2013-05-25

プログラムを書く機械とそれを生むもの

妻が技術書を持って帰ってきた。

妻はウェブエンジニア、とは名ばかりのなんちゃってエンジニアである

素人の俺が見てもわかるほどのナメた姿勢で、先進的な技術を学ぼうともしないし、仕事を受けるのも積極的だはないようだ。

学生の頃はむしろしっかり者に見えていたから、その変化に最初は戸惑った。

俺が彼女に遅れること一年社会人になり、仕事感覚を身につけていくと、彼女仕事に対する姿勢が気になりだした。

そんな彼女に、俺はこの先生きのこるには〜といったことを何度も言った。

生業としてその職業を選び、携わる以上、情報収集から訓練まで常日頃からことなうべきだと。

でも、その度、喧嘩になった。

妻は、本当は仕事は続けたくない、でも、稼ぐ必要があるからと言った。

話がそこに至るに及び、養えるほど稼ぎのない俺は沈黙した。

遅れて社会に出た俺は去年ようやく彼女年収を超えた程度。養うにはまだかかる。

そして、この話題はいしかタブーとなった。

そんな彼女技術書を持って帰ってきた。

なんとかという人が書いた本の訳本らしい。

サラーと呼ばれる歳に差し掛かった彼女の小さな変化だと思った。

俺は嬉しくなった。いよいよやる気になったんだと思った。

でも違った。聞いたところ、彼女上司に読むよう指示されたのだった。

経緯を聞いてすぐに不安になった。その上司の考え方が危険過ぎた。

その上司曰く、仕事は実戦であり、家での学習が訓練であるという。だから、闘いの準備は家でして来いと。

仕事として捉えた場合果たしてそうだろうか?

まず、オンザジブトレーニングを否定している。

建前ではあるが、仕事トレーニング仕事の中でこそ行なわれるべきだろう。

なにも手取り足取り教えるというものでもないはずだ。定期的にチェックし、アドバイスを与えるだけでいい。

次に、仕事に対する動機付けが人によって異なることを無視している。

妻は稼ぐために働いている。動機はパートタイマーと大差なく、世界を変えたいとか、社会を良くしたいとまでは考えていない。彼女は春と秋の旅行を楽しみにしている。

そして、一番驚いたのは指示内容だ。

曰く、

“この本を読み、学べ(ここまではいい)。それに従い、働け。

本の内容や、私の指示を無視しても構わない。

ただし、上司である私の指示に従わない以上、上司として責任は取らない。“

これはチームをまとめながら、仕事をする人間の言うことだろうか? 俺はこの上司を否定する。

妻の上司は、自らの価値観を強いているに過ぎない。期待しているのは自分のような人間、または自分のように働く機械なのだ

想像するに、上司職人気質の、優れたエンジニアなんだろう。

同じ次元仕事に取り組めない人間が疎ましいのだろう。

妻の姿勢に問題がないとは言わないが、前のめりでないだけでやることはやってるはずだ(なんだかんだで少しずつでも昇給してるし)。

優秀なプレーヤーが優れたマネージャーになるとは限らないと言うが、これがその典型なのではないか想像する。

チームメンバー機械ではない。

協働者として敬い、彼らの仕事に対する動機付けを理解し、その上に教育があるべきだ。そしてその上に実地がある(もちろん理想は、だけれど)。

妻の上司は、それらを否定し、読む本すらも強要し、紋切り型エンジニアを作ろうとしている。

それを騙しすかしするための小狡さも、フォローするためのマインドシップももっていない。

かつて、その上司のチームにいた女性が、方針についていけなくて退職したと聞いた。

上司は、その女性姿勢スキルが足りてなかったと言っていたらしいが、実際は違うだろう。

その女性は、自分人生を選択し、上司機械になることを拒否したにすぎない。

妻には、姿勢について改善すべき点はあるが、それは自主的に行われるべきだと思う。言いはするが強いるものではない。

彼女彼女人生の中で、職業を選び、働く理由があってそこにいる。仕事人生の一部だ。

仕事をするために生きてはいない。

彼女会社が潰れそうでも、堪えて働くのか、さっさと辞めるのかは本人の選択だ。

俺は妻に、転職先を調べておくべきだと言った。

チーム運営で最も悩む点は、多様な人間の背景と目的を可能な限り成果に向けしめ、ミッションを達成することだと思うが、彼女上司機械化することで悩みをないことにしている。そんなところにいるべきではないと。

四月から部下をもつ立場になった俺が、なってはいけない上司像として肝に命じたのは、こんな次第である。.

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