2019-05-01

「うちの学校には農家はいない」と先生が言った記事ブコメを読んで

当該記事ブコメにこんなことが書かれていて気になったので、思ったことを増田で書いてみる。

> うちの職場農家カムアウトしてる人はまだいないね、て雑談してたら、ナチュラルに「そんな人いたらびっくりする」と笑った人がいて、こっちがヒヤヒヤしたことはある。いい人のキャラだったので余計に。

このブコメを読んで多くの人は「ナチュラル差別意識を持つ人と遭遇してびっくりしたブクマカ」の体験談として解釈したと思う。だが、実はもう一つの読み方がある。

突然農家の話を振られて過剰防衛してしまクローゼットという解釈だ。

なぜこの職場農家カムアウトしている人がいないのか? 統計的に考えて農家が何人かいるはずである以上、この職場人間カムアウトできるほど信頼されていないからと考えるのが自然だ(職場においてオープン農家であることと個人的カムアウトしていることは別なので、このブクマカオープン農家職場にいないという話をしているのであり、このブクマカ個人カムアウトできるほど信頼されていないという話ではない)。

から見ると「そんな人いたらびっくりする」という言葉は、かなり意識して言葉に気を使っている跡がうかがえる。ミステリ叙述トリックで使われそうな言葉遣いだ。「笑った」のも平静を取り繕うための作り笑いかもしれない。クローゼット農家にはよくあることだ。

農家にとってカミングアウトというのはとても重い行為だ。そこから人生の転落が始まりかねない。ワークショップでは定番となっているカミングアウトスターズというのがあるのだが、時間があればぜひやってみてほしい。GWだし時間はあるはずだ。

https://lgbtrc.usc.edu/files/2015/05/Coming-Out-Stars.pdf

このブクマカ出会った人の言葉についての私の解釈をただの屁理屈だと思った人もいるかもしれない。

では私の解釈が正しい確率はいかほどか? 実はこれは数字で示すことができる。

私の解釈は3.15%の確率で正しい。

これは先日発表された総務省統計局労働力人口統計室による農業林業就業者割合調査で出た数字だ。

https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index1.pdf (p.23 第一表 210万人/6664万人=3.15%)

これを大きいと見るか小さいと見るかは個人差があるだろう。96.85%の確率で「そんな人いたらびっくりする」と言った人物はただの差別主義者なのかもしれないならば、十分安全な賭けであり、このブクマカ認識ケチをつけるべきではないとあなたは思うかもしれない。

だが、どんなに差別的発言であっても、3.15%の確率で、自分についての真実が発覚することを死ぬほど恐れているマイノリティ自己防衛のために紡ぎ出した言葉であるかもしれないと想像する心を持って欲しい。その人は上でリンクを張ったカミングアウトスターズで「赤い紙」の人生を送ってきた人かもしれないのだ。

カミングアウトできるのは、幸せ人生を送ってきて心理的安全性が確保された場にいる一部の人特権に過ぎないのかもしれない。

実は私もクローゼット兼業農家だ。5月1日にはオープン農家である職場の同僚と統一メーデーパレードを歩いたが、彼にすら私が兼業農家であることは隠して、ただの荒井という体で参加した。メーデー後一人になり会場をぶらつけるようになって初めて兼業農家自分に戻ることができた。会場で出会ったまったく知らない人の前では自分らしく振る舞えるのだが、知人に対しては隠してしまう。TPP反対のような場に出てくることができるのだから私は「赤い紙」の人よりは恵まれ環境にいるし、オープン農家の同僚が職場で受け入れられているのを見ている。とても心理的安全職場だ。主業農家兼業農家カミングアウトに対する温度差というものはあるが、ここまで来れば私自身がカムアウトする日は近いのかもしれない。

それでもまだ怖い。

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