2013-11-11

食の安全中国混沌、強大なアメリカおフランス

イオンに関するニュースを見た。

イオンの不誠実さも非難されるべきだろうけど、イオンの気持ちもわからなくもない。

なんでウチだけだ、というようなユッケ社長的な気分もあるだろう。

俺はちょいちょい中国方面旅行に行くのが趣味なんだが、あちらの食い物など食って大丈夫か?との心配を頂くことがある。

確かに手放しで安全とは言いがたい。現地テレビ放送も、安全野菜の選び方なんかを特集しており、現地人に危機意識もある。

しかし最低限のことに気をつけていれば、概ね問題ない。いや、問題ないかどうかは数十年経ってみなければわからいかもしれないが、現状特に健康被害はない。

あちらでは快餐というスタイルの、チョイスしたおかずぶっかけ飯を喰うことが多い。指差しだけでメニューを選べるので、外国人旅行者にも人気だ。

快餐屋は一食500円以上する店もあれば、20円以下の店もある。

この値幅の大きさが、中国の食を象徴している。

件の20円以下の店は、そのイカレた安さから人気があるかというとそうではなく、汚い身なりの労働者パラパラといるだけで、全く繁盛していない。店もボロく、匂い臭い

そんな店で何かを食いたいかというと、どんなに安くても御免な訳で、概ね200円ぐらいの店に入ることが多い。

お肉などは公設の市場があり、そちらをブラブラみて回るのも楽しい

見たこともないケモノヘンの漢字獣肉がところ狭しと売っている。貂なんて食えるのか、と感動することもある。

あちらでは、鳥肉は鶏よりも鴨の方が、比較メジャーと思われる。

彼の鴨肉であるが、これまた一羽丸鳥で、千円近い品もあれば、百円以下の品もある。

件の百円以下の鴨が、これまた鳥だけに飛ぶように売れるかと言うと、無論そうではない。

モノには適正な価格があるということは、実際誰でも知っていることであり、現地の人間はもちろんのこと、ポッと出かけた旅行者ですら、小一時間市場をブラつけば、概ね把握できる。

その中で極端に安いものがあれば、それを警戒するのは、ごくあたり前の心理である

その警戒を、果たしてスーパーバイヤーが、冷食工場仕入れ担当が、共有しているかというと、当然共有しているだろう。

そんなものは行けばわかる、一目瞭然なのだから

しかしそれを本部の人間も共有しているか、となると怪しい。

本部の人間は安くしろと要求する。日本経済の仕組みでは安くするのが正義だろうから

彼の国では、安くしろというと、下限知らずにどこまでも安くなる。数十円の丸鶏があるお国だ。

大阪西成に俺の愛するスーパーマーケットスーパー玉出という店がある。

こちらの惣菜が実に象徴的で、精肉コーナーに豚バラ肉が100グラム120前後で売っているのに対し、デリカコーナーでは豚バラチャーシューが100グラム80円で売っている。

パートのおばちゃんが手間暇かけてコトコト煮込んだチャーシューが、生肉より値下がりするなどという、河原の積み石よりやりがいのない過酷労働を、彼女らに強いている訳では無論ない。

それら加工食品は、その出自を明らかにする必要がないから、原材料費をどこまでも抑えられる。

そしてそれが今後どのような影響があるのか、それはわからない。

なにやら壮大な生体実験を見ているかのような気分になる。

今後、米農家補助金が削減されていく趨勢にあるとのことらしい。

これに関しては全く恐ろしいという気持ちにしかならないが、ウェブ上では、補助金ジャブジャブの農家は潰せとの声が高い。

実際厳しい競争の中で生きている、都市部の住人にとって、不公平感があるのも理解できる。

しかしながら、総じて先進国農業で、全く保護必要としない分野はどれほどあるものだろう。

無論、規制を緩和して、やる気のある農家企業の参入を推し進めるのは良いことだろう。

農業大国と言われる国々、特にアメリカフランスでは、補助も厚い。

アメリカでの農業補助金は、大別して5種類。作付面積に対する補助金市場価格による差額の補助金。ローン充当補助金。最低価格保証金。作物保険への政府充当金。などなど、日本補助金など可愛らしいと思えるような補助金の幅の広さ。

その上先般のバイオエタノール原料買い付け保証などなど、挙げたらきりがないほど補助金ジャブジャブである

特に市場価格ベース補助金は、WTOからお叱りを受けかねない、輸出補助金に触れると見られており、今般のTTP交渉では果たしてどうなるかというところでもある。

この恐ろしい規模での補助金によって、折角の国連の援助を受け殖産された後進国綿花穀物畑などが、価格競争で打撃を受けて青色吐息だそうだ。

例えばコーンだと、その金額の八割以上が補助金に依っており、俺達が喰うケロッグコーンフロストは、アメリカ人税金によって八割増量してもらっている。

そして当然アメリカであるからして、その全補助金額の七割以上が、上位数%の大規模農家によって独占されている。

まさにアメリカというお国柄らしい、ビッグになるほど保証も厚い、悪夢アメリカンドリームの類の補助金だ。

方やおフランスでは、アメリカ同様、斯様な大農家向けの補助金も充実しており、これまたグレーな輸出補助金の類も、ジャブジャブ拠出しているのだが、反面、小規模農業のみならず漁業、加工業への保証もこれまた厚い。

例えば農地のその周辺環境景観への配慮などを目的とする補助金。また産品の国定ブランド化とそれへの国際的な法的保護、輸出補助金など、小規模でも国際社会で十分戦えるような保証が充実している。

彼の国の優良な小規模一次、二次産業への保証は、単にその百姓生活土地景観田舎ワイナリー漁港を守るという小さな目的ではなく、それに付随する食の安全文化外食産業観光業、ひいては国のイメージという、より大きな対象への投資なのだろう。

翻って日本には、果たして保護に値する農業、食産業が無いだろうかというと、全く実に多い。

地方地方に奇妙な郷土料理や農法やらが、険隘な国土ならではの多様性に富んでおり、港町に行けば、寿司屋の生ゴミかと見まごう奇妙な鱠が出てきたり、山国に行けばタクアンのままで美味いのになんで燻製にしちゃったかなーという漬物が供せられる。

狭隘土地に無理やり作った田畑や、それにまつわる行事伝統産業ら、それら無数の多様性が重層的に折り重なり、文化というものが形成される。

食にやかましい中国人に、俺はベトナム料理が好きだと述べたところ、中国人は鼻で笑って「ベトナム料理なんかねーよ。美味しい菜(惣菜)ならあるけどな」とのたまう。

料理とは料の理と書くように、食文化のものを指す。

無数の地方地方の多彩なお惣菜があり、それらを時の権力が一つの理として、熟成されるのを待たねば、料理は成立し得ない。

その中国人に言わせれば、日本料理料理として見ているらしい。

  • 何でウチだけ? と言われても、お前の脇が甘かっただけだろとしか言えん。偽装するなら、本気で偽装しろ。奴らには、単に「偽装」という仕事に対する真剣味が足らなかっただけだ...

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