2023-10-02

anond:20230909051354

元増田ではないがラグビーワールドカップ予選プールC、フィジーvsジョージアを見た。

どこにぶら下げるか迷ったがここで。

個人的に現時点で今大会ベストゲーム

(予選プールCの状況)

試合感想ももちろんだけど、この試合プールCの状況を知っておけばより楽しめる。

プールCの他の国はウェールズオーストラリアポルトガル

事前の評価の高かった順からオーストラリアウェールズフィジージョージアポルトガルだ。

ちなみにとあるブックメーカーの、プールCの一位通過予想オッズオーストラリア(1.4倍)、ウェールズ(3.75倍)、フィジー(8.5倍)、ジョージア(67倍)、ポルトガル501倍)となっていた。

だがフタを開けてみると、ウェールズが3連勝で決勝当確オーストラリアウェールズフィジーに連敗で予選敗退の危機混沌とした情勢だ。

ジョージアポルトガル引き分けと力を出し切れていない。

そんな中でフィジージョージア試合があった。

フィジーが勝てば2位通過濃厚でジョージア予選落ち確定。ジョージアが勝てばオーストラリアが息を吹き替えし、この3ヵ国で最後椅子を争うことになる。

元々世代交代に失敗した(と見なされて)火中の栗を拾いにいく形となった、元日本代表ヘッドコーチであるエディ(現オーストラリアヘッドコーチ)の心境はいかほどであろうか。

フィジージョージアの状況)

もともと日本と同格と目されていた両チームだが試合前は圧倒的にフィジー優勢と見られていたようだ。とあるブックメーカーオッズフィジー(1.06倍)、ジョージア(14.85)倍となっていた。ジョージア勝率は1割に満たない、と評価されていたのだろう。

フィジー

トンガサモアと並ぶアイランダー南太平洋島国)の一角だが、チームカラーは全く違う。

トンガサモアが圧倒的なフィジカルを前面に押し出しラグビーをするのに対し、フィジーの特徴は自由奔放な走りにある。

前に横に時には後ろにも走り、相手をかわし、倒れても柔らかいオフロードパスをどんどん繋いでいく。

スペースを自在に走り回るラグビーで7人制では世界に君臨しており、予測不能で単純に見ていて楽しいラグビーをするので大好きなチームだ。

弱点は規律・統率。海外プレイする選手が多く、ワールドカップの時くらいしかベストメンバーが組めない都合上どうしても連携が疎かになっていた。ただ、近年はフィジー代表クローンチーム「フィジアン・ドゥルア」をスーパーラグビーに送り込み、効果もでているようだ。

大会でもウェールズと接戦を繰り広げ、オーストラリアには圧勝し、評価を上げ続けている。

ジョージア

しばらく前まではグルジアと呼ばれていた旧ソ連圏の国。レスリング、重量上げ、柔道なども盛んで日本力士を送り込む(栃ノ心など)など力勝負なら負けない国だ。

ラグビーでもそのスタイルはパワーで押す、とにかく押す。スクラムで押し、モールで押し、個人でも押す。ボールを動かし走られて負けるのは仕方ないにしてもパワーだけでは負けないラグビーをするチームだった。

しかし、2019ワールドカップとき増田解説にもあるように、そこから脚も使う、パスも使うチームへの脱皮を図っているのがジョージアだ。

昨年ウェールズを破るなど一定の評価を得ていたが、大会では、オーストラリア敗れたのはさておき、プール最弱と目されていたポルトガル引き分けるなどやや評価を落としている。

試合内容)

前半

さて本題の試合内容に入る。

ジョージアが全く予想していなかった戦術を採った。

NHK解説者も驚いていたが、ジョージアがパワー勝負を控えめに、パス繋ぎ、走ってフィジーの穴を突いていく。

解説や我々ファンも驚いたがそれ以上に驚いたのがおそらくフィジー選手たち。

事前にそういった想定をしていなかったのであろう、重量級の前進を止めるために構えていたフィジーは細かくパスを回すジョージアに全く対応できていなかった。

守備の隙間をつかれて前進される、フィジー選手は当然背走しなければならない、だがジョージアの弾出しが早くそれを遅らせようとしてオフサイドポジションからプレーをしてしまう、と悪循環に陥ってしまっていた(ジョージアにすれば計画通り)。

結果、ジョージアトライを取ることは出来なかった(※)ものの、ペナルティを犯したフィジーに対して着実にペナルティーゴールを決めて加点する。

ジョージア守備も素晴らしかった。ウェールズを苦しめオーストラリアを引き裂いたフィジーのランやパスを完全に封じ込めた。

特にリスクを取って高めにタックルし、腕とボールを抑え込むことでフィジー得意とするオフロードパスを出すことさえ許さなかったのは圧巻で、ジョージア選手たちの集中力と一歩目の出足の速さを物語っていた。

動揺のせいかフィジーラインアウトも冴えない。まぁ圧勝したオーストラリア戦でも四苦八苦していたので単純に苦手なのかもしれない。

前半フィジー0-9ジョージア

(※)前半、ジョージアトライを決めたかに思われたがスローフォワードパスを前に投げる反則)との判定であった。

NHK解説者はスローフォワードではないと考えたようで「この判定は波紋を呼びそうです」とまで言った。

真横から映像でなかったので私にはこれがスローフォワードだったのかどうかはわからないが、トライに直結するシーンなのでTMOビデオ判定)くらいはした方がよかったと思う。

ちなみにこの後、解説者は「ラグビーは前に走っているので、真横に投げても走って慣性で前に流れる分はスローフォワードではない(だから今回はスローフォワードではない)」と解説していたが、これは誤りではないだろうか。

私の感覚だと次のような感じだ。

・確かに多少前に流れる程度では流れを重視して細かく反則をとらないことが多い

特にスピード得点を重視するスーパーラグビーではトライシーンを含めて反則を取っていない

・ただし、原則としては反則で、特にワールドカップトライシーンではかなり厳格に運用されている

まぁ経験者ではなく、テレビで見、たまにスタジアムにいく程度のファン目線しかないので有識者解説を求む。

後半

ジョージア戦術ははっきりした。だが後半もこれを続けるのか、それとも往年のジョージアに戻るのか。そもそも前半から全力と思われるが体力は続くのか。

予想外の展開に動揺したと思われるフィジーはこれまでであればクールダウンは難しい。果たして落ち着けるのか。後半がスタートした。

ジョージア戦術は変わらない。もちろんFWも使う、スクラムでも押すがしっかりパスも回し走りもする。この辺で気づいたがジョージアは極めてオーソドックスラグビーを高レベルで実現しているようだ。

フィジー戦術は変えない。だがハーフタイムを挟み落ち着けたのか一つ一つのプレーの精度が上がってきた。

ジョージアが走ってくることを前提に守備をするのでなかなかジョージア前進ができない。

フィジー攻撃の際は、タックルを受けるときに芯を外し腕を自由にすることでオフロードパスが決まり始める。

こうなると自力で上回るチームに追われるチームは怖い。

後半ずっと攻められ続け結局2トライ2ゴール1ペナルティゴールを許し

フィジー17-9ジョージア

このまま押し切られるかと思ったがまだまだ試合は終わらない。

ジョージアの体力が落ちる前にフィジーの出足が若干鈍くなってきた。

負ければ予選敗退がするジョージア、まだまだワールドカップは終わらないと気合の入り方が尋常ではない

ペナルティゴールで3点を返し、5点差としてラストプレイとなった。

こうなると観客も逆転を期待する。元々前評判が低い方に味方することが多いラグビーの観客たち、ここぞとばかりに大声援でジョージアの後押しをする。

やはりパワー勝負ではなく走るジョージア。この直前にイエローカードで14人となったフィジーディフェンスの穴を突き前にでる。かなり前進したところでフィジーに捕まりそうになる。普通なら一度倒れて仕切り直しにするところ、ジョージアはなんと前方へキックボールを転がした。フィジーの後方には誰もおらず、フィジージョージア双方の競争で勝った方が勝利となる。

あと一歩、二歩程度の差でフィジーが追い付きボールを蹴り出してノーサイド、結果は

フィジー17-12ジョージア

終わったあと、双方の選手たちがグラウンドに座り込んでしまった。激闘を物語るシーンだ。

まとめ

素晴らしい試合を見たので吐き出したくて長文を書いてしまった。

結果はフィジーが予選通過をほぼ確定させ、ジョージアとその余波でオーストラリア予選落ちする結果となった。

この試合ジョージア可能性も、フィジーの成長も十分に感じることができた。伝統国以外の活躍は今後のラグビー未来光明ともなる。今後の両国に期待したい。

記事への反応 -
  • みなさんお久しぶりです。4年ぶりですね、レビュー増田です。 はじめに、いま台風が来ていますので、激しい雨風がある地域に住んでいる方は、どうかお気をつけてください。 みなさ...

    • 元増田ではないがラグビーワールドカップ予選プールC、フィジーvsジョージアを見た。 どこにぶら下げるか迷ったがここで。 個人的に現時点で今大会ベストゲーム。 (予選プールCの...

      • レビューをポストしてくれて嬉しいです! 僕もこの試合みて声あげてしまった・・・ 隠れ推しがジョージアなんですよ。 ちょい最近バタバタしてて、試合も追いきれず・・・とはいえ...

      • ラグビーワールドカップ、日本vsアルゼンチン戦、良い試合だった。 贔屓目なしに、見ることが出来た中では今大会ここまででベストゲーム。 試合経過について細かい感想言い始めたら...

      • 元増田ではないが(https://anond.hatelabo.jp/20231009094539)で「時間があれば戦評を書きたい」と書いたフィジーvsポルトガルの感想を。 日本vsアルゼンチンが今大会ベストゲームと思っていた...

    • 元増田ではないが、ラグビーワールドカップ、イングランドvsアルゼンチンを見た。元増田の記事も楽しみにしている。 実力からすると日本を圧倒していると思われるこの2チームだが、...

      • ほんとにそうだと思います。 フランカーの位置でスクラムに入ったトゥイランギが本職がセンターと思えないくらいしっかり押してスクラムを安定させていたのは驚きましたw

    • 9月9日に開催国フランスとニュージーランドの対戦で幕を開けた2023年ラグビーワールドカップ。 今日が日本代表の初戦となる。 日本が所属しているプールDには、もちろん世界で強豪と...

      • イエローが3枚も出る荒れたゲームだったけどボーナスポイント入りの勝利で良かった。初回のにもリプをつけたのでせっかくだから雑感。 ○チリは勝てるとしたら日本またはサモアと...

        • そうか、ディフェンスがかなり修正できてる印象だったけど、それはオープンだけで、ブラインドサイドまではまだ手が回ってないかもしれないですね・・・ 各国のスカウトも当然今夜...

      • ラグビーなのにプールでやるんですか? 日本が所属しているプールD

      • W杯開幕の2日目、9月10日のチリ戦で日本代表は初戦を飾り、混戦が予想されるプールDの暫定トップに立った。 4年ぶりのW杯、みんなは楽しめただろうか。 おはようございます、こんにち...

        • さっきもいったとおり、中央付近で少しの侵入も許したくない。 ではどうするかといったら、ボールは1つしかないのだから、こっちに来た時に離さないで、相手の機会と時間を潰し...

          • これ、全然違うと思う。 確かにエディジャパンは「弱者の戦略」として徹底的なボールキープを掲げてたけど、 南ア戦ではむしろ積極的にフィールドキックをしていた。

        • ラグビーってルールが難しいからよくわからんわ    ノットリリースザボールとか倒れこみとかの反則って正常プレーと区別つかない ラインアウトでの担ぎ上げが反則じゃなくなった...

          • 野球だって、みんな、ルールはよくわかってないだろ。 盛り上がりどころさえわかっていれば、細かいことはいいんだよ。

        • おはようございます、こんにちは、こんばんは。 レビュー増田です。 みんな4年ぶりのW杯を楽しんでくれているだろうか。 見ているだけでエキサイティングなラグビーだが、このスポ...

          • ウェールズは自陣ゴール前でネガティブな反則やバレない反則しすぎ

          • 残暑もようやくその勢いを失いつつある9月半ばの初秋、月曜未明のキックオフは普通だったら観戦するのを躊躇する時間帯だが、幸いにも日本は今日、3連休の最終日だ。 おはようござ...

            • 正直勝てた試合だった。 それもイングランドと真っ向から組み合って。 日本代表というとハイパント処理が苦手でキックの蹴り合いというイメージが強かったがこの戦術でここまで戦...

              • 戦術には驚きましたよね、イングランドの戦術は、まあ信頼のメニューって感じだったけど、日本が真っ向で蹴るのは予想外だった。 僕はXのタイムラインとか、ヤフコメとか見てたんで...

            • クリリン(マシレワ)離脱で悟空(山中)遅ればせながらやってきて草 さすがスーパースター

              • 山中、追加で招集かかりましたね。 なんか巡り合わせがある人なんでしょうね。 今回、レメキがすごく良かったから、レメキが15の1本目の繰り上がりになるのか、あくまでフィニッシャ...

            • アイルランドvs南アフリカを見た。 世界ランキング1位と2位、ともに優勝候補同士の戦いとなったが期待どおりの熱戦だった。 詳しい解説は元増田に任せるとして感想を。 ○双方ともに...

            • 5チームの総当たりを行うラグビーワールドカップのグループリーグは長い。 すでに9月末、日本の空にはすっかり秋の涼しい空気が流れてきた。 おはようございます、こんにちは、こん...

              • 良い試合だった。 攻撃面はほぼプラン通りのことができたんじゃないだろうか。 けどやはりチリ戦からの課題であるディフェンスはサモア相手には分かりやすく出てくる。 一人減った...

                • イタリアの勝利もあるぞと期待して観ましたが、意外な結果でした。 あそこまでの力の差は両国にはないはずですが、一度調子に乗ったABsを止めるのは難しいですね… 拮抗していた序盤...

                • アルゼンチンはサモアに比べて、キック受けた後のカウンターの選択肢が豊富なんですよね。 蹴ってよし、走って身体を当ててよし。 身体の当て方も、ただ正面からドーンとくるんでな...

                • 貴重な考察、いつもありがとうございます。 ラグビーは2019年にニワカファンになってフランス大会も楽しみです

              • Unbrave call あの選択がそのような名前で後世に残らないといいが。 後半最後の日本のスコアになったPG選択だ。4トライでのBPは取れず、おそらくチリに大勝するであろうアルゼンチンと...

              • ラグビーW杯2023 フランス大会が始まって早1ヶ月。 秋も深い10月の第1週に、日本は予選突破をかけて南米の強豪アルゼンチンと対戦する。 おはようございます、こんにちは、こん...

                • ネトウヨブクマカ「ま…負けたけどいい試合だったから…😥」 🤭ぷぷぷ

                • 結果に本気で思う怒ったり悔しがったりしてるファンって少ないのかな。 これだけは言える。 この4年間の強化は失敗だった。 もちろんコロナ禍は大きかった。特に欧州からも南半球か...

                  • この4年間の強化が見ていたものからしてもしっくりくるものではなかったのは確かですよね。 それはジェイミーや選手たちの問題と言うより、リーグの立て付けや代表スケジュールに...

                    • おっしゃることはその通りですね。 コロナとその後の混乱は日本にとってキツかった。   大学ラグビーについてもそうですね。 個人的には、トップ選手は高卒でどんどん海外へ行って...

                • これが最後のW杯になるかもしれないリーチ・マイケルが、日本の最終試合後に代表ジャージのまま夜の街に出て、カフェでファンとの交流を楽しんだ夜から1週間。 2023年大会は、フラン...

        • 前半終了 不用意なミス(ノッコン、ラインオフサイド)はやめたい レメキはいい、キックが器用 スクラムもいい(この1列後半も長く出さざるを得ないか) スチュワードの「前」に敢...

        • あー悔しい悔しい あのイージーミスがなければ あの偶然のバウンドがこちらに入っていれば で勝てたかもしれない試合 少なくともボーナスポイントをとれた試合 ただ、要所でしっか...

          • そうなんですよ、これ日程の話をすると、日本は中10日なんですけど、サモアは来週土曜またやって、次が金曜なんで、中5日しかないんですよね。 あんま期待しすぎるのアレなんですけ...

      • やはりこうなってきた。 TMOの“発言権”が増すことで”映像上目立つ“危険なプレーが遡ってペナライズされるケースが激増し、 結果として選手たちがファウルプレーを受けたというア...

    • ラグビーワールドカップ、今更ながらにウェールズvsフィジーを見た。 いまだにフィジアンマジック健在で非常に面白い試合だったので解説を希望したい プールDではないけどね

      • 詳しそうだから聞くけど日本ってどう?ベスト8以上いけそうなの?

        • 下馬評からするとかなり苦しい。 プールDに入っているのはアルゼンチン(6位)、イングランド(8位)、サモア(12位)、日本(14位)、チリ(22位)。 うち2チームが決勝トーナメント...

      • レビュー増田です。 すごい試合だったともっぱら評判ですよね。 なかなか時間が取れず、見られていない試合の一つなんですけど、試合後のスタッツをみて「なんだこれ?」という驚き...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん