大昔に学びになった話。大昔の話なのでフェイク入れずに書いちゃうけど、もしどこの高校か分かった人がいても黙っておいてもらえるとたすかります。
高校生の頃、大規模なカンニング騒動が起きた。一部の生徒が早朝に職員室に忍び込み、テスト用紙を盗んだのだ。
この時点で世代が分かると思うんだけど、PCがまだ一般化する前でテスト用紙もワープロで作成していた時代だ。
で、そのテスト用紙が一部の生徒にまわって、あるクラスの平均点が爆上がりしたせいで発覚。全クラスの平均点が70点ぐらいだったのに、そのクラスだけ95点とかとったらしい。アホすぎるだろ。
テスト盗んだやつはいわゆるスクールカーストの最上位の奴らで、中の下くらいにいた俺はそいつとクラスも違ったのでまわってこなかった。逆にまわってこなくてよかった。もしきたら絶対見てた。
前代未聞の事件で学校中がざわついたんだけど、学校の対応は冷静で素早かった。
まずはカンニングしたであろう生徒全員にヒアリングを行い、そして全員を停学にした。平均95点出したクラスは停学にならなかったのが5人くらいで笑った。先生も5人に向けて授業するのダルかっただろうな。ちなみに昔なので1クラスで40人くらいいた。
次に首謀者とその周辺の特に性質の悪いやつらを退学にした。なんだかんだ停学で済ますのかなと思ってたんだけど、20人くらいが一斉に退学になってびっくりしたのを覚えている。うちの高校はタバコ、バイクの免許、携帯、バイトあたりの校則で禁止されていることが3回ばれると退学というルールだった。今回の件はよほど悪質と判断したのだろう。当たり前だけど。
書きたかったことはここからで、俺はその退学になったやつの1人と割と仲が良かった。けっこう男前のやつで、ユーモアがあって、自分勝手なやつ。カースト最上位の人気者。自宅の方向が近かったからたまに学校にいっしょに行くことがあったくらいなんだけど。
当時の俺はカースト上位のやつらが女子と仲良くしているのを嫉妬に狂った目で見つつ、興味ないフリするという典型的なイケてないやつだったから、表立っては言わなかったがそいつのことは好きじゃなかった。あんな軽薄なやつが人気者でなんで俺はこんな日陰者なんだと思っていた。ちなみに当時の俺は声優の林原めぐみのファンだった。どうでもいいな。
退学は突然だったからお別れをするわけでもなく、ある日からそいつは学校に来なくなったし、俺もそりゃあそうだよねと思って特に気にも留めてなかった。ざまあみろとも思わないし、同情するわけでもなく、いなくなったんだな程度だ。
それから半年くらい経ったある日、駅前を歩いていたら急に話しかけられた。退学になったあいつだった。定時制の高校に通っているらしい。前よりもなんだかチャラくなってたし、軽薄な語り口は相変わらずだった。聞いてもいないのにあいつはいまの環境の良さをベラベラと語った。
やれ「退学になって視野が広がった」だ、「いまの学校は競争が激しくておまえよりもいい大学にいけそうだ」だの。ちなみにうちの高校はエスカレーター式で9割は無試験で大学にいける。いわゆる有名私大だった。それよりも上だから国公立だろうか。
世界が広がっていろいろなチャレンジができるようになった、だから退学になって逆によかったとそいつは語り続けていた。その姿が俺には哀れに思えた。もしかしたら本当にそうだったのかもしれないが、俺にはあのイケていたカースト上位のあいつが必死に言い訳しているようにしか見えなかったからだ。
この再会は当時の自分にとって衝撃的で、いまでも学びになっている。こんなダサい人間になりたくない、たとえつまらなくても真っ当に生きるべきなんだと。