性も出てくるだろうし頑張ろう!」なんて言った呼び掛けが見られたが、ゲーム開発者からすると申し訳ないがだいぶ難しい。
勿論私は件のタイトルに関わっているわけではなく、リーク情報を持っているわけではない。
(任天堂が関わっているタイトルの情報のリークなんてゲーム開発に携わる人間ならどれほどリスキーなことかわからないはずがない)
とある企業でコンシューマゲームの開発をしていたり、アプリタイトルの開発・運営をしていたりするただの会社員だ。
ただ、企業ごとに細かい差はあれ大体のゲーム開発の流れは同じだ。
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大枠を作る
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会社内でチェックを受ける
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本制作に入る
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会社内でチェックを受ける
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(しばらく制作・チェックの繰り返し)
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発売
これが大体2〜3年程度で行われている。
発売(配信)
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アプデ配信
といった作業が発生する。
では、制作発表はこの計画のうちどのあたりで行うのかと言うと、大体は本制作に入ったあと、発売の半年〜1年前のことが多い。(それこそ任天堂は直前にサプライズ発表することもあるが)
よほどのタイトル・よほどのコアユーザーでない限り、客は何年も先の予定など待っていることができない。楽しみに待ち続けられるのはそれくらいの期間が限界なのだ。
また、その時期より前になってしまうと開発中に大幅な方向転換があることも多々あるため情報を出せる状態ではないことも多い。
「※画面は制作中のものであり、実際とは異なる場合がございます」なんて言葉を使っても許されないレベルに内容が変わることもザラにある。
だから、初報を打つ時期というものには本当に慎重になり、大半が固まった時点でようやく……となる訳だ。
そうするとどうなるかというと、その時点からユーザーが「こうして欲しい」「ああして欲しい」と言ったところで、対応しようがなくなる。
作り終わったものに手を加えるのは本当に怖い。エンバグの大きな要因になるからだ。
DLCを販売する予定があるのではあれば、大抵の場合は設計時点から「ここにこういうものを加える」と決めておくのが安全な開発だ。
また、後からDLCを作成する際には、技術面以外でも金銭面に負担が非常に大きい。
開発自体にコストがかかり、社内のデバッグでコストがかかり、プラットフォームの審査に費用がかかる。(プラットフォームの審査は年会費のものもある)
これは事前に作った上で時期をずらして配信とかであればかからないはずのコストだ。
だから、よほどの利益が見込めない限り後から付け加えるメリットがない。
もし仮にファンの要望が通ったとしたら、それは本当にたまたま元々の開発の予定と一致していただけの偶然がほとんどで、残りは「余程の利益が見込めた」場合だ。
これはアプリタイトルも全く同じで、カスタマーサポート(以下CS)にきた要望にすぐ応えることは非常に難しい。
例えば、給料日より後に引きたいからガチャの期間を延ばせと言われても、もうガチャの期間を決めたデータが入ったアプリが配信されているのでそれを修正するには新しいバージョンをリリースする必要がある。
しかし新しいバージョンの配信にはやはり開発、モニター、審査の3つの過程を通過する必要があり、そもそも時間的にもすぐ対応することは困難だ。
さらに、カードイラストなんかは発注と制作で数ヶ月はかかると思って欲しい。リアルタイムに客の声を吸収することは不可能だ。
CSに寄せられた要望がすぐに叶う場合は、たまたま開発でもその問題を認識しており対応していたか、もしくは余程の重大なバグで修正しなければプレイできなかったり、法務的な問題が発生してしまうものだったかのどちらかだろう。
その他に関しては、寄せられた要望に対してコスト面などを考慮しつつ時間をかけながら修正していくことになる。
「無能運営」「クソ運営」と気軽に送ってくる方々も、裏側にはいろんな事情があってそれぞれ会社という枠組みの中で必死に対応しているのだということをどうか理解して欲しい。
(私はCSからのお問い合わせ一覧を見ると、世の中にはいろんな方がいらっしゃるんだなと思うと同時ストレスで体調が悪くなるので、CS対応の同僚が心配で仕方ない)
長々と書き連ねてみたが、勿論ユーザー意見・要望を送ることに全く意味がないわけではない。
DLCでの対応は無理でも、続編が出るとしたら参考にすることだってある。
厳しい内容でも(できるだけ社会人としての最低限の配慮ある文面であって欲しいが)、真摯に受け止めたいと思っている。
我々ゲーム開発者は結局面白いと思ってもらえるゲームを作りたい一心で数年かけて開発を進めているいるのだから。
けれどその一方で、ゲーム開発者とユーザーとでは時間的に大きな差があり、その要望を全て聞けるわけではない事を理解いただけるよう願う。