そして、この地域の人たちには申し訳ないが、ドライバーの質の悪さに驚いている。
自分では自動車はあまり運転しないのだが、歩いていたり自転車に乗っていたりして、目立つところが多い。
大学までは関東で過ごしたのだが、その間一度も見た記憶のない、夜間に無灯火で走る自動車を何度も目撃している。
ほかには、歩行者が横断歩道を渡ろうとしているのに全く速度を落とすことなく強引に右左折をする、一時停止をしない、生活道路を明らかに50km/h以上で走っている、指示器なしでT字路を曲がったり車線変更をしたり路肩に寄せたり、といったところは日常でよくみかける。
慣れない土地で道がよくわからないというのもあるけど、これではクルマを買ったとしても公道を走るのが怖くなってしまう。いくら自分がルールを守っていても、危ない思いをするのが目に見えている。
そこで、このあたりと関東では交通事故発生件数が違うのではないだろうかと思って調べてみたのだが、はっきりいって有意な差はなかった。東京は人口が多いだけあって交通事故発生件数も多いみたいで、ほかの関東の県も決して少なくはない。
道路交通法違反検挙件数の人口に対する比でいうと、広島は5番目になるらしい。このランキングだと山梨も上位に入ってくるので、こちらもやはり関東との有意な差はないようだ。
このように、広島のドライバーの質が明らかに悪いわけではなさそうだ。もっとも、道路事情や自動車保有台数なども勘案して総合的に考えないと、結論を出すのは難しそうではあるが。
とはいえ、最初に書いたように関東から来た自分から見ると脅威とも思える交通規則違反が目に付くのは気のせいなのだろうかと思い、自分のように関東から来た同僚や友達に、「広島に来て、自動車が怖く感じないか?」と聞いてみた。
10人近くに聞いているのだが、ほとんどが「関東とは違うのを感じる」と答えた(これはあくまで主観の問題で、上記の通り決して広島のドライバーの質が悪いという根拠はない)。
そして、こういう話をしていると、ほぼ例外なく、西日本出身の人のこの一言が来る。
愛知県の交通事故による死亡者数が多いのは有名な話だが、それでも人口当たりに直すとそこまで多くはないみたいだ。
こんなことを考えながら通勤していたときに、ふと、「自動車産業に携わる人はたくさんいるのに、ドライバーの質に関わる仕事をする人が少なすぎるのではないか」と考えたことがあった。
自動車メーカーは当然ながら、ディーラーもクルマを売った後にドライバーが起こした事故については保険以外では関与しないだろう。
しかもこれは事故を起こしたときの話であって、交通ルールを守っているか、歩行者を優先して運転しているか、そういったことに、作る側、売る側があまり関与しないというのも変な話だ。
こういうところを何とかできないものか。日本には自動車メーカーがたくさんあって、クルマそのものの品質や性能には徹底的にこだわるのに、ドライバーの質には関与しないという仕組みが、なんとかならないだろうか?
広島には自動車メーカーがある。世界を驚かせた性能のエンジンと、ほかの国産車とは一線を画す洗練されたデザイン。それはいいのだが、ドライバーの質を高くする、そんな自動車づくりを、広島に期待したい。