2024-06-19

増田独身で、モテず、飢えていた

常にムラムラしながらも相手が居らず、悶々としてた日々を過ごしていた。

ある日、残業会社を出るのが遅くなり、増田は疲れ切っていた。

今日コンビニ弁当だな…と思いながら歩いていると前方に見慣れないものが目に入る。

占い屋のような老婆が椅子に座り、じっと構えていたのだ。

周りには増田と老婆以外には誰も居ない。増田はそのまま通り過ぎようとしたが、ちょっとした気まぐれで椅子に座ると老婆に話しかけた。

「おばあさんは占い師かなにか?」

老婆は頷いた。「そのようなもんです」と答えた。

次に「女子とお〇○○したいと、そう思っておるね?」と言われ、増田はギョッとした。

しかし実際、増田はそう思っていたので周りを見て誰もいないことを確認すると頷いた。

「どのよな女子とでもお〇○○できる言葉、知りだいか?」

増田は「は?」と思ったが老婆が嘘をついているようにも見えない。

増田は首肯し、老婆は手を出して3万を要求した。

増田は支払った。老婆はある言葉を耳打ちし、そんなことで?と増田は驚いた。

老婆は顔を戻すとどっしり頷き、ただし注意があると告げた。

一つは、その言葉相手女子に聞かせれば必ず増田はお〇○○ができる。

これは催眠のようなもので一度やらないと催眠は解除されず、増田を求め続けてくるので気を付けること。

もう一つは、この言葉をつかえるのは増田のみ、ということだった。

なんだ、それだけのことかと増田は拍子抜けし、その場を後にした。

翌日になって増田は昨夜のことを思い返すと後悔した。

どうしてあんな婆に三万も払ってしまったのか?とんでもない浪費だ。

金をドブに捨てたことを後悔しながら、それでも一応試してみるかと増田会社で気になっている女の子を見つけると定時前に話しかけ、最後にポツンと例の言葉をつぶやいた。

すると彼女の目がとろんとし、増田の片腕に抱き着いてきた。

これはまさか…動揺しながらも増田食事に誘うと彼女は二つ返事でオーケーし、その後のホテルにも難なく付いて来た。

行為を終えると増田の中でまさか…といった思いが交錯し、翌日別の女性に声をかけ、翌々日にも別の女性に声をかけてみた。

結果はすべて成功だった。増田が例の言葉を囁くとどの女性も目をとろんとさせ、そして女性の方から増田のことを求めてくるのだった。

増田有頂天になった。今までモテない人生を歩んできた反動から増田は毎夜歩きまわり、気に入った女の子を見つけると声をかけ、例の言葉を囁き、お〇○○した。

成果は仕事にも表れた。自信をつけた増田はこれまでと打って変わって自主的仕事に取り掛かり、自ら企画を立ち上げてはいくつも成功させ、社内でも一目置かれるようになった。

ある日、同僚たちとの飲み会の席。最近増田活躍話題上り、いったいどうしたんだ?と同僚に尋ねられた増田は「最近モテてね」と自慢げに話した。

それからこれまでの態度が嘘のように自分から女性の遍歴を喋り、お〇○○について雄弁に語った。

まりの変貌ぶりに驚きながらもどうやら話していることは事実らしいぞと同僚たちは思い、急にモテるようになった秘訣を聞き出そうと増田に酒を勧めた。

増田最初、「それは秘密」の一点張りで過ごしていたが酒が進むにつれて口が緩くなり、とうとう例の言葉のことを漏らしてしまった。

しかしそれはありていな言葉で別段おかしなことはなく、そんな言葉一つでモテるようになるなら苦労はしないと同僚たちは笑い飛ばすと同時に落胆し、飲み会はお開きになった。

翌日。休日だったため増田は昼まで眠り、朝起きると頭が痛い。昨日は飲み過ぎたな。そう思いながらリビングの方へ行こうとすると違和感を覚えた。

ドンドンドンドン!と何やら叩く音がする。玄関の方からだ。それからすぐにインターフォン連続で押され、スマホもずっとヴーヴー言っている。

何事だ…?そういえば昨日の飲み会最後どうなったかまり覚えていない……。

恐くなった増田は同僚に電話をかけ、昨日の飲み会顛末を尋ねた。

同僚は、増田が酔った末に「女に〇〇〇と言えば誰とでもお〇○○できるぞ」と得意げに語ったことを告げ、話はそれで終わった。

「…それだけか?」と増田が聞き、「ああ、それだけだ」と同僚は言った。

かに例の言葉他人に漏らすのは良くなかったかもしれない。

だがそれが今の状況とどう関係する?

増田が未だ動揺していると「そういえば…」と同僚がスマホの向こうから喋りはじめ、「そのとき増田の様子が面白くて、実はその様子をYoutubeにアップしたんだよ」と笑いながら言う。

……はっ?

増田はすぐにYoutubeを開き、すると今話題になっている動画の一つとして増田の姿があった。再生すると昨日の居酒屋、べろんべろんによっている自分が同僚からインタビューを受けており、「女に〇〇〇と言えば誰とでもお〇○○できるぞ」そう得意げな顔をして語っていた。

再生数はもうすぐ10万に達しようとしていた。

増田は老婆の忠告をふと思い出す。

”これは催眠のようなもので一度やらないと催眠は解除されず、増田を求め続けてくるので気を付けること”

ドンドンドン!と玄関の扉を叩く音は激しさを増していく。

やまびこのような響く足音が聞こえ始め、増田スマホを握りしめたまま、家の中で立ち尽くしていた。

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