2020-04-18

釣りの日」のススメ

ここで言う「釣り」は「嘘を付く」ということだ。

インターネットには「釣り」という文化がある。

他人感情を刺激するような嘘の情報を流し、それによって他人がどう反応するのかを楽しむ遊びのことだ。

縦読みを仕込んで嘘であることをあとで証明できるようにしてなければいけないと語る原理主義者もいるが、別にそんな所にまで拘る必要はない。

嘘か嘘でないかなんて誰にもわからない情報が飛び交うのが世の中であり、実際、人間の目ですら錯覚という形で嘘をついてくる。

自分自分が嘘を疲れている世界を生きるには、目に見えること耳に聞こえたことがそのまま真実でないと疑う癖をつける必要がある。

そのために有効なのが「釣りの日」である

私は数ヶ月に一度ほど、インターネット積極的に嘘をつくようにしている。

基本的には匿名掲示板を使う。

SNS場合アカウントを用意するのが面倒だからだ。

よくやるのは架空自分語りだ。

自分スレッドは立てず、ちょうどよいスレッドを見つけてその流れに沿った形で壮大なヤバイ奴を演じる。

ストーリーを全部足跡でやるとバレるから前もって設定はキッチリ固める。

これにだいたい1時間かかる。

その間にスレの潮目が変わってネタ投稿するのに相応しくない流れになってきたら、スマホネカフェを利用して複数IDを用意してそこから流れを作る。

流れを作るのに必要IDは1つでいい。

どうせその後に投げ込むネタが上手く行けばそっちのIDいくら変に目立とうがどうでもよくなる。

基本的には投稿用のIDとそれに茶々を入れるために流れを作るのとは別にIDが2つはほしいが、1つでもなんとかなる。

バレバレの嘘に見えても、案外1枚コラ画像があればそれだけで皆実在を信じたりする。

特に有効なのは学生証だ。本物である必要はない。

アクセス数が低いググっても出てこなそうなブログから学生証の写真を借りて、それをコピーして厚紙に貼る。

その上にネタを書き込んだ本人でを証明できるようなワードを書いた紙を載せた状態写真を取る。

画質は低めにして取って、名前数字写真にはコピー前にすでにモザイクを入っているだろうが、出来た画像に対して改めて入れ直す。

それをアップロードするだけで、どこどこ大学学生であることをバラした愚かなピエロ実在すると思い込む人間が出てくる。

あとはまあ、いい感じに。

ちゃんとした釣り時間がかかる。

なんだかんだで半日仕事だ。

しょっちゅうは出来ない。

だがこの体験は私に貴重なものを与えてくれる。

正直、自分の目で見るとコレらの嘘は酷いできだ。

しかし、インターネット上の反応を見るとどうも本気にしているようにすら見える。

それが嘘なのか本当なのか、分からないのだ。

自分がついた嘘が嘘であることまでは分かっても、他人がその嘘をどの程度信じているかすら分からない。

じゃあ自分がこの嘘を聞いている側だったら嘘だと見抜けただろうか、そう考え出すと何もわからなくなる。

この何もわからなくなるという感覚によって、そもそもインターネットで嘘を嘘と見抜くことなど容易でもなければ、それをやろうと躍起になることすら正気でないことを思い出せる。

あらゆることが嘘である可能性と真実である可能性をまとっていて、適当に誰かが想像で語った冗談が嘘から出た真である可能性すらも秘めていること、それらを思い出せる。

「嘘の日」はネット、世の中、情報に対する身構えを振り返るのに最適だ。

皆も、年に一度でいいから嘘をつこう。

エイプリルフールは駄目だ。

あの日は嘘の面白さを競う日であって、嘘を見抜かれない努力をすることが最初から放棄されている。

そういう日に嘘をついても、それに踊らされる人間の姿から何かを学べたりはしない。

害のない嘘、たとえば、アナルにブラギガスを入れたら取れなくなったとかの嘘をつけばいいのだ。

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