これ面白くて、未来が自分の後ろ側にあった時代には矛盾がなかったんですよ
我々現代人は普通「未来が前、過去が後ろ」なのが当たり前だと思ってますが、昔は過去が前、未来が後ろにあったんです
全く日本独自のことではなく、古代ギリシャやソマリ語など世界の地域/言語であった/あることらしいですが https://t.co/3iG9Uaqgae pic.twitter.com/hkoAEAJjB0— 重藤小藤太 (@Kotouta_Sige1) February 18, 2024
この言説は正しいのだろうか。この場合、過去に書かれた文学などにおいてどのような用法があったかを確認すればいいだろう。というわけで『源氏物語』から「先」が未来をあらわしている箇所を引用する。
わが御世もいと定めなきを、ただ人にて朝廷の御後見をするなむ行く先も頼もしげなめることと思し定めて、いよいよ道々の才を習はさせ給ふ。
「私の治世もいつまで続くかわからないのだから、(光源氏が)臣下として朝廷の後見をすれば、この先も頼もしいだろうと考えて、さまざまな学問を習わせた」といったところだろうか。この「行く先」は未来を指している。
中に十ばかりにやあらむと見えて、白き衣、山吹などのなえたる着て走り来たる女子、あまた見えつる子どもに似るべうもあらず、いみじく生ひ先見えてうつくしげなる容貌なり。
「その中で、十歳くらいに見えて、白い衣に山吹襲の着慣れた上着で走ってくる女の子は、その他の多くの子供とは違って、将来が楽しみな可愛らしい容姿をしている」といったところだろうか。この「生ひ先」も未来を指している。
我が心ながら、かかる筋に、おほけなくあるまじき心の報いに、かく、来し方行く先の例となりぬべきことはあるなめり
「自分のことながら、このような身の程知らずのあってはならない恋の報いとして、このように後にも先にも例になりそうなことが起きたのだろう」といったところだろうか。「来し方」は過去、「行く先」は未来、という時間の感覚がよく分かる。
一方で、もちろん「先」と書いて過去を指している箇所もある。
あこは知らじな。その伊予の翁よりは、先に見し人ぞ。されど、頼もしげなく頚細しとて、ふつつかなる後見まうけて、かく侮りたまふなめり。さりとも、あこはわが子にてをあれよ。この頼もし人は、行く先短かりなむ
「おまえは知らないのだろう。(姉君と私は)その伊予の老人よりも先に会っていたのだ。けれど、(姉君は私のことを)頼りなく弱々しいと思って、あのどっしりとした男を夫として、このように(私を)馬鹿にしているらしい。とはいえ、おまえは私の子でいてくれよ。あの頼もしい人は老い先短いだろうから」といったところだろうか。この箇所には二つの「先」があるが、「先に見し」は過去、「行く先」は未来を指しているのが面白い。
このあたりを見るかぎり、単に「先」といえば「過去」あるいは順序的な「前」を指しているが、「行く先」のような言い方だと「未来」になるようだ。これは現代的な感覚としてもわかるのではないだろうか。「先に〜〜する」と「この先、〜〜する」の違いだ。
ではさらに遡って中国では「先」という漢字はどのように使われてきたのだろうか。
先(拼音:xiān)是汉语一级通用规范汉字(常用字) 。此字初文始见于商代甲骨文及商代金文,古字形从止(指脚)从人,人举足则前进,表示在前面的意思。 先的基本义是走在前面,引申为时间或空间的次序在先。引申用作名词,特指祖先,又指过世的,多指长辈。
先(拼音:xiān)は、中国語の一級通用規範漢字(常用字)です。この字は商代の甲骨文と商代の金文で初めて見られ、古い字形は「止」(足を指す)と「人」から成り立っています。人が足を上げると前進することから、先は前にあることを示しています。先の基本的な意味は先頭を歩くことであり、時間や空間の順序が先にあることを意味します。名詞としても使われ、特に祖先を指し、また亡くなった人々、特に長老を指すことが多いです。
意味などを調べてみたかぎり、どうも中国語では「先」が「未来」を表すことはなさそうだ。空間的な順序では「前方」側、時間的な順序では「過去」側、で統一されているらしい。このあたりは中国語に詳しい人の解説を求む。
原義が「先頭を歩く人」で、時間的には「過去」を表すというのは、どう考えればいいだろう。イメージとしては、人々が一列に並んでいて、自分はその真ん中あたりにいる。空間的には、列の先頭の人は、自分の前方にいる。しかし、時間的には、先頭の人が先に動き、自分はその後に付いていくことになる。先祖代々が一列に並んでいるところを想像すると、その「先頭」はいちばん古い人だと考えるのが自然だろう……ということではないか。
精選版 日本国語大辞典
先・前(読み)さき
日本語の「先」には「目的地」という意味がある。たとえば「出掛け先」だとか「勤務先」のような言い方である。そして先ほどの「行く先」はまさにこの用法だろう。つまり「先」という漢字から、まず「目的地」用法が生まれ、それから「目的の地点」を「時点」にするイメージで「未来」用法が生まれた、と考えるべきかもしれない。
まとめ。
1. 日本語では「先」が「過去」を意味したり「未来」を意味したりする
3. 中国語では今でも「先」といえば「過去」だけを意味するらしい
残りの課題。
教科書とかみてると、未来は右で、過去は左って感じがするけどね。
それは左綴じやからやろ
ほいよ。 先破秦入咸陽者王之 訳:先に秦を破り咸陽に入った者を王とする〈史・項羽紀〉 まぁこの場合も「後」に入ったものは王とならないのだから「先」の方が古い時代を指すも...
いやそれは順序としての「前」やろ
でも元増田がこう書いてるからなぁ 意味などを調べてみたかぎり、どうも中国語では「先」が「未来」を表すことはなさそうだ。空間的には「前方」、時間的には「過去」、で統一さ...
順序の「前」は「過去」やろ。「Aが前、Bが後」っちゅうたらAのほうが過去に起きてるんや。そのくらいわかるやろ。
それは先後の話であって未来過去の話じゃないだろ
論語の為政編での使い方(https://manapedia.jp/ より) 子夏問孝、子曰、色難、有事弟子服其労、有酒食先生饌、曾是以為孝乎。 子夏が孔子に孝について尋ねました。孔子がおっしゃるには...
先の通り、先の通理か 最先端技術に新法ができる 未来を切り開くとき
「増田の勝ち!」って反射的に思ったけど先のXの投稿も「昔は~」って言ってるだけで「平安時代は~」なんて書かれてないやん 教科書的に考えれば遣唐使廃止後の国風文化の発達で日...
イラストに「中世」って書かれとるで。一般的に源氏物語が書かれた頃は「古代」やで。
文明が発達しないと過去は見えるけど未来は見えないからな
先日、先年、先だって、前日、前年 ←→ 後日 午前 ←→ 午後 センとゼンが音が似てるから 先や前は過去なんじゃねwww でも この先どうする この後どうする は、だいたい同...
行先 → 目的地、前途 先端 → 尖端、先进的 ※先はコレ 先生 → 老師、老师 先人 → 前任 先日 → 另一天 初めは中国渡来の先端学問の人が「先生」「先人」だったが 日...
前後は、あきらかに方向を示すけど、先はどの方向か定まらない気がするね。
「前」と「先」ってどっちも「さき」って読むの変だなとは思ってた
確かに漢詩でも漢文でも先=未来は見たことない気がする。他増田も言ってたけどこの先と混同してこうなったんかね
ちょくちょくこの話が出てくるけどなんで「相対概念」を固定的に考えようとするのかな 「先」も「前」も「後」も「話の基準点」に「相対」する概念なので いわゆる「5W1H」に影響を...