初めて同じクラスになって、私は38番で彼女が39番。席が前後だったけど彼女は40番の子とは中学からの友達らしく、さらに二人ともアイドル好きで、ずっと喋っている。二人とは会えば挨拶するしクラスメイトとして喋りはするけれど、基本的には40番ちゃんのキレのあるトークと彼女の少しゆるいツッコミを聞き耳立ててこっそり楽しんでいた。
クラスでの立ち位置としては、私は中心とは離れていて、彼女達は中心じゃないけど中心の子と仲良し、という感じ。
1学期の中間試験が終わるとくじ引きで席替えが行われて、ことごとく彼女とは近い席にはならなかった。テスト期間だけ前後になれた。さらに体育は番号順だから近くでまた二人のおしゃべりが聞けたり、グループが一緒になったりした。苦手科目だけど楽しみだった。彼女はスポーツは基本的に上手だけれど、身体が硬くて柔軟の時に全然届かない足に向かって苦しそうに手を伸ばしているのがかわいかった。
高3になって、また38番39番40番は同じ並びとなった。番号順で座った時に隣になった33番の子は高1の時にも隣で喋りやすい。さらにアイドル好きで後ろの二人とすぐに打ち解けていた。アイドルの話題の時は入れないけど、何気ない会話には他の席の近い子も含めて、混ざったりしていた。去年よりも距離が縮まって「ただのクラスメイト」から「それなりに喋るクラスメイト」ぐらいにはなった。煙たがられてはいなかったはず。
文化祭でクラス対抗のダンス大会があって、私のクラスはウェディングがテーマでみんなでそれっぽい衣装を着た。大会が終わってわいわい自由にと写真撮影。勇気を出して彼女に一緒に撮ってもらうようお願いした。彼女は二つ返事でOKしてくれて、彼女の友達の子に頼んで私のスマホでツーショット。その子に「LGBTの人達のゴールインみたい」と言われみんなで笑ったけれど、ちょっと意識してしまった。その後ラインでクラスのグループから友達追加して写真を送る。彼女との初トークは少し雑談もできて、もっと仲良くなりたい!と言ったら、私も!と返してくれた。話の流れ上そういう返事がくるのは当たり前だけれど、それでも嬉しくなる。
3学期になると自由登校で半分以上は学校に来なくなるけれど、私も彼女も自習で来ていて毎日挨拶を交わして数回喋ることもあった。
女子校のバレンタインデーというのはきっと共学のそれとは違う。戦場に向かうよな顔をして、お菓子でいっぱいの紙袋を携え、友達先輩後輩と交換をする。共学では男子がそわそわ女子がもじもじするのだろうけれど、それは若い男性教諭とガチ恋の一部の生徒のみ。しかも生徒は中年の既婚の先生にガチってたりする。
そんな異様な空気感も高3だとそもそも人がいないし、受験真っ只中ではポッ◯ーとかアル◯ォートとか簡単な物を用意する。私も同じようなもの。その日も彼女は学校に来ていた。チョコを渡したい。でも彼女が友達同士でわいわいやっているところには入っていけないし、勉強中なのを遮って渡すのも忍びないし関係的に変な感じ。結局渡せなかった。
別に彼女のことで常に頭がいっぱいなわけじゃない。男性に恋愛感情を抱いたこともある。なのに彼女は友達とも他のクラスメイトとも違って見えて、関わる中で得られる喜びはとても恋愛の時と似てる。私と彼女の進路は地域から何から違うみたい。もう日常的に会うことはない。でもきっと成人の同窓会で会えたら目で追ってしまう。話しかけるか悩むと思う。