俺は幼い頃から自己主張が下手くそで、他人に歯向かうことができない内向的な性格だった。
まあ、そういう性格だったからか、案の定イジメの標的にされて、同級生からよく馬鹿にされていた。
俺が何も言い返さんから、コイツにだったら何を言っても大丈夫と思われていたんだろうな。
小学生の高学年の頃だったか、なぜか知らんけど、同級生からイタズラをされた拍子に面白いリアクションを取ってみようと思い立った。
どうしてだろうなー。イジメの標的にされているという構図を変えたかったのかもしれない。
その間に消しカス(というかほとんど消しゴムだなw)を鼻にいっぱい詰め込んで後ろを振り返ってみたら、まーそれが大層ウケた。
それから「面白い奴」と認識されるようになって、クラスの人気者グループの輪の中にも入れてもらえるようになった。
そのときの俺は、面白いことをやると、クラスのDQNたちが腹を抱えて笑ってくれたり、時には俺の言うことにも素直に従ってくれるようになったのが嬉しくてたまらなかった。
関西地方だったから、「面白い奴が偉い」という風潮もどこかにあって、俺は「面白い奴」をどんどん演じるようになっていった。
俺は私立の中高一貫の学校に進学したんだけど、そこでも面白い奴を演じていると「調子に乗ってる奴」「変な奴」と認識されるようになって、ここでもイジメられるようになった。
別に面白い奴でも何でもなくて、中身はただの陰キャだからね。そういうところも透けて見えたんだろうな。
「リアクションが面白いからちょっと弄ってやろう」とかじゃない。「こいつムカつくからイジメてやろう」だった。
年頃の中坊がやることだからイジメも結構激しくて、あいつら、通学カバンや制服をビリビリに破いたり、首を思い切り締めて落としてきたりしやがる。
財布から金を抜き取られることなんて日常茶飯事だったし、心臓を抉るような暴言や罵倒なんて毎日のように浴びた。
それでも、何か面白いリアクションを取らなきゃと思っていたんだからもう病気だよね。演技性パーソナリティ障害とかいうやつかな。
この頃、唯一仲良くしていた友人も決して対等関係なんかじゃなくて、俺がピエロを演じていたからこそ維持できていたような関係性の奴だった。
そんなことをずーっと続けているうちに、俺の精神状態はズタボロになっていたらしく、大学1回生の頃にうつ病と診断された。
そのとき、俺を担当してくださっていたお医者さんがかなり勘の鋭い人で、「ピエロを演じるのはやめなさい」と初めて言ってくれた。
情けない話だけど、そのときやっと俺は自分が無理をしていたということに気が付くことができた。
それから約10年間、俺はうつ病の治療をしながら、ありのままの自分を認めようと努力を続けた。
ピエロを演じなくても済むように。自分に嘘をつかなくても済むように。自分を傷つけなくても済むように。
その甲斐もあってか、今となってはピエロを演じることはなくなったし、うつ病もほぼ克服した。
今から振り返ると、他人のご機嫌を取るために自分を犠牲にするなんて、本当に馬鹿なことをやっていたなと思う。
やっと人間らしさを取り戻すことができたというべきか。
ただ、その一方で、人間関係に途方もない虚しさを感じるようになった。
あの頃の友人の中には、30を過ぎても未だに子どものような精神年齢の奴もいて、
久しぶりに会ったときに、そいつから度を超えた悪ふざけをされたので、
自分でも驚くほど感情的な態度で対応したことが、ここ最近2回ほどあった。
友人間でも最低限の礼儀は必要だという当たり前のことを態度で示しただけだ。
だけど、そいつから突き付けられた答えは「友人関係を切る」だった。
そいつからしたら、俺が反抗的な態度をとったことが心底気に入らなかったんだろう。
そんなこと知ったこっちゃないし、それで友人関係が終わるんだったら仕方ない。
俺もそいつとの関係性を修復したいとも思わんし、何の後腐れもない。
ただ、その一方で、「人間なんて、多かれ少なかれ、こいつとそれほど大差ない」という虚しさを覚えるようになった。
思えば、俺に近づいてきた奴は、「こいつだったらイジメられる」と思ってたような奴ばっかりで、
俺がピエロを演じていたから付き合っていただけで、素の自分を出した途端に離れていくようなクソ野郎だろ?という目でしか見れない。
別にピエロであることが悪いってわけでもないと思う。ただ小学生のうちは「うんこちんちん」と同レベルの曲芸で回りが喜んでいたとしても中学に上がればほとんどそのレベルからは...
ピエロを演じること自体は俺自身オススメはしないけど、それをやっても大丈夫な奴もいるので全否定はしない。だけど、大丈夫な奴だったら、「うんこちんちん」でも問題ないし、ダ...
確かに。散々つまらないとバッシングされても芸人を続ける人もいる。本人が耐えられて続けたいなら続ければいいな。