http://d.hatena.ne.jp/inumash/20160323/p1
ここに書いてあることはその通りで、シラク三原則と寺井校長スピーチは違う。
ところで、シラク三原則などフランス的価値観が日本にあうかというとそれはまた別問題だろう。
フランスの価値観は上記サイトにもある通り。女性の権利は最優先である。仕事をする権利は守られなければならない。子供も3歳から上は幼稚園というか学校(エコールマテルネル)に入るので、就業前と就業後に父親と母親が分担してお迎えすればなんとでもなる。あるいはシッター(ヌヌー)がやる(フランスでは小学生高学年くらいまで、子供一人で家にいることだけでなく外出することも法律違反なので、幼稚園~小学校の送迎が必要)。日本の幼稚園と違って、4時くらいまで面倒を見てくれるし、無料だ。面倒を見るというか授業してるけど。まあ、まずはこれが成立するために週35時間労働制だとか安くてたくさんのアフリカ移民を主体とするベビーシッター(フランス語を話せないこともまれではない)が必要になる。
しかし3歳まではそれもなく、保育園(コクシネル)は競争率が高いしお金もかかる。そのため、子供はほぼヌヌーさんに預けっぱなしである。パリの公園で平日の昼に観察しているところによると、彼女たちヌヌーさん(男女平等・差別禁止が徹底されているはずのフランスで、なぜかヌヌーさんのほとんどはアフリカ系女性だったように思う)は子供たちが遊具で遊ぶのを遠巻きに眺めつつ、みんなで集まってベンチに座ってタバコを吸ったりマックを食べてだべっている。
実際ヌヌーさんに預けるというのはどういうことなのかとフランス人に聞くと、それはやはり不安なことはある、とは言うのである。
しかしそれでも預ける。なぜか?女性が働かないなどというのは考えられないからのようだ。そちらのほうが優先だからのようである。
日本からの赴任家族では、当然ながら(?)奥さんは働いていないことが多い。それを知った時のフランス女性の不思議そうな顔つき、「ずっと家にいるの?へぇ~」という反応を見るに、これは女性の選択の自由を尊重しているように私は思えなかった。日本では子供がいる母親は働かず家で子育てをした方がよいという暗黙の圧力があるのと同じように、フランスでは子供がいても母親は外にいて働いているはずだという暗黙の圧力があるように感じたのである。私はこれは「自由」の名のもとに行われる別の因習的社会であるように感じた。
まあ、それはそれでいいのだ、不思議なことではない。世界のどこかに理想郷があるわけではないのだ。あるのはバランスであり、フランスでは子供が母親とずっと一緒にいられることよりも、母親が仕事をして自己実現を続けることを選んだところ、(因果関係は分からないが)出生率が向上したらしい。社会がどれを選ぶかの話であろう。正解と誤答があるような話ではないと思う。
ドイツ人に、ドイツはどうかと聞いたことがある。ドイツでもやはり女性の労働は権利であり、その程度は日本よりもずっと強い。しかしそれと同じくらい、子供が小さいころは母親は家にいて子供の面倒を見るべきだという社会的意識も色濃く残っているそうだ。それはまた母親の多くもそのようにしたいと思っていることでもある。また、出産後一年以内に仕事を再開しようとすると、あなたそんなことをして子供はかわいそうではないの??という周囲の目があるのだそうだ。ちなみにドイツの出生率は日本と同様に低い。
フランスは経験談だがドイツは伝聞である。出羽守ではあるが、真実を含んでいないとは思わない。日本はどの方向に向かうべきか。フランスの方向に向かうのは不可能であると思っている。