きっかけは覚えていないが私がそのマンガに初めて触れたのはアニメからだったと思う
思う、と言うのは学生の頃の甘かったり苦かったりする記憶と共に様々な思い出が深みに仕舞われて最早取り出せなくなっているからだ
でもその作品に出てくるとあるキャラクターが初登場してからのめり込むようにハマったのだけは覚えている
どんなキャラクターかの詳細は省くがそいつは一言で言えば破壊衝動の塊みたいなヤツで派手な見た目と物騒な言動が厨二病真っ盛りの当時の私にはものすごく刺さった
さて、このマンガと同時期に私の周囲でにわかに流行り始めたものがある
"BL"だ
古くからある概念であることは重々承知だが私の周囲では同時多発的にこのタイミングで「腐女子」なるものに変貌する人がとても多かった
当然色々なコンテンツの推しCPの話を否応なしに聞かされるようになり自然と私もそういう思考で作品を見るようになっていった
目が合ったから、やたらと突っかかるから、反応が違う気がするからーー願望めいた妄想をいくつも抱いてはコンテンツへの熱と同時にかなぐり捨てて来た
否定的になった訳じゃない
熱量と自信を持ってキャラ同士の関係を妄想する体力が無くなっただけだ
だがアレだけは違った
同時期に流行ったのだから当然このマンガにも同じように有り得ざる関係性を見ていた訳であるがまぁ他のコンテンツと同じように熱が落ち着くと同時にそういう視点も持たなくなっていった
私は当時から軽い"公式史上主義"で二次創作の類がかなり苦手だった
勝手に自分で作り上げた"公式に供給された"と思い込んでいるキャラクター像から少しでも逸脱しているとどうにも違和感として捉えてしまう
"BL"の全部が全部そういう訳ではなかったと言い切っておくがまぁ自分には向いていなかった
ところがそのマンガを読んでる時だけ足を洗ったはずの腐女子が顔を出すのだ
お互いにお互いにだけは負けたくないと思ってそうな所とか本人だけは気付いてない事に真っ先に気付きそうな所とか、まぁ語れば長くなる妄想をそれこそ山ほどしてきたが何故だかマンガで出番があるたびそのCPの解釈に自信が付いていった
その頃にはこのCPへの熱を語る相手はいなくなっていたがそれでもそのまま学生を卒業し、社会人になってもその火は消えることなく燻り続けることになる
この火がもう一度高く燃え上がったのは社会人になってしばらく経ってからだ
このマンガは喜ばしいことに原作がすべてアニメ化していて、さらに劇場版が何作か作られている
そんな劇場版の最新作が私の中の"腐女子"を呼び起こすことになる
内容としては原作の最終章を劇場版らしく素晴らしい演出とネタを盛り込んでアニメ化したものだ
私は実はこの映画の範囲、つまり最終章の原作は未読だったためどうしても見たかったので仕事のクソ忙しい時期だったが無理を言って封切り当日の最終回に滑り込んだ
ーーあの映画館での衝撃を私は生涯忘れないと思う
そう、私が長年抱き続けていた願望は、すべて正しかったのだ
私はそう解釈した
有り得ない、馬鹿げていると何処かでわかっていても捨てられなかった妄想が
こんな事あるはず無いだろうと鼻で笑われてそれでも諦めきれなかった関係性が
この感情はきっと誰にも伝わらないし伝えられない
それでもあの映画の15分を見ると思い出すのだ
あの日の衝撃を