この2人、コトの重大さに目を瞑るなら、これから起こるであろうことについてはよく似ている。鏡写しと言うべきか。
人が死んでるのにこんなしょうもない話と比べるなというのは至極もっともであるが、一増田の駄文としてどうか見逃して欲しい。
飯塚幸三は上級国民である。地位、名誉、財産を積み上げに積み上げ、勝ち組中の勝ち組として君臨し悠々自適の余生を送っていた。
ところがある日、車を暴走させて母子二人を殺戮するという大罪を犯してしまう。これに対して彼は上級パワーと当局の忖度をふんだんに用いて償うべき罪を免れようとし、それに不満を持つ一般国民によって激しく炎上した。
まだまだ事態は進行中であるが、ここまでの流れからすると不逮捕・不起訴・無罪放免となる公算は高まっており、一般国民の炎上も虚しく最後には上級が勝つという胸糞ストーリーで終わりそうな展開である。
夢見りあむはクズである。乳以外は何も持たず、積み上げたストーリーもないポッと出の新キャラ。アイドルデビューで一発逆転に賭けるしかない、負け組中の負け組である。
そんな夢見りあむが、大罪を犯そうとしている。全てのアイドルとプロデューサーの憧れ、シンデレラガールを、何の歴史も、何の物語も、何の実績もないクズが横から掻っ攫うという大罪である。
現状、これが近い将来に実現してしまう可能性は決して低くない。本当に起きてしまったらどうなるのか。
もちろん直後には大炎上が起こるだろう。古参プロデューサーの怨嗟と嫉妬が溢れかえり、それを見世物として嘲笑する野次馬が集まるだろう。ノリで票を投じたものは後悔を苛み、あるいは勝ち馬に乗ろうと結果を正当化するだろう。これ以上の混乱を望まない者たちは、内心で歯軋りしながら、薄っぺらなおめでとうの言葉を投げかけるだろう。そして選挙に疲れ果て、結果に呆れ果てた者たちは静かに去っていくだろう。
まあ、ソシャゲにはよくある典型的な炎上である。激しく盛り上がるのは間違いないが、長続きもしないだろう。プロデューサーたちは忘れっぽいのだ。今回は夢見りあむを含めてたくさんのキャラに新規ボイスが付く可能性が高いため、興味は自ずとそちらに流れていくことだろう。
声をもらい、特別なカードをもらい、歌をもらい、コミュをもらい、プロデューサーや他のアイドルたちとの物語をもらうのである。
夢見りあむの躍進は、運営にとっては紛れもなく、長く中断していた新キャラ追加を再開した成果そのものだ。シンデレラガールとしての特典が終わった後も、夢見りあむは評価され、優遇され、中心キャラの一人として厚く育成されるだろう。
罪は償われないのだ。
夢見りあむが壊したシンデレラガールズの世界は、償われて戻るどころか、アイス・ナインが投げ込まれた海のごとく完全に別のものに変わってしまい、永遠に元には戻らない。
その責任は、誰も取らないのだ。
怒りをぶちまけても、拳を振り上げても、結果は変わらない。飯塚幸三はこれからも優雅に暮らし、夢見りあむは作り変えられたシンデレラの世界で勝ち組となる。
飯塚幸三と夢見りあむの周囲の人間、利害を共有する人間にとって、それは楽園である。
飯塚の楽園は忖度で作られた選ばれし者の楽園、夢見りあむの楽園は、壊れる前の世界に愛着のない火事場泥棒と勝ち馬乗りの楽園、作られ方は全く違う。
だが、出来上がったものは驚くほど似ているのだ。どちらも罪を負う責務を投げ捨てることで生まれた楽園である。そして、壊された母子の未来、壊されたシンデレラの世界を愛し、惜しみ、憐れむ人々の怒りでは、どちらの楽園も決して壊すことは出来ないという冷徹な現実である。
楽園は壊せない。