2013-02-04

まおゆうアニメ化されたしVIPSSスレについて考えてみた


といっても例のSSではなく(つーか読んでない)、SSスレッドという媒体についての考察だけども。


まず、個人ブログ小説投稿サイトで発表される「SS」や「ケータイ小説」と、
2chの主にニュー速VIP板に投下される「SSスレッド」は別物である

前者と比べてVIPSSスレは劣る、という論旨ではない。
質がどうこう文章力がどうこうといった比較じゃなくて、
そもそもハナから別の表現媒体だと捉えた方がわかりやすいということだ。
両者の比較映画落語を比べるようなもので、どこかズレている(と思う)。

では、他のネット小説SSスレッドはなにが違うのか。
まとめブログSSスレをいくつか読んでネット小説と比べると、次のような特徴がわかる。

  1. 執筆と投下(=発表)が同時に行われる
  2. 読み手の反応レスも同じスレッド内に逐一書き込まれる
  3. 作品は1レス単位(約30行)で分割され、細切れに投下される
  4. 台本SS」と呼ばれる台詞だけの形態が多く、地の文を使ったSSは少ない
  5. 文章以外の要素(AAや挿し絵、BGMなど)も使える


このうち特に重要なのは2と3だ。
「文章による創作物」を発表する媒体書籍投稿サイトなどいくつもあるが、
作者が書いてるそばから読者の反応が“同じ画面上に”書き込まれる媒体SSスレッドぐらいだろう。
まりSSスレを読む者は、
作者が見せる登場人物の声」と、「読者の反応の声」という、二者の声を同時に聞くことになる。

また、作品自体も他の媒体と違って一度に全文を発表することができない。
2ch掲示板システムには行数と投稿間隔に制限があるからだ。
たとえばニュー速VIP板なら、3~5分おきに30行以内で書き込まなくてはならない。
この「量と時間の制約」が、作品に“間”を与える。

強制される時間的な制約と、その間にも挟まれる読者の声というノイズ
この二つがSSスレッドを仮想上の演劇空間として成り立たせている。

ようするに、VIPSSスレッドは「小説」ではなく「演劇なのだ

ここでなにかライブ映像を思い出してみてほしい。
演劇でもお笑いでもバンド演奏でもなんでもいい。

ライブでは、上演の時間やペースは作り手が決めるものであり、
受け手は同じ立場の観客たちとともに声をあげて反応を返す。
演者はあらかじめ予定していた作品を披露するが、
ときに観客の声に反応して、上演中にアドリブ差し込むこともある。

これは「完成品を一方的に送って、受け手自分のペースで楽しむ媒体
たとえば小説文庫本CD音源映画DVDなどとは全く違う。
(記事のはじめで通常の「SS」を映画に、「SSスレッド」を落語にそれぞれたとえたのもこの違いからだ)

まりSSが投下されるスレッド仮想的な“ライブハウス”として機能するのだ。
となると、まとめサイトはそれを事後的・俯瞰的に楽しむ“公演DVD”に当たるだろう。
仮に他の媒体で発表される小説作品を映画とたとえるなら、
読者との双方向性共時性が備わったSSスレッドは紛れもなく演劇である
(ちなみに、このようなスレッドという媒体演劇性は「ゲーセン少女」などの擬似体験談スレでも発生する)

残った特徴4、5もまた、基本的にはSSスレッド演劇性に由来するものである
VIPPERは3行以上読めない」といった言葉があるように、2chで長文は避けられる。
それはSSについても同じで、空行の少ない長文はまず読まれない。
だがSSスレについていうなら、長文が読まれない理由もスレッド舞台に似ているからだと思っている。

SSスレッド一期一会の軽いもので、イメージとしては道ばたの大道芸を見るようなものだ。
では、舞台上にだれ一人立たず、長ったるいナレーションけが延々と続くさまを想像してほしい。
話のつかみから無駄風景描写を重ねる語り方は、スレッドという舞台上ではこのように映るのだ。
これがSSスレ地の文が避けられる理由だと考えている。


そんなわけでワナビだったりときどきSS書き手だったりする観点から私感をまとめてみた。
まおゆうはよく分からないけど、いい機会だと思ったので。わかりづらくてすまん。
媒体演劇性はSSスレだけでなく、擬似体験談スレ解釈に関しても応用できる気がする。
特徴4や5で触れたSSスレッド特有の演出法(と、できれば具体例)については、気が向いたらそのうち。

  • ──書いている端からそういうことが起きていくんですよね。  同じ掲示板に、作品の投稿と感想が入り混じる状況ですからね。大道芸の領域に近いと思います。 橙乃ままれ ‏@mar...

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