はてなキーワード: ウインブルドン現象とは
私は Google のソフトウェアエンジニアとして働いている。とても良い待遇で満足している。
Google の待遇が良いことはイメージとしては知られていると思うが、実際どれくらいの額なのかということはあまり知られていないように思う。そして、出回っている情報には間違っているものも多い。そこで、正しい情報を知ってもらいたいと思い、自分の給料の推移をここに記すことにした。なぜそのようなことをするかは後に述べる。
まず、Google の給料について説明するときは、以下の三要素が重要になる。「基本給」「ボーナス」「RSU」である。このうち、基本給とボーナスは一般的だが、RSU はそうではないので、説明する。例えば RSU を100万円受け取るとする。そうすると、「その時点での100万円分の Google 株を、その次の年から四年間かけて受け取る権利(ただし Google に在籍していることが条件)」を受け取ることになる。つまり、RSU をもらった年は何もないのだが、その次の年から四年間かけてもらうことになる。これは、会社を辞めずに残るインセンティブを与える仕組みになっている。株価の変動に依存するので必ず100万円もらえるわけではないというのが注意点になる。これが重要なのは、Google の給料のうち、RSU が大きな部分を占めていて、職位が上がるほどよりその傾向が強まるからである。Google の給料についての情報で間違っているものは、RSU を含んでないものが多い。この三要素について書かれていない情報は間違いだと思って良い。
そして、職位についても説明する必要がある。社員は 1 - 10 のレベルに別れている(レベル11的存在もあるが、彼らは「経営陣」と呼ぶべき存在である)。ソフトウェアエンジニアはレベル3が最低となっている。新卒の場合は、学士・修士はレベル3、博士はレベル4からスタートすることが通例のようである。中途採用の場合はもちろんそれまでのキャリアによる。人数的にはレベル4とレベル5が多い。レベル3は入門的ポジションで、数年以内にレベル4に昇進することが前提とされている。平均以上のパフォーマンスを出していれば、そのうちレベル5には到達できることが多いように思う。レベル6は日本企業出身の人によると「課長級」とのことであり、中規模のサイズのグループの管理職として認められるか、非管理職の場合は技術的にそれと同等のインパクトを出すことが求められる。筆者は現在レベル5なのでそれより上のことは詳しくないが、レベル8が「部長級」、レベル10が「事業部長級」とのことである。
では、いくらもらえるか、である。もともとは筆者の年収の変遷を書こうと思ったのだが、どうもここ数年の間に給与システムが変わったようなので、現在の待遇だけ書く。
現在筆者はレベル5で、基本給が1400万、ボーナスが300万、RSUが800万である(特定を防ぐために数字は丸めている)。計2500万といったところである。特別出世したわけでもないのにこれだけもらえるのは大変ありがたい話である。
新卒のレベル3がどれだけもらえるのかというのも気になるところだとは思うが、あいにく筆者がレベル3だった頃とは制度が違う(待遇の内訳が大幅に変わっている)ので、誤解を防ぐ意味で詳細をここに記すことは避ける。しかし合計年収はそれほど変わっていないと思うので書いておくと、レベル3のときは1200万程度、レベル4のときは1400-1800万程度であった。レベル5に昇進したときは2000万程度で、その後もレベル5内でも平均以上のパフォーマンスを評価されて上がってきたという感じである。とりあえず、RSU を含めれば、新卒でも1000万の大台に乗るのではないだろうか。
ちなみに、筆者がこれを書いているのは、現在の待遇に不満がある人にどんどん転職してきて欲しいからである。最近は Google 以外にもソフトウェアエンジニアに高待遇を出す企業も増えてきていて素晴らしい限りであるが、そうでない企業も特に伝統的大企業に多いし、そういうところからはどんどん移ってきてほしいと思っている。Google が東京に開発拠点を置いている理由はそこでまとまった人数の優秀なエンジニアが採用できるからであり、採用が東京オフィスの存続・発展の要だからである。私は今の職場にとても満足しているので、Google 東京オフィスにはぜひ今後も存続・発展を続けてもらいたいと思っているので、より多くの人に応募してもらいたいと思ってこれを書いた。また、Google 東京オフィスが成功すれば、それがモデルケースになって他の外資系も日本に開発拠点を設置または拡大するようになり、日本のソフトウェア産業がウインブルドン現象で栄える可能性もあると思っている。これは、中国がアメリカによって「レッドチーム」と認識されていく中、日本がブルーチームではアメリカに次ぐ経済大国であることが再認識されているということもチャンスであるように感じている。