客と付き合うとか、ないわー。
デリヘル嬢の先輩と雑談していると、何かのきっかけで、客との交際の話になった。
その後、いつのまにか、先輩は、お店に顔を見せなくなった。
給料のことでオーナーと衝突したとか、男性従業員と付き合い始めて辞めさせられたとか、色んな噂が流れたが、真相は分からないままだった。
願わくば、何が真相だろうと、幸運(ラック)に満ちた人生を送ってほしい。
私がそのお客さんに初めて会ったのは、先輩がいなくなった頃のことだった。
口ヒゲがよく似合う、爽やかで優しい顔。
デリヘルを利用するのは初めてらしく、とても緊張していた。
多くの他のお客さんと同じく、私よりは年上だったけど、不安でぎこちない様子は、どこか可愛くもあった。
いつも以上に気を使って、サービスをした。
これは、オーナーの受け売りだけど、デリヘル嬢の仕事は、将棋に似ている。
攻めるべき時があれば、受けに徹するべき時もある。
結果も大切だが、そこに至るプロセスや相手へのリスペクトも重要である。
私は、将棋に疎いので、オーナーの話はよく分からないけど、そんな感じだ。
そのお客さんとは、良い「対局」ができたと思う。
お客さんは、比較的早く、たっした。
どうやら、バックを気に入ってもらえたらしい。
お客さんは、それ以来、定期的に私を呼んでくれるようになった。
モノ扱いされることも多いけれど、そのお客さんは、そんなことは絶対しなかった。
いつだって、私のことを褒めてくれて、私の話をじっくりと聞いてくれる。
聞き上手なので、ついつい色んな話をしてしまう。
くさらず、地道に、自営業の店を自転車操業で切り盛りしていたお母さんのこと。
つやめいた近所のお姉さんに憧れて、目を輝かせていた幼い頃のこと。
手っ取り早く、いじめや当てこすりを避けようと、クラスメイトと距離を置きがちだった中高時代。
リア充の友達の、下半身事情が派手なのに憧れ、空回りしていた大学時代。
ドキドキしながらお店に体験入店して、いつのまにか擦れてしまった、近頃のこと。
お客さんの話も、たくさん聞いた。
そして、コイの話。
いつしか、私は、そのお客さんに会うのが楽しみになっていった。
プライベートでも連絡を取りたかったけれど、連絡先の交換はお店のルール違反だ。
私は、呼んでもらえるのをただ待つことしかできなかった。
首を長くして待ってるのが私の方なのは、なんだか普通とは正反対で、不思議な気がした。
そんな日常がずっと続けば良かったのだが、そうもいかなかった。
あるトラブルで、私は、お店を辞めることになったのだ。
例のお客さんに会うのはこれが最後になるだろうという日。
お店を辞めることを、お客さんに伝えた。
みるみる悲しそうな顔になっていった。
そんな顔を見たのは初めてだった。
その瞳が潤んでいるのを見ていると、私まで悲しくなってしまう。
これまでの色々な思い出が、頭をよぎった。
このお客さんと、もう二度と会えないなんて……。
前日までは、覚悟を決めていたはずなのに、顔を見ると、心が揺らいだ。
私は、つい、こう言ってしまった。
連絡先、交換しようよ、と。
ありがとう、と言いながら泣きじゃくるお客さんを見て、胸が締め付けられるような感じがした。
デリヘル嬢が、「飛車と竜王」に勤める自動車で、客がドラゴンの場合はどうか?
私はまだ、この問いに対して、答えることができない。
口ヒゲって
ごめんなさい。なんか意味が分からなかった
実は書いてたのはお客さんのおっさんだった、というオチ
連載モノみたいなもんだからなー
こういうのね、勉強になる 地味に気になってたんだよ 性産業の女性は、もし客を好きになってしまったらどうするんだろうって
デリヘル嬢の友達、歴代の彼氏はお店の元お客さんだったわ。 細かいこと気にしない気にしない。